コンフィグレーションガイド Vol.3


14.5.4 ネットワーク構成での注意事項

マルチキャストはサーバ(送信者)から各グループ(受信者)にデータを配信する1(送信者):N(受信者)の片方向通信に適します。IPv4マルチキャストの適応ネットワーク構成,注意事項を次に示します。

〈この項の構成〉

(1) PIM-SMおよびPIM-SSM共通

(a) 注意が必要な構成

次に示す構成でPIM-SMまたはPIM-SSMを使用する場合,注意が必要です。

  • 次の図に示す構成のようにホストと直接接続するルータが同一ネットワーク上に複数存在するインタフェースでは,必ずPIM-SMを動作させてください。

    同一ネットワーク上に複数のルータが存在するインタフェースでPIM-SMを動作させないでIGMPだけを動作させた場合,マルチキャストデータが二重に中継されることがあります。

    図14‒23 注意が必要な構成(複数ルータとホストの接続)

    [図データ]

  • 次の図に示す構成のように本装置Cが本装置Aと本装置BにVRRPを設定した仮想インタフェースをゲートウェイとするスタティックルートを設定した環境では,PIMプロトコルが上流ルータを検出できず,マルチキャスト通信ができません。

    この構成でマルチキャスト通信する場合は,本装置CにランデブーポイントアドレスとBSRアドレスとマルチキャストデータ送信元アドレスへのゲートウェイアドレスを本装置Aまたは本装置Bの実アドレスとするスタティックルートを設定する必要があります。

    図14‒24 注意が必要な構成(VRRPを設定した場合)

    [図データ]

(b) 複数VLANからの不要なマルチキャストパケットによる負荷

次に示す図のようなマルチキャストネットワークの構成で,一つのネットワークに二つのルータが存在する場合,DR(本装置B)がユーザに対して中継したマルチキャストパケットを,非DR(本装置A)が受信します。このとき,本装置Aはネガティブキャッシュエントリを作成して,この不要なパケットをハードウェア廃棄します。

複数VLAN設定時のマルチキャストパケット廃棄処理について次の図に示します。

図14‒25 複数VLAN設定時のマルチキャストパケット廃棄処理

[図データ]

[図データ]

コンフィグレーションコマンドip pim multiple-negative-cacheを設定していない場合,装置当たり一つのマルチキャスト通信(S,G)に対して一つだけネガティブキャッシュエントリを作成します。同一ポートに複数のVLANを設定すると,最初にパケットを受