解説書 Vol.2

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4.2.2 系切替時の動作

<この項の構成>
(1) 系切替時の引き継ぎ情報
(2) BCU切替時の本装置と相手装置の中継動作【AX7800S】
(3) BCUおよびBSU切替時の本装置と相手ルータの中継動作【AX5400S】
(4) コンフィグレーション不一致時の処理

(1) 系切替時の引き継ぎ情報

AX7800Sでは運用系と待機系を切り替えた場合,次に示す情報を引き継ぎます。

AX5400Sでは運用系と待機系を切り替えてもFDBエントリ情報およびルーティングエントリ情報の引き継ぎはしません。

(2) BCU切替時の本装置と相手装置の中継動作【AX7800S】

BCU切替時の本装置と相手装置の中継動作について概要を説明します。BCUの切替を次の図に示します。

図4-4 BCUの切替

[図データ]

この図では端末aとd,bとcがルータX,Y,本装置を介して通信している例です。使用しているルーティングプロトコル(RIP,OSPF,BGP4,IS-IS,RIPng,OSPFv3,BGP4+)によって相手ルータの動作が異なります。次にルーティングプロトコルごとのBCU切替について説明します。

(a) ルーティングプロトコルにRIP,RIPngを使用している場合

RIPとRIPngでは相手ルータの動作が同じなのでRIPを例に説明します。

(b) ルーティングプロトコルにOSPF,BGP4,IS-IS,OSPFv3,BGP4+を使用している場合

RIP/RIPng以外のプロトコルには,隣接ルータとの接続切断を検出する機能があります。グレースフル・リスタート機能を使用していない場合,本装置が系切替すると,隣接ルータでは以前の接続が切断したものと認識します。この結果,隣接ルータがパケット転送を停止するため,本装置を経由する通信が一時的に停止します。グレースフル・リスタートを使用する場合については,「(c) グレースフル・リスタートを使用する場合」を参照してください。

以下,OSPF,BGP4,IS-IS,OSPFv3,BGP4+では相手ルータの動作が同じなのでBGP4を例に説明します。

(c) グレースフル・リスタートを使用する場合

グレースフル・リスタートは,装置のBCUが系切替したり,運用コマンドなどによりルーティングプログラムが再起動したりしたときに,ネットワークから経路が消えることによる通信停止時間を短縮する技術です。

(b) ルーティングプロトコルにOSPF,BGP4,IS-IS,OSPFv3,BGP4+を使用している場合」で説明したように,装置のBCUが系切替したとき,隣接ルータでは以前の接続が切断したものと認識して,経路を削除するため,ネットワーク全体では通信が停止します。

グレースフル・リスタートでは,この問題を解決して切替時の通信停止時間を短縮します。具体的には以下の方法によって解決します。

以下,グレースフル・リスタートを使用している場合の動作を説明します。OSPF,BGP4,IS-IS,OSPFv3,BGP4+では相手ルータの動作が同じなのでBGP4を例に説明します。

[注意事項]
  1. グレースフル・リスタート一般の適用範囲については,「解説書 Vol.1 12.8 グレースフル・リスタートの概要」を参照してください。
  2. 各プロトコル固有のグレースフル・リスタートの方式・動作・適用範囲については,以下を参照してください。
    OSPF:「解説書 Vol.1 12.5.9 グレースフル・リスタート
    BGP4:「解説書 Vol.1 13.3.11 グレースフル・リスタート
    IS-IS:「解説書 Vol.1 14.2.8 グレースフル・リスタート
    OSPFv3:「解説書 Vol.1 17.5.8 グレースフル・リスタート
    BGP4+:「解説書 Vol.1 18.3.11 グレースフル・リスタート
  3. PSUの経路保持時間を,グレースフル・リスタートの経路学習時間よりも長くなるように設定してください。経路保持時間のほうが短い場合,系切替後の新しい経路を学習する前に切替前の経路を削除するので,通信が停止します。

(d) マルチキャストルーティングプロトコルにPIM-SMを使用している場合【OP-MLT】

IPv4 PIM-SM,IPv4 PIM-SSM,IPv6 PIM-SM,IPv6 PIM-SSM,PIM-DM,DVMRPでは動作が同じなので,IPv4 PIM-SMを例に説明します。

IPv6 PIM-SM,IPv6 PIM-SSMの場合はIGMPがMLDとなります。また,IPv4 PIM-SSM,IPv6 PIM-SSM,IPv4 PIM-DM,DVMRPにはランデブーポイントは存在しません。

IPv4 PIM-SM,IPv6 PIM-SSMは系切替時に通信を継続できるnonstop forwarding機能をサポートしています。nonstop forwarding機能については「(e) マルチキャストルーティングプロトコルにPIM-SM(nonstop forwarding機能)を使用している場合【OP-MLT】」を参照してください。

(e) マルチキャストルーティングプロトコルにPIM-SM(nonstop forwarding機能)を使用している場合【OP-MLT】

IPv4 PIM-SM,IPv6 PIM-SSMは系切替時に通信を継続することが可能なnonstop forwarding機能をサポートしています。

本機能は,コンフィグレーションでnonstop-forwarding設定をした場合だけ有効です。nonstop-forwarding設定をしない場合は,「(d) マルチキャストルーティングプロトコルにPIM-SMを使用している場合【OP-MLT】」と同様の動作となります。

IPv4 PIM-SM,IPv6 PIM-SSMでは動作が同じなので,IPv4 PIM-SMを例にnonstop forwarding機能について説明します。

IPv6 PIM-SSMの場合は,IGMPがMLDとなりランデブーポイントは存在しません。

[注意事項]
  1. IPv4 PIM-SM nonstop forwarding機能についての注意事項は「解説書 Vol.1 15.6.1(3) PIM-SMの使用」を参照してください。
  2. IPv6 PIM-SSM nonstop forwarding機能についての注意事項は「解説書 Vol.1 19.6.1(3) IPv6 PIM-SSM」を参照してください。

(3) BCUおよびBSU切替時の本装置と相手ルータの中継動作【AX5400S】

本装置の運用系に障害が発生して系切替が発生した場合,旧運用系で保持していたBCUおよびBSUのルーティングテーブルは新運用系に引き継がれないで初期化されます。このため,系切替が完了しても相手ルータからルーティング情報を再学習するまで通信が停止します。

(4) コンフィグレーション不一致時の処理

一重化の運用中に運用系のコンフィグレーションを変更したあとで二重化運用に戻した場合,運用系と待機系でコンフィグレーションの差分が生じます。この状態では系切替発生時に運用上の動作矛盾が発生する可能性があります。このため,本装置では警告メッセージを出すとともに両系のコンフィグレーションの同期が取れるまで以降の系切替を抑止,または系切替後PSU(AX5400SではBSU)が再起動します。

また,立ち上げ時にコンフィグレーションの差分が生じた場合も同様の処理をします。この場合は,ユーザ操作(コマンド)でコンフィグレーションの同期を取る必要があります。

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