30.1.5 BGP4+【SL-L3A】
- 〈この項の構成〉
(1) BGP4+学習経路フィルタリング
BGP4+では,学習した経路すべてをフィルタできます。フィルタした結果,学習しないことになった経路は,デフォルトではルーティングテーブルに入りません。
- 注意
-
BGP4+の学習経路フィルタリングを設定または変更したあと,適切なタイミングで運用コマンドclear ipv6 bgp * inまたはclear ipv6 bgp * bothを実行してください。上記運用コマンドを実行するまでの間は,変更前の経路フィルタリング設定に従って動作します。
clear ipv6 bgp * inを実行すると,変更したあとの経路フィルタリング設定を学習経路フィルタリングに使用します。clear ipv6 bgp * bothを実行すると,変更したあとの経路フィルタリング設定を学習経路フィルタリングと広告経路フィルタリングに使用します。
(a) フィルタの適用方法と適用順
学習した経路を,distribute-list inとneighbor inに従ってフィルタします。neighbor inで指定したフィルタは,指定したピアまたは,ピアグループに所属するピアから学習した経路にだけ適用します。BGP4+学習経路フィルタリングに使うコンフィグレーションコマンドを次の表に示します。
経路を学習したら,設定したフィルタを表の順番に適用します。適用するフィルタが一つもない場合,またはフィルタを適用した結果がすべてpermitである場合,学習経路を有効経路としてルーティングテーブルに導入します。適用した結果がdenyであるフィルタが一つでもある場合,その学習経路は無効経路になります。
コマンド名 |
パラメータ |
フィルタ対象経路 |
---|---|---|
neighbor in(BGP4+)(route-map指定) |
<IPv6>(ピアアドレス) |
指定したピアから学習した経路だけ,フィルタリング対象になります。 |
neighbor in(BGP4+)(prefix-list指定) |
<IPv6>(ピアアドレス) |
指定したピアから学習した経路だけ,フィルタリング対象になります。 |
neighbor in(BGP4+)(route-map指定) |
<Peer-Group>(ピアグループ) |
指定したピアグループに所属するピアから学習した経路だけ,フィルタリング対象になります。 |
neighbor in(BGP4+)(prefix-list指定) |
<Peer-Group>(ピアグループ) |
指定したピアグループに所属するピアから学習した経路だけ,フィルタリング対象になります。 |
distribute-list in (BGP4+) |
なし |
BGP4+で学習した経路すべてがフィルタリング対象になります。 |
(b) 学習経路フィルタリングで変更可能な経路属性
BGP4+経路の学習経路フィルタリングで変更可能な属性を次の表に示します。
ディスタンス値以外の値は,BGP4+の優先経路選択に用います。ディスタンス値は,ルーティング種別間の優先経路選択に用います。
属性 |
デフォルト値 |
---|---|
ディスタンス値 |
distance bgpで指定した値。 指定していない場合は,次の値を使います。 内部ピア:200 外部ピア:20 メンバーAS間ピア:200 |
MED属性 |
経路受信時の属性値。 |
LOCAL_PREF属性 |
内部ピア:経路受信時の属性値。 外部ピア:bgp default local-preferenceで指定した値。 未指定時は100。 メンバーAS間ピア:経路受信時の属性値。 |
AS_PATH属性 |
経路受信時の属性値。 |
COMMUNITIES属性 |
経路受信時の属性値。 |
ORIGIN属性値 |
経路受信時の属性値。 |
- 注意
-
AS_PATH属性にASを付け加えられるのは,外部ピアから学習した経路だけです。内部ピアやメンバーAS間ピアから学習した経路のAS_PATH属性にASを加えることはできません。
(2) BGP4+広告経路フィルタリング
BGP4+では,ルーティングテーブルの優先経路のほかに,他ルーティングの経路を優先したために優先でなくなったBGP4+経路,およびBGP4+のnetwork設定による経路を広告できます。この3種類について宛先ネットワークが同じ経路を広告することになった場合,説明した順で経路を一つ選択し,広告します。
広告経路フィルタリングの設定をしていない場合,BGP4+経路だけを広告します。ただし,経路の学習元ピアと同じピアへ広告し戻すことはできません。
- 注意
-
BGP4+の広告経路フィルタリングを設定または変更したあと,適切なタイミングで運用コマンドclear ipv6 bgp * outまたはclear ipv6 bgp * bothを実行してください。上記運用コマンドを実行するまでの間は,変更前の経路フィルタリング設定に従って動作します。
clear ipv6 bgp * outを実行すると,変更したあとの経路フィルタリング設定を広告経路フィルタリングに使用します。clear ipv6 bgp * bothを実行すると,変更したあとの経路フィルタリング設定を学習経路フィルタリングと広告経路フィルタリングに使用します。
(a) 広告経路フィルタリングで変更可能な経路属性
BGP4+広告経路フィルタリングで変更可能な属性を次の表に示します。
属性 |
デフォルト値 |
---|---|
MED属性 |
