コンフィグレーションガイド Vol.3


30.1.4 OSPFv3【SL-L3A】

〈この項の構成〉

(1) OSPFv3学習経路フィルタリング

OSPFv3では,SPF計算で求まった経路の中で,AS外経路だけフィルタできます。フィルタした結果,学習しないことになったAS外経路は,ルーティングテーブルに無効経路として導入されます。

エリア内経路・エリア間経路は,フィルタされることなくルーティングテーブルに入ります。

学習経路フィルタリングで経路を無効にしても,ほかのルータには該当経路ができます。これは,経路の元となったLSAがOSPFv3ドメイン内のほかのルータへ伝わるからです。学習経路フィルタリングは,LSAから計算したAS外経路は経路フィルタリングしますが,経路の元になったLSAはフィルタしません。

(a) フィルタの適用方法と適用順

学習した経路の中でAS外経路をdistribute-list inで指定したフィルタでフィルタします。OSPFv3学習経路フィルタリングに使うコンフィグレーションコマンドを次の表に示します。

適用するフィルタがない場合,またはフィルタした結果がpermitである場合,経路を有効経路としてルーティングテーブルに導入します。フィルタした結果がdenyである場合,その経路は無効経路になります。

表30‒10 OSPFv3学習経路フィルタリングのコンフィグレーションコマンド

コマンド名

フィルタ対象経路

distribute-list in (OSPFv3)

設定したOSPFv3ドメインで求まったAS外経路がフィルタリング対象になります。

(b) 学習経路フィルタリングで変更可能な経路属性

OSPFv3学習経路フィルタリングで変更可能な属性を次の表に示します。

OSPFv3学習経路フィルタリングでは,ディスタンス値だけを変更できます。変更したディスタンス値は,ルーティング種別間の優先経路選択に用います。

表30‒11 OSPFv3学習経路フィルタリングで変更可能な経路の属性

属性

デフォルト値

ディスタンス値

distance ospf(OSPFv3)に指定した値。

指定していない場合は110。

(2) OSPFv3広告経路フィルタリング

OSPFv3では,OSPFv3インタフェースの直結経路をエリア内経路またはエリア間経路として広告します。これは,広告経路フィルタリングでは制御できません。

また,OSPFv3経路もほかのルータに伝わります。これも,経路フィルタリングでは制御できません。これは,経路フィルタリングにかかわらず,経路の元であるLSAは無条件で伝達するからです。

上記以外の優先経路は,広告経路フィルタリングによってOSPFv3へ広告できます。AS外経路として広告します。

広告経路フィルタリングの設定をしていない場合,OSPFv3インタフェースの直結経路とOSPFv3経路のほかは,どの経路も広告しません。

(a) 広告経路フィルタリングで変更可能な経路属性

OSPFv3の広告経路フィルタリングで変更可能な属性を次の表に示します。

表30‒12 OSPFv3広告経路フィルタリングで変更可能なOSPFv3 AS外経路の属性

属性

経路学習元プロトコル

デフォルト値

メトリック値

直結経路

20

BGP4+経路

default-metric (OSPFv3)で設定した値。

default-metric設定がない場合は1。

その他

default-metric (OSPFv3) で設定した値。

default-metric設定がない場合は20。

OSPFv3経路種別

全プロトコル共通

AS外経路のType 2。

タグ値

全プロトコル共通

経路情報のタグ値を引き継ぎます。

注意

メトリック値を16777215以上に変更するように設定することもできます。しかし,変更後のメトリック値が16777215以上の経路は広告されません。

(b) フィルタの適用方法と適用順

広告経路フィルタリングは,次に示す手順に分かれています。

  1. まず,OSPFv3で広告したい経路を選択します。広告したい経路の学習元プロトコルを指定します。プロトコルを指定するには,コンフィグレーションコマンドredistributeを使用します。ただし,OSPFv3の当該ドメインを指定しても,そのドメインの経路を再広告することはありません。

    redistributeに経路種別を指定することにより,指定した種別の経路だけを広告対象にすることができます。また,route-mapを指定することにより,route-mapでフィルタした結果がpermitである経路だけを広告対象にすることもできます。redistributeでは,条件の比較にルーティングテーブル上の経路属性値を使用します。

    redistributeに経路属性を変更するroute-mapや経路属性を直接指定することで,広告する経路の属性を変更することもできます。

  2. メトリック値とOSPFv3経路種別をプロトコルで決められたデフォルト値に設定します。ただし,redistributeで属性値を変更している場合はredistributeで変更した値をそのまま使用します。

    OSPFv3の広告経路属性のデフォルト値については,「表30‒12 OSPFv3広告経路フィルタリングで変更可能なOSPFv3 AS外経路の属性」を参照してください。

  3. redistributeで選択した経路にdistribute-list outに従ってフィルタを適用します。パラメータにプロトコルを指定することにより,指定したプロトコルで学習した経路にだけフィルタを適用します。コンフィグレーションコマンドを次の表に示します。

    経路をOSPFv3ドメインへ広告するに当たり,経路の学習元プロトコルに応じてフィルタを選択し,それを表の順番に適用します。適用するフィルタが一つもない場合,またはフィルタした結果がすべてpermitである場合,その経路を広告します。適用した結果がdenyであるフィルタが一つでもある場合,その経路を広告しません。

    distribute-list outにroute-mapを指定した場合,広告デフォルト値やredistributeで変更したあとの属性値に従って経路をフィルタします。

    distribute-list outに経路属性を変更するroute-mapを指定することで,広告する経路の属性を変更することもできます。

注意

手順3のdistribute-list outによる広告経路フィルタリング時に”match route-type”を実行すると,”external”と,”external 1””external 2”のどちらかに一致するようになります。これは,経路属性の中のOSPFv3経路種別が,redistributeまたは広告デフォルト属性値によって外部経路のType 1またはType 2に書き換えられたあとだからです。

表30‒13 OSPFv3広告経路フィルタリングのコンフィグレーションコマンド

コマンド名

パラメータ

フィルタ対象経路

distribute-list out (OSPFv3)

<Protocol>

広告先に関係なく,指定したプロトコルの経路にフィルタを適用します。

なし

広告先に関係なく,すべての経路にフィルタを適用します。