コンフィグレーションガイド Vol.3
コンフェデレーションは,ルート・リフレクタと同様にAS内でピアを形成する内部ピアの数を減らすためのもう一つの方法です。コンフェデレーションは,ASを複数のメンバーASに分割して,AS内のピア数を減らします。
- <この項の構成>
- (1) コンフェデレーションの概念と経路情報の流れ
- (2) コンフェデレーション構成での経路選択
- (3) コンフェデレーション構成でのBGP属性の取り扱い
- (4) コンフェデレーション構成でのAS_PATH属性の取り扱い
- (5) コンフェデレーション構成でのCOMMUNITIES属性の取り扱い
(1) コンフェデレーションの概念と経路情報の流れ
コンフェデレーションはASを複数のメンバーASに分割します。メンバーAS内のBGPスピーカはフルメッシュに内部ピアを形成しなければならず,通常の内部ピアの取り扱いと同様です。メンバーAS間は通常の外部ピアと同様にピアを形成すればよく,メンバーAS間の各BGPスピーカでフルメッシュにピアを形成する必要はありません。これによってAS内のピア数を減らします。なお,本装置ではメンバーAS間のピアをメンバーAS間ピアと呼びます。
コンフェデレーション構成での経路情報の流れを次の図に示します。
図13-25 コンフェデレーション構成での経路情報の流れ
ルータ1,ルータ2,およびルータ3でメンバーASを形成しています。また,ルータ4,ルータ5,およびルータ6でメンバーASを形成しています。ルータ8から通知された経路情報はルータ2によってメンバーAS内のほかのBGPスピーカ(ルータ1,ルータ3)に配布されます。ルータ2からルータ1に通知された経路情報はほかのメンバーAS(ルータ4)に配布されます。さらに,ルータ1からルータ4に通知された経路情報は,メンバーAS内のほかのBGPスピーカ(ルータ5,ルータ6)に配布されます。これによって,AS内のすべてのBGPスピーカに経路情報を配布します。
(2) コンフェデレーション構成での経路選択
コンフェデレーション構成での経路選択は,ピア種別(メンバーAS間ピア)の追加によって通常構成(非コンフェデレーション構成)での経路選択と一部異なります。通常構成では「外部ピアで学習した経路,内部ピアで学習した経路の順」で選択しますが,コンフェデレーション構成では「外部ピアで学習した経路,メンバーAS間ピアで学習した経路,内部ピアで学習した経路の順」で選択します。
コンフェデレーション構成での経路選択の条件を,優先順位が高い順に次に示します。
- weight値が最も大きい経路を選択します。
- LOCAL_PREF属性の値が最も大きい経路を選択します。
- AS_PATH属性のAS数が最も短い経路を選択します。
AS_PATH属性上のパスタイプAS_SETは,全体で一つのASとしてカウントします。AS_PATH属性上のパスタイプAS_CONFED_SEQUENCEおよびAS_CONFED_SETは,ASパス長に含まれません。
- ORIGIN属性の値でIGP,EGP,Incompleteの順で選択します。
- MED属性の値が最も小さい経路を選択します。
MED属性値による経路選択は,同一隣接ASから学習した重複経路に対してだけ有効です。なお,コンフィグレーションコマンドbgp always-compare-medを設定すると,異なる隣接ASから学習した重複経路に対しても有効となります。
- 外部ピアで学習した経路,メンバーAS間ピアで学習した経路,内部ピアで学習した経路の順で選択します。
- ネクストホップが最も近い(ネクストホップ解決時に使用したIGP経路のメトリック値が最も小さい)経路を選択します。
- 相手BGP識別子(ルータID)が最も小さい経路を選択します。ただし,ORIGINATOR_ID属性を持つ経路は,相手BGP識別子(ルータID)の代わりにORIGINATOR_ID属性の値を比較します。
