コンフィグレーションガイド Vol.3
ポリシーベースルーティングのトラッキング機能では,ネットワーク上の装置をトラック対象としてポーリングパケットを送信して,通信可能な場合にトラック状態をUpにします。
本装置では,トラック対象の装置へ一定間隔でポーリングパケットを送信して,その応答パケットが戻ってくるかどうかを監視します。応答パケットを受信するとポーリング成功と見なします。ポーリング成功が一定回数続くと,トラック状態をUpにします。応答パケットを受信しないとポーリング失敗と見なします。ポーリング失敗が一定回数続くと,トラック状態をDownにします。
- <この項の構成>
- (1) IPv4 ICMPポーリング監視
- (2) ポーリング結果と検証シーケンス
- (3) ポーリング監視の注意事項
(1) IPv4 ICMPポーリング監視
IPv4 ICMPポーリング監視では,トラック対象としてネットワーク上の装置をIPv4アドレスで指定します。ポーリングパケットとして,IPv4 ICMP Echoパケットをトラック対象のIPv4アドレスへ送信します。ポーリングの応答パケットとしてIPv4 ICMP Echo Replyパケットが戻ってくるかどうかを監視します。
(2) ポーリング結果と検証シーケンス
ポーリング監視では,ポーリングパケットを定期的に送信します。送信後,応答待ち時間だけ応答パケットを待ちます。時間内に応答パケットを受信するとポーリングは成功です。パケットを受信しないで応答待ち時間を経過した場合,ポーリングは失敗です。
しかし,ネットワークでは,通信できる状況でも一時的にパケットが廃棄されることがあります。また,通信できない状況でも一時的に通信できることがあります。このようなネットワークにポーリング監視を適用してポーリング結果を直接トラック状態に反映すると,トラック状態が不安定になるおそれがあります。
そのため,本装置のポーリング監視では,ポーリング結果をトラック状態に反映するまでの検証期間があります。検証期間中はそれまでのトラック状態を継続したまま,ポーリング結果によってトラック状態を変更してよいかを検証します。検証期間があることで,通信が安定しない状況でのトラック状態の不用意な切り替えを抑止できます。なお,検証期間はポーリング回数やポーリング間隔を指定して調整できます。また,トラック状態を変更するのに必要なポーリング回数やポーリング間隔は,トラックごとに指定できます。
ポーリング監視トラックに設定できる項目を次の表に示します。各項目はコンフィグレーションコマンドのパラメータで指定します。
表4-7 ポーリング監視トラックに設定できる項目
項目 説明 デフォルト値 応答待ち時間 ポーリングパケットを送信してから応答パケットを受信するまでの待ち時間 2秒 ポーリング間隔 検証中以外で動作中のポーリングパケット送信間隔 6秒 トラック状態をUpと判定するポーリング成功回数 障害回復検証中にトラック状態をUpと判定するために必要なポーリング成功回数 4回 障害回復検証中のポーリング試行回数 障害回復検証を続けるポーリングの最大回数 5回 障害回復検証中のポーリング試行間隔 障害回復検証中のポーリングパケット送信間隔 2秒 トラック状態をDownと判定するポーリング失敗回数 障害発生検証中にトラック状態をDownと判定するために必要なポーリング失敗回数 4回 障害発生検証中のポーリング試行回数 障害発生検証を続けるポーリングの最大回数 5回 障害発生検証中のポーリング試行間隔 障害発生検証中のポーリングパケット送信間隔 2秒 トラックにはトラック状態のほかに,トラック動作状態というトラックの動作状況を示す状態があります。検証期間中のトラック動作状態を検証中,それ以外の状態(装置起動からトラック監視の開始までの状態を除く)を動作中と呼びます。
(a) 障害回復検証時
トラック状態がDownのとき,ポーリングの応答結果(失敗)に変化がない状態を継続している間,トラック動作状態は動作中という状態です。動作中は,ポーリング間隔に指定した送信間隔でポーリングパケットが送信されます。
トラック状態がDownのときにポーリングに成功すると,トラック状態をUpへ変更するかどうかの検証を開始します。この検証を障害回復検証といいます。
障害回復検証シーケンスを次の図に示します。この図および説明では,各項目の値をすべてデフォルト値を使って説明しています。