広告先ピア種別と経路学習元プロトコルによって異なります。 内部ピアへ広告する場合:BGP4+経路であれば,メトリック値を引き継ぎます。BGP4+以外の経路の場合,default-metricで設定した値を用います。default-metricで値を指定していない場合,値なしで広告します。 外部ピアへ広告する場合:default-metricで設定した値を用います。default-metricで値を指定していない場合,値なしで広告します。 メンバーAS間ピアへ広告する場合:BGP4+経路であれば,メトリック値を引き継ぎます。BGP4+以外の経路の場合,default-metricで設定した値を用います。default-metricで値を指定していない場合,値なしで広告します。 |
LOCAL PREF属性 |
BGP4+経路の場合,LOCAL_PREF属性を引き継ぎます。 BGP4+以外の経路の場合,bgp default local-preferenceで設定した値を用います。bgp default local-preferenceを設定していない場合,値100を用います。ただし,広告先ピアが外部ピアである場合,広告にLOCAL_PREF属性は含まれません。 |
AS_PATH属性 |
ルーティングテーブルの経路の値を引き継ぎます。 |
ORIGIN属性 |
|
COMMUNITIES属性 |
- 注意
-
neighbor send-communityを設定していない場合,COMMUNITIES属性を広告しません。
(b) フィルタの適用方法と適用順
広告経路フィルタリングは,次に示す手順に分かれています。
-
まず,BGP4+で広告したい経路を選択します。広告したい経路の学習元プロトコルを指定します。プロトコルを指定するには,コンフィグレーションコマンドredistributeを使用します。redistributeに条件経路種別やroute-mapを指定すると,指定した種別の経路やroute-mapを通過した経路だけが広告対象になります。redistributeでは,ルーティングテーブル上の経路属性値と条件を比較します。
BGP4+経路は,redistributeで指定しなくても広告されます。
redistributeに経路属性を変更するroute-mapや経路属性を直接指定することで,広告する経路の属性を変更することもできます。
-
MED属性,LOCAL_PREF属性をプロトコルで決められたデフォルト値に設定します。ただし,redistributeで属性値を変更している場合はredistributeで変更した値をそのまま使用します。
BGP4+の広告経路属性のデフォルト値については,「表30‒16 BGP4+広告経路フィルタリングで変更可能なBGP4+経路の属性」を参照してください。
-
redistributeで選択した経路を,neighbor outとdistribute-list outに従ってフィルタします。neighbor outで指定したフィルタは,指定したピアまたは,ピアグループに所属するピアへ広告する場合にだけ適用します。また,プロトコルを指定すると,指定したプロトコルで学習した経路にだけフィルタを適用します。コンフィグレーションコマンドとその適用先を次の表に示します。
経路をピアへ広告するに当たり,広告先や経路学習元プロトコルに応じてフィルタを選択し,それを表の順番に適用します。適用する経路フィルタが一つもない場合,またはフィルタした結果がすべてpermitである場合,指定ピアへ経路を広告します。フィルタした結果がdenyである経路フィルタが一つでもある場合,そのピアへはその経路を広告しません。
neighbor outやdistribute-list outにroute-mapを指定した場合,デフォルト広告属性値やredistributeで変更したあとの属性値に従って経路をフィルタします。
neighbor outやdistribute-list outに属性を変更するroute-mapを指定することによって,広告する経路の属性を変更することもできます。
表30‒17 BGP4+広告経路フィルタリングのコンフィグレーションコマンド コマンド名
パラメータ
フィルタ対象経路
neighbor out(BGP4+)(route-map指定)
<IPv6>(ピアアドレス)
<Protocol>
指定ピアへ広告する指定したプロトコルの経路にフィルタを適用します。
neighbor out(BGP4+)(prefix-list指定)
<IPv6>(ピアアドレス)
<Protocol>
neighbor out(BGP4+)(route-map指定)
<IPv6>(ピアアドレス)
指定ピアへ広告する経路にフィルタを適用します。
neighbor out(BGP4+)(prefix-list指定)
<IPv6>(ピアアドレス)
neighbor out(BGP4+)(route-map指定)
<Peer-Group>(ピアグループ)
<Protocol>
指定したピアグループに所属するピアへ広告する指定したプロトコルの経路にフィルタを適用します。
neighbor out(BGP4+)(prefix-list指定)
<Peer-Group>(ピアグループ)
<Protocol>
neighbor out(BGP4+)(route-map指定)
<Peer-Group>(ピアグループ)
指定したピアグループに所属するピアへ広告する経路にフィルタを適用します。
neighbor out(BGP4+)(prefix-list指定)
<Peer-Group>(ピアグループ)
distribute-list out(BGP4+)
<Protocol>
広告先に関係なく,指定したプロトコルの経路にフィルタを適用します。
なし
広告先に関係なく,すべての経路にフィルタを適用します。