外部ピアから受信した経路間で相手BGP識別子(ルータID)の値が異なる場合は,相手BGP識別子(ルータID)および学習元ピアアドレスによる経路選択をしないで,すでに選択されている経路を採用します。なお,コンフィグレーションコマンドbgp bestpath compare-routeridを設定すると,外部ピアから受信した経路間で相手BGP識別子(ルータID)の値が異なる場合にも相手BGP識別子(ルータID)による経路選択ができます。
- CLUSTER_LIST属性長が最も短い経路を選択します。
CLUSTER_LIST属性を持たない経路は,CLUSTER_LIST属性長を0として比較します。
- 学習元ピアのアドレスが小さい経路を選択します。
外部ピアから受信した経路間で相手BGP識別子(ルータID)の値が異なる場合は,相手BGP識別子(ルータID)および学習元ピアアドレスによる経路選択をしないで,すでに選択されている経路を採用します。なお,コンフィグレーションコマンドbgp bestpath compare-routeridを設定すると,外部ピアから受信した経路間で相手BGP識別子(ルータID)の値が異なる場合にも相手BGP識別子(ルータID)による経路選択ができます。
(3) コンフェデレーション構成でのBGP属性の取り扱い
コンフェデレーション構成でのBGP属性の取り扱いは,通常構成(非コンフェデレーション構成)でのBGP属性の取り扱いとほぼ同様ですが,AS_PATH属性,およびCOMMUNITIES属性について一部動作が異なります。なお,メンバーAS間ピアでのBGP属性の取り扱いは,内部ピアでのBGP属性の取り扱いと同様です。
(4) コンフェデレーション構成でのAS_PATH属性の取り扱い
コンフェデレーション構成でのAS_PATH属性の取り扱いは,メンバーAS間ピアに経路情報を通知するとき,AS_PATH属性にパスタイプAS_CONFED_SEQUENCEで自メンバーAS番号を追加します。また,ほかのAS(外部ピア)に経路情報を通知するとき,AS_PATH属性からパスタイプAS_CONFED_SEQUENCEを取り除き,パスタイプAS_SEQUENCEで自AS番号を追加します。そのほかのAS_PATH属性の取り扱いは,通常構成と同様です。
AS_PATH属性の取り扱いを次の図に示します。
図13-26 AS_PATH属性の取り扱い
ルータ1はAS100から通知されたASPATH:(AS_SEQUENCE)100の経路情報をほかのメンバーASであるルータ2に配布するとき,AS_PATH属性にパスタイプAS_CONFED_SEQUENCEで自メンバーAS番号(65001)を追加します。ルータ2はルータ1から通知されたASPATH:(AS_CONFED_SEQUENCE)65001,(AS_SEQUENCE)100の経路情報をAS300に配布するとき,AS_PATH属性のパスタイプAS_CONFED_SEQUENCEを取り除き,パスタイプAS_SEQUENCEで自AS番号(200)を追加します。
(5) コンフェデレーション構成でのCOMMUNITIES属性の取り扱い
コンフェデレーション構成ではRFC1997で定義されるウェルノン・コミュニティについて,次のように取り扱います。そのほかのコミュニティの取り扱いは,通常構成と同様です。
RFC1997で定義されるウェルノン・コミュニティを,「表13-12 RFC1997で定義されるウェルノン・コミュニティ」に示します。また,COMMUNITIES属性を持つ経路情報の広告範囲を,「図13-27 COMMUNITIES属性を持つ経路情報の広告範囲」に示します。
表13-12 RFC1997で定義されるウェルノン・コミュニティ
コミュニティ 内容 no-export この経路情報をAS外に広告しません。 no-advertise この経路情報をほかのピアに広告しません。 local-AS この経路情報をメンバーAS外に広告しません。 図13-27 COMMUNITIES属性を持つ経路情報の広告範囲
All Rights Reserved, Copyright(C), 2017, 2020, ALAXALA Networks, Corp.