コンフィグレーションガイド Vol.1


27.10.3 マルチプルスパニングツリーのトポロジー設定

〈この項の構成〉

(1) インスタンスごとのブリッジ優先度の設定

ブリッジ優先度は,ルートブリッジを決定するためのパラメータです。トポロジーを設計する際に,ルートブリッジにしたい装置を最高の優先度に設定し,ルートブリッジに障害が発生したときのために,次にルートブリッジにしたい装置を2番目の優先度に設定します。

[設定のポイント]

ブリッジ優先度は値が小さいほど高い優先度になり,最も小さい値を設定した装置がルートブリッジになります。ルートブリッジはブリッジ優先度と装置のMACアドレスから成るブリッジ識別子で判定するため,本パラメータを設定しない場合は装置のMACアドレスが最も小さい装置がルートブリッジになります。

マルチプルスパニングツリーのブリッジ優先度はインスタンスごとに設定します。インスタンスごとに値を変えた場合,インスタンスごとのロードバランシング(異なるトポロジーの構築)ができます。

[コマンドによる設定]

  1. (config)# spanning-tree mst 0 root priority 4096

    (config)# spanning-tree mst 20 root priority 61440

    CIST(インスタンス0)のブリッジ優先度を4096に,インスタンス20のブリッジ優先度を61440に設定します。

(2) インスタンスごとのパスコストの設定

パスコストは通信経路を決定するためのパラメータです。スパニングツリーのトポロジー設計において,ブリッジ優先度決定後に,指定ブリッジのルートポート(指定ブリッジからルートブリッジへの通信経路)を本パラメータで設計します。

[設定のポイント]

パスコスト値は指定ブリッジの各ポートに設定します。小さい値で設定することによってルートポートに選択されやすくなります。設定しない場合,ポートの速度ごとに異なるデフォルト値になり,高速なポートほどルートポートに選択されやすくなります。

パスコストは,速度の遅いポートを速いポートより優先して経路として使用したい場合に設定します。速いポートを優先したトポロジーとする場合は設定する必要はありません。

パスコストのデフォルト値を次の表に示します。

表27‒18 パスコストのデフォルト値

ポートの速度

パスコストのデフォルト値

10Mbit/s

2000000

100Mbit/s

200000

1Gbit/s

20000

10Gbit/s

2000

40Gbit/s

500

100Gbit/s

200

[コマンドによる設定]

  1. (config)# spanning-tree mst configuration

    (config-mst)# instance 10 vlans 100-150

    (config-mst)# instance 20 vlans 200-250

    (config-mst)# instance 30 vlans 300-350

    (config-mst)# exit

    (config)# interface gigabitethernet 1/0/1

    (config-if)# spanning-tree cost 2000

    MSTインスタンス 10,20,30を設定し,ポート1/0/1のパスコストを2000に設定します。CIST(インスタンス0),MSTインスタンス10,20,30のポート1/0/1のパスコストは2000になります。

  2. (config-if)# spanning-tree mst 20 cost 500

    MSTインスタンス20のポート1/0/1のパスコストを500に変更します。インスタンス20以外は2000で動作します。

[注意事項]

リンクアグリゲーションを使用する場合,チャネルグループのパスコストのデフォルト値は,チャネルグループ内の全ポートの合計ではなく,一つのポートの速度の値となります。リンクアグリゲーションの異速度混在モードを使用している場合は,最も遅いポートの速度の値となります。

(3) インスタンスごとのポート優先度の設定

ポート優先度は2台の装置間での接続をスパニングツリーで冗長化し,パスコストも同じ値とする場合に,どちらのポートを使用するかを決定するために設定します。

2台の装置間の接続を冗長化する機能にはリンクアグリゲーションがあり,通常はリンクアグリゲーションを使用することをお勧めします。接続する対向の装置がリンクアグリゲーションをサポートしていなくスパニングツリーで冗長化する必要がある場合に本機能を使用してください。

[設定のポイント]

ポート優先度は値が小さいほど高い優先度となります。2台の装置間で冗長化している場合に,ルートブリッジに近い側の装置でポート優先度の高いポートが通信経路として使われます。本パラメータを設定しない場合はポート番号の小さいポートが優先されます。

[コマンドによる設定]

  1. (config)# interface gigabitethernet 1/0/1

    (config-if)# spanning-tree port-priority 64

    (config-if)# exit

    ポート1/0/1のポート優先度を64に設定します。

  2. (config)# interface gigabitethernet 1/0/1

    (config-if)# spanning-tree mst 20 port-priority 144

    インスタンス20のポート1/0/1にポート優先度144を設定します。ポート1/0/1ではインスタンス20だけポート優先度144となり,そのほかのインスタンスは64で動作します。