コンフィグレーションガイド Vol.1

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26.1.2 ポリシーベーススイッチンググループ

ポリシーベーススイッチンググループでは,一つまたは複数の経路をグループ化して設定できます。各経路は設定された適用順序に従って優先度を持ちます。これによって,送信先インタフェースの状況に合わせて,複数の経路の中から優先度の高い経路を動的に選択します。なお,一つまたは複数の経路をグループ化した情報をポリシーベーススイッチングリスト情報といいます。

ポリシーベーススイッチングリスト情報に複数の経路を指定することで,経路の冗長化ができます。障害などで優先度の高い経路が中継できなくなった場合,同じポリシーベーススイッチングリスト情報に設定している次に優先度の高い経路に切り替えて運用を継続します。

ポリシーベーススイッチンググループの構成例を次の図に示します。

図26-2 ポリシーベーススイッチンググループの構成例

[図データ]

また,ポリシーベーススイッチンググループはトラッキング機能のポーリング監視と連携することで,ポーリング監視の対象地点までの経路を監視できます。トラッキング機能のポーリング監視は,ネットワーク上の装置への通信可否を監視します。監視した結果はポリシーベーススイッチンググループの経路選択時の判断に使われます。これによって,本装置と隣接装置間で発生した障害だけでなく,それ以外の経路で発生した障害に基づいて,経路の切り替えができます。

ポリシーベーススイッチンググループとトラッキング機能の連携構成例を次の図に示します。

図26-3 ポリシーベーススイッチンググループとトラッキング機能連携構成例

[図データ]

<この項の構成>
(1) ポリシーベーススイッチンググループの経路選択
(2) 起動時のポリシーベーススイッチンググループ
(3) 系切替時のポリシーベーススイッチンググループ

(1) ポリシーベーススイッチンググループの経路選択

ポリシーベーススイッチンググループでは,ポリシーベーススイッチングリスト情報に登録した複数の経路から次の情報を基に経路を選択します。

(a) 中継可否の監視結果と優先度

ポリシーベーススイッチングリスト情報に登録した経路は,次に示す監視の結果によって中継可否が決定します。

また,中継可能な経路のうち,最も優先度の高い経路を選択します。

●送信先イーサネットインタフェースのポート状態の監視

次に示すコンフィグレーションコマンドで中継先の経路を指定したとき,送信先イーサネットインタフェースのポートの状態によって中継可否を判断します。

送信先イーサネットインタフェースのポートがUpのときだけ,中継可能と判断します。

●送信先リンクアグリゲーションのチャネルグループ状態の監視

次に示すコンフィグレーションコマンドで中継先の経路を指定したとき,送信先リンクアグリゲーションのチャネルグループの状態によって中継可否を判断します。

送信先リンクアグリゲーションのチャネルグループがUpのときだけ,中継可能と判断します。

●トラッキング機能によるポーリング監視とポート状態監視

次に示すコンフィグレーションコマンドで中継先の経路を指定したとき,送信先イーサネットインタフェースのポート状態に加えて,トラッキング機能のポーリング監視結果によって中継可否を判断します。

送信先イーサネットインタフェースのポートおよびトラッキング機能のポーリング監視結果がUpのときだけ,中継可能と判断します。

●トラッキング機能によるポーリング監視とチャネルグループ状態監視

次に示すコンフィグレーションコマンドで中継先の経路を指定したとき,送信先リンクアグリゲーションのチャネルグループ状態に加えて,トラッキング機能のポーリング監視結果によって中継可否を判断します。

送信先リンクアグリゲーションのチャネルグループおよびトラッキング機能のポーリング監視結果がUpのときだけ,中継可能と判断します。

なお,トラッキング機能については,「26.1.5 ポリシーベーススイッチングのトラッキング機能」を参照してください。

●優先度による決定

経路状態の監視結果を基に,ポリシーベーススイッチングリスト情報内で中継可能な経路のうち,コンフィグレーションで指定した適用順序で,最も優先度の高い経路を選択します。

(b) デフォルト動作指定

ポリシーベーススイッチングリスト情報に登録している経路がすべて中継できない,または経路が登録されていない場合の動作をデフォルト動作といいます。デフォルト動作はコンフィグレーションコマンドdefaultで指定できます。デフォルト動作指定について次の表に示します。

表26-1 デフォルト動作指定

コンフィグレーションでの指定 デフォルト動作 動作説明
permit指定 通常中継 対象のフレームをMACアドレステーブルに従ってレイヤ2中継します
deny指定 廃棄 対象のフレームを廃棄します
未指定 廃棄 対象のフレームを廃棄します

デフォルト動作によってMACアドレステーブルに従ってフレームをレイヤ2中継または廃棄した場合,対象のポリシーベーススイッチングリスト情報を指定しているアクセスリストの統計情報にカウントされます。

(c) 経路切り戻し動作指定

ポリシーベーススイッチングリスト情報に登録している優先度の高い経路が中継できなくなって優先度の低い経路で中継している状態で,優先度の高い経路が中継可能になった場合の動作を経路切り戻し動作といいます。経路切り戻し動作はコンフィグレーションコマンドrecoverで指定できます。経路切り戻し動作指定について次の表に示します。

表26-2 経路切り戻し動作指定

コンフィグレーションでの指定 経路切り戻し動作 動作説明
on指定 切り戻す 優先度の高い経路が中継可能になると,経路を切り戻します
off指定 切り戻さない 優先度の高い経路が中継可能になっても,経路を切り戻しません
未指定 切り戻す 優先度の高い経路が中継可能になると,経路を切り戻します

