コンフィグレーションガイド Vol.2
- <この項の構成>
- (1) ドメイン
- (2) MA
- (3) MEP
- (4) MIP
CFMではドメインという単位でネットワークを階層的に管理し,ドメイン内でCFM PDUを送受信することで保守管理を行います。ドメインには0〜7のレベル(ドメインレベル)があり,レベルの値が大きいほうが高いレベルとなります。
高いドメインレベルでは,低いドメインレベルのCFM PDUを廃棄します。低いドメインレベルでは,高いドメインレベルのCFM PDUを処理しないで転送します。したがって,低いドメインレベルのCFM PDUが高いドメインレベルのドメインに渡ることはなく,ドメインで独立した保守管理ができます。
ドメインレベルは区分に応じて使用するように,規格で規定されています。区分に割り当てられたドメインレベルを次の表に示します。
表27-3 区分に割り当てられたドメインレベル
ドメインレベル 区分 7 カスタマ(ユーザ) 6 5 4 サービスプロバイダ(事業者全体) 3 2 オペレータ(事業者) 1 0 ドメインは階層的に設定できます。ドメインを階層構造にする場合は低いドメインレベルを内側に,高いドメインレベルを外側に設定します。階層的なドメインの構成例を次の図に示します。
図27-2 階層的なドメインの構成例
MAはドメイン内をVLANグループで分割して管理する場合に使います。ドメインには最低一つのMAが必要です。
CFMはMA内で動作するため,MAを設定することで管理範囲を細かく制御できます。
MAはドメイン名称およびMA名称で識別されます。そのため,同じMA内で運用する各装置では,設定時にドメインとMAの名称を合わせておく必要があります。
MAの管理範囲の例を次の図に示します。
図27-3 MAの管理範囲の例
また,CFM PDUを送受信するVLAN(プライマリVLAN)を同一MA内で合わせておく必要があります。
初期状態では,MA内でVLAN IDの値がいちばん小さいVLANがプライマリVLANになります。コンフィグレーションコマンドma vlan-groupを使えば,任意のVLANを明示的にプライマリVLANに設定できます。
プライマリVLANをデータ転送用のVLANと同じVLANに設定することで,実際の到達性を監視できます。
MEPはドメインの境界上の管理ポイントで,MAに対して設定します。MEPにはMEP IDというMA内でユニークなIDを設定して各MEPを識別します。
CFMの機能はMEPで実行されます。CFMはMEP間(ドメインの境界から境界までの間)でCFM PDUを送受信することで,該当ネットワークの接続性を確認します。
MEPには次の二つの種類があります。
- Up MEP
リレー側に設定するMEPです。Up MEP自身はCFM PDUを送受信しないで,同一MA内のMIPまたはポートを介して送受信します。
Up MEPの設定例を次の図に示します。
図27-4 Up MEPの設定例
- Down MEP
回線側に設定するMEPです。Down MEP自身がCFM PDUを送受信します。
Down MEPの設定例を次の図に示します。
図27-5 Down MEPの設定例
Down MEP,Up MEPからの送信例,およびDown MEP,Up MEPでの受信例を次の図に示します。
図27-6 Down MEP,Up MEPからの送信
図27-7 Down MEP,Up MEPでの受信
Down MEPおよびUp MEPは正しい位置に設定してください。例えば,Down MEPは回線側(MAの内側)に設定する必要があります。リレー側(MAの外側)に対して設定した場合,CFM PDUがMAの外側に送信されるため,CFMの機能が正しく動作しません。誤ってDown MEPを設定した例を次の図に示します。
図27-8 誤ってDown MEPを設定した例
MIPはドメインの内部に設定する管理ポイントで,ドメインに対して設定します(同一ドメイン内の全MAで共通)。階層構造の場合,MIPは高いドメインレベルのドメインが低いドメインレベルのドメインと重なる個所に設定します。また,MIPはLoopbackおよびLinktraceに応答するので,ドメイン内の保守管理したい個所に設定します。
(a) ドメインが重なる個所に設定する場合
ドメインが重なる個所にMIPを設定すると,上位ドメインでは,低いドメインを認識しながらも,低いドメインの構成を意識しない状態で管理できます。
ドメインレベル1とドメインレベル2を使った階層構造の例を次の図に示します。
図27-9 ドメインレベル1とドメインレベル2の階層構造の例
ドメインレベル2を設計する際,ドメインレベル1のMAでMEPに設定しているポートをドメインレベル2のMIPとして設定します。これによって,ドメインレベル2ではドメインレベル1の範囲を認識しながらも,運用上は意識しない状態で管理できます。
障害発生時は,ドメインレベル2の問題か,ドメインレベル1のどこかの問題かを切り分けられるため,調査範囲を特定できます。
(b) 保守管理したい個所に設定する場合
ドメイン内で細かくMIPを設定すれば,より細かな保守管理ができるようになります。
ドメイン内にMIPが設定されていない構成の例を次の図に示します。この例では,ネットワークに障害が発生した場合,装置A,装置EのMEP間で通信できないことは確認できますが,どこで障害が発生したのか特定できません。
図27-10 ドメイン内にMIPが設定されていない構成の例
ドメイン内にMIPを設定した構成の例を次の図に示します。この例では,ドメイン内にMIPを設定することで,LoopbackやLinktraceの応答が各装置から返ってくるため,障害発生個所を特定できるようになります。
図27-11 ドメイン内にMIPを設定した構成の例
All Rights Reserved, Copyright(C), 2006, 2018, ALAXALA Networks, Corp.