図4-4 障害回復検証シーケンス(検証の結果Upと判定する例)
まず,トラック状態をDownのままトラック動作状態を検証中にして,障害回復検証を開始します。障害回復検証中のポーリングパケット送信間隔は,障害回復検証中のポーリング試行間隔に指定した時間(2秒)です。
障害回復検証中に,トラック状態をUpと判定するポーリング成功回数(4回)だけポーリングに成功すると,トラック状態をUp,トラック動作状態を動作中にして,障害回復検証を終了します。なお,ポーリング成功回数には,障害回復検証を開始するきっかけとなったポーリングの成功を含めます。
障害回復検証中に,障害回復検証中のポーリング試行回数(5回)からトラック状態をUpと判定するポーリング成功回数(4回)を引いて1を足した回数(5−4+1=2回)だけポーリングに失敗すると,トラック状態をDownのままトラック動作状態を動作中にして,障害回復検証を終了します。
このように,トラック状態の変化に関係なく,障害回復検証中のポーリング試行回数に指定した回数(5回)以内のポーリングで障害回復検証が終了します。
(b) 障害発生検証時
トラック状態がUpのとき,ポーリングの応答結果(成功)に変化がない状態を継続している間,トラック動作状態は動作中という状態です。動作中は,ポーリング間隔に指定した送信間隔でポーリングパケットが送信されます。
トラック状態がUpのときにポーリングに失敗すると,トラック状態をDownへ変更するかどうかの検証を開始します。この検証を障害発生検証といいます。
障害発生検証シーケンスを次の図に示します。この図および説明では,各項目の値をすべてデフォルト値を使って説明しています。
図4-5 障害発生検証シーケンス(検証の結果Downと判定する例)
まず,トラック状態をUpのままトラック動作状態を検証中にして,障害発生検証を開始します。障害発生検証中のポーリングパケット送信間隔は,障害発生検証中のポーリング試行間隔に指定した時間(2秒)です。
障害発生検証中に,トラック状態をDownと判定するポーリング失敗回数(4回)だけポーリングに失敗すると,トラック状態をDown,トラック動作状態を動作中にして,障害発生検証を終了します。なお,ポーリング失敗回数には,障害発生検証を開始するきっかけとなったポーリングの失敗を含めます。
障害発生検証中に,障害発生検証中のポーリング試行回数(5回)からトラック状態をDownと判定するポーリング失敗回数(4回)を引いて1を足した回数(5−4+1=2回)だけポーリングに成功すると,トラック状態をUpのままトラック動作状態を動作中にして,障害発生検証を終了します。
このように,トラック状態の変化に関係なく,障害発生検証中のポーリング試行回数に指定した回数(5回)以内のポーリングで障害発生検証が終了します。
(3) ポーリング監視の注意事項
- ポリシーベースルーティンググループと連携してトラックを使用する場合は,トラック状態をDownと判定するポーリング失敗回数を1回にしないことを推奨します。これは,ポーリング失敗回数を1回にしたトラックと連携させると,ネットワークの状況によっては制御が不安定になるおそれがあるためです。
運用ログやSNMP通知を使用して1回のポーリング失敗でもネットワーク管理者に伝えたいという場合にだけ,トラック状態をDownと判定するポーリング失敗回数に1回を指定してください。
- ポーリング間隔,障害回復検証中のポーリング試行間隔,および障害発生検証中のポーリング試行間隔には,応答待ち時間よりも長い時間を指定してください。これは,成功と失敗のどちらでも前回のポーリング結果が決まるまで,次のポーリングパケットを送信しないためです。
ポーリング間隔に応答待ち時間よりも短い時間を指定しても,成功の場合は応答パケットを受信するまで,失敗の場合は応答待ち時間が経過するまで,次のポーリングパケットを送信しません。
- すべてのポーリング監視トラックのポーリングパケットの送信頻度の合計は,最大で100ppsです。トラック動作状態が検証中はポーリング間隔が変わることを考慮したうえで,100ppsに収まるように構成して使用してください。
1秒当たり100パケットを超えるパケットは,次の1秒まで送信が持ち越されます。100ppsを超える構成では,100ppsに収まるようにすべてのトラックのポーリング間隔が広がります。
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