経路切り戻し動作として「切り戻す」を指定すると,ポリシーベーススイッチングリスト情報内で中継可能な経路のうち,常に最も優先度の高い経路を選択します。

経路切り戻し動作として「切り戻さない」を指定すると,選択中の経路より優先度の高い経路が中継可能になっても切り戻しません。選択中の経路が中継できなくなると,常により優先度の低い経路へ切り替えます。ポリシーベーススイッチングリスト情報に登録しているすべての経路が中継できない場合,経路を切り戻さないでデフォルト動作になります。ただし,次の場合にはポリシーベーススイッチングリスト情報内で中継可能な経路のうち,最も優先度の高い経路を再選択します。

(2) 起動時のポリシーベーススイッチンググループ

本装置では起動時や再起動時など,ポリシーベースプログラムが動作してから一定時間,中継可否の監視および経路の切り替えを停止します。これは,次に示す理由で,起動したあとの装置状態を収集し終わるまで,中継可否の監視結果が安定しないためです。

ポリシーベースプログラムが動作してからポリシーベーススイッチンググループが中継可否の監視を始めるまでの経路の状態を起動中といいます。起動中はポリシーベーススイッチングの対象フレームをすべて廃棄します。

なお,起動中に次のコンフィグレーションコマンドでポリシーベーススイッチングリスト情報を変更した場合,中継可否の監視を始めた時点で変更が反映されます。

ポリシーベースプログラムが動作してから中継可否の監視を始めるまでの時間(中継可否の監視を停止する時間)は,コンフィグレーションコマンドpolicy-switch-list default-init-intervalで変更できます。起動したあとの,中継可否の監視結果が安定するまでに掛かる時間を目安として指定してください。起動中の状態遷移と遷移条件について次の表に示します。

表26-3 起動中の状態遷移と遷移条件

状態遷移 遷移条件
起動中の終了 中継可否の監視を停止する時間が経過すると起動中を終了します。
また,起動中を中断した場合も同様に起動中を終了します。
起動中を中断 次の場合に起動中を中断します。
  • 運用コマンドreset policy-switch-listの実行
  • コンフィグレーションで,中継可否の監視を停止する時間を現在の経過時間よりも短く変更
  • ポリシーベースプログラムの再起動
  • 系切替
起動中の延長 コンフィグレーションで,中継可否の監視を停止する時間をより長く変更すると起動中を延長します。この場合,変更後の時間から現在の経過時間を差し引いた時間が経過すると,中継可否の監視を開始します。

起動中に系切替すると,切替中を終了または中断するまでの間,ポリシーベーススイッチングリスト情報の対象フレームはすべて廃棄されます。

起動中を終了または中断すると,ポリシーベーススイッチングリスト情報内で中継可能な経路のうち,最も優先度の高い経路を選択します。

(3) 系切替時のポリシーベーススイッチンググループ

本装置のBCU,CSUまたはMSUを冗長化している場合,系切替が発生してから一定時間,中継可否の監視および経路の切り替えを停止します。これは,系切替したあとの装置状態を収集し終わるまで,中継可否の監視結果が安定しないためです。

系切替してからポリシーベーススイッチンググループが中継可否の監視を始めるまでの経路の状態を切替中といいます。切替中は経路を切り替えないで,系切替前に選択していた経路を引き継ぎます。

なお,切替中に次のコンフィグレーションコマンドでポリシーベーススイッチングリスト情報を変更した場合,中継可否の監視を始めた時点で変更が反映されます。

ただし,ポリシーベーススイッチングリスト情報を設定しているアクセスリストのコンフィグレーションを変更した場合は,ポリシーベーススイッチングリスト情報の対象フレームはすべて廃棄されます。

系切替してから中継可否の監視を始めるまでの時間(中継可否の監視を停止する時間)は,コンフィグレーションコマンドpolicy-switch-list default-aging-intervalで変更できます。系切替したあとの,フレームの送受信が安定するまでに掛かる時間を目安として指定してください。切替中の状態遷移と遷移条件について次の表に示します。

表26-4 切替中の状態遷移と遷移条件

状態遷移 遷移条件
切替中の終了 中継可否の監視を停止する時間が経過すると切替中を終了します。
また,切替中を中断した場合も同様に切替中を終了します。
切替中を中断 次の場合に切替中を中断します。
  • 運用コマンドreset policy-switch-listの実行
  • コンフィグレーションで,中継可否の監視を停止する時間を現在の経過時間よりも短く変更
  • ポリシーベースプログラムの再起動
  • 次に示すコンフィグレーションコマンドを実行して,BSUまたはPSPが再起動
    ・fldm prefer
    ・fwdm prefer
    ・vrf mode【OP-NPAR】
  • 運用コマンドrestart vlanの実行
  • 運用コマンドactivate bsuを実行して,装置内で1枚目のBSUをactive状態に変更
切替中の延長 コンフィグレーションで,中継可否の監視を停止する時間をより長く変更すると切替中を延長します。この場合,変更後の時間から現在の経過時間を差し引いた時間が経過すると,中継可否の監視を開始します。
また,BCU,CSUまたはMSUの系切替が再度発生すると,中継可否の監視を停止する時間をカウントし直すため,切替中を継続します。

切替中を終了または中断すると,ポリシーベーススイッチングリスト情報内で中継可能な経路のうち,最も優先度の高い経路を選択して経路を切り替えます。

なお,系切替については,「コンフィグレーションガイド Vol.2 17. BCU/CSU/MSUの冗長化」を参照してください。

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