コンフィグレーションガイド Vol.1
- <この項の構成>
- (1) 仮想リンクVLANとVLANマッピングの対応づけについて
- (2) 仮想リンクVLANの設定範囲について
- (3) 仮想リンクVLANを設定していない場合のスパニングツリーについて
- (4) Ring Protocolの設定および削除によるスパニングツリー停止について
- (5) Ring Protocolとスパニングツリー併用時のネットワーク構築について
- (6) Ring Protocolの障害監視時間とスパニングツリーのBPDUの送信間隔について
- (7) トランジットノードでのプログラム再起動時の対応について
- (8) リングネットワークでの片方向リンク障害の対応について
- (9) スパニングツリー併用環境での多重障害からの復旧手順について
- (10) Ring ProtocolのVLANマッピングとマルチプルスパニングツリーのMSTインスタンスに所属するVLANとの整合性について
(1) 仮想リンクVLANとVLANマッピングの対応づけについて
仮想リンクVLANに指定するVLANは,リング内のデータ転送用VLANに所属(VLANマッピングおよびVLANグループに設定)している必要があります。
(2) 仮想リンクVLANの設定範囲について
- リングネットワークへの設定
仮想リンクを構成しているリングネットワークでは,シングルリングおよびマルチリング(共有リンクありのマルチリング構成も含む)どちらの場合でも,仮想リンク間で制御フレームを送受信する可能性のあるすべてのノードに対して仮想リンクVLANをデータ転送用VLANに設定しておく必要があります。設定が不足していると,拠点ノード間で仮想リンクを使って制御フレームの送受信ができず,障害の誤検出を起こすおそれがあります。
- スパニングツリーネットワークへの設定
仮想リンクVLANは,リングネットワーク内で使用するため,下流側のスパニングツリーには使用できません。このため,スパニングツリーで制御する下流ポートに対して仮想リンクVLANを設定すると,ループするおそれがあります。
(3) 仮想リンクVLANを設定していない場合のスパニングツリーについて
仮想リンクVLANを設定していない場合は,仮想リンクを構築できないので意図したトポロジーが構築されません。その結果ループが発生するおそれがあります。
(4) Ring Protocolの設定および削除によるスパニングツリー停止について
Ring Protocolのコンフィグレーションの設定および削除によって,動作中のスパニングツリーが停止することがあります。スパニングツリーが停止すると,該当するVLANはループになるなど,スパニングツリーのトポロジーに影響を与えるおそれがあります。
- PVST+が動作している状態で,Ring Protocolの最初のコンフィグレーションを設定すると,動作中のPVST+が停止します。Ring Protocolの最初のコンフィグレーションを設定するときは,該当VLANに所属するポート(物理ポートまたはチャネルグループ)をshutdownに設定するなどダウン状態にした上で実施してください。コンフィグレーションコマンドaxrp vlan-mappingを設定して,すべてのVLANのトポロジーを構築する準備が完了したあとで,ダウン状態にしていたポートをアップ状態にしてください。
- Ring ProtocolとPVST+を併用している状態で,コンフィグレーションコマンドaxrp vlan-mappingを削除すると,動作中のPVST+が停止します。axrp vlan-mappingコマンドを削除するときは,該当VLANに所属するポート(物理ポートまたはチャネルグループ)をshutdownに設定するなどダウン状態にした上で実施してください。該当するVLANの設定を削除するか,またはRing Protocolのすべてのコンフィグレーションを削除したあとで,ダウン状態にしていたポートをアップ状態にしてください。
- Ring Protocolとマルチプルスパニングツリーを併用している状態で,Ring Protocolの最後のコンフィグレーションを削除すると,動作中のマルチプルスパニングツリーの一部が停止します。Ring Protocolの最後のコンフィグレーションを削除するときは,スパニングツリーを構成するポート(物理ポートまたはチャネルグループ)をshutdownに設定するなどダウン状態にした上で実施してください。Ring Protocolの最後のコンフィグレーションを削除したあとで,ダウン状態にしていたポートをアップ状態にしてください。
(5) Ring Protocolとスパニングツリー併用時のネットワーク構築について
Ring Protocolおよびスパニングツリーを利用するネットワークは基本的にループ構成となります。既設のリングネットワークに対し,アクセスネットワークにスパニングツリーを構築する際は,スパニングツリーネットワーク側の構成ポート(物理ポートまたはチャネルグループ)をshutdownに設定するなどダウン状態にした上で構築してください。
(6) Ring Protocolの障害監視時間とスパニングツリーのBPDUの送信間隔について
Ring Protocolのヘルスチェックフレームの障害監視時間(health-check holdtime)は,スパニングツリーのBPDUのタイムアウト検出時間(hello-time×3(秒))よりも小さな値を設定してください。大きな値を設定すると,リングネットワーク内で障害が発生した際に,Ring Protocolが障害を検出する前にスパニングツリーがBPDUのタイムアウトを検出してしまい,トポロジー変更が発生し,ループするおそれがあります。
(7) トランジットノードでのプログラム再起動時の対応について
Ring Protocolプログラムを再起動(運用コマンドrestart axrp)する際は,スパニングツリーネットワーク側の構成ポート(物理ポートまたはチャネルグループ)をshutdownに設定するなどダウン状態にした上で実施してください。再起動後は,トランジットノードのフラッシュ制御フレーム受信待ち保護時間(forwarding-shift-time)のタイムアウトを待つか,制御VLANのフォワーディング遷移時間(forwarding-delay-time)を利用して経路を切り替えたあとで,ダウン状態にしたポートのshutdownなどを解除してください。
(8) リングネットワークでの片方向リンク障害の対応について
Ring Protocolは,片方向リンク障害でのリング障害は検出しません。リングネットワークで片方向リンク障害が発生すると,仮想リンク制御フレームを送受信できなくなるため,スパニングツリーがBPDUタイムアウトを誤検出してしまうことがあります。その結果,ループが発生し,ループ状態は片方向リンク障害が解消されるまで継続するおそれがあります。
Ring ProtocolとIEEE802.3ah/UDLD機能を併用すれば,片方向リンク障害を検出できるようになるため,片方向リンク障害によるループの発生を防止できます。
(9) スパニングツリー併用環境での多重障害からの復旧手順について
リングネットワーク内で2か所以上の障害(多重障害)が発生したことによって,仮想リンク制御フレームを送受信できなくなり,スパニングツリーのトポロジー変更が発生する場合があります。多重障害には,Ring Protocolとスパニングツリーを併用した装置で両リングポートに障害が発生した場合も含みます。この状態からリングネットワーク内のすべての障害を復旧する際は,次に示す手順で復旧してください。
- スパニングツリーネットワークの構成ポート(物理ポートまたはチャネルグループ)をshutdownにするなどダウン状態にします。
- リングネットワーク内の障害個所を復旧し,マスタノードでリング障害の復旧を検出させます。
- スパニングツリーネットワーク側の構成ポートのshutdownなどを解除し,復旧させます。
(10) Ring ProtocolのVLANマッピングとマルチプルスパニングツリーのMSTインスタンスに所属するVLANとの整合性について
コンフィグレーションの変更過程で,Ring ProtocolのVLANマッピングとマルチプルスパニングツリーのMSTインスタンスに所属するVLANの設定が完全に一致しない場合,一致していないVLANはブロッキング状態になり,通信できないおそれがあります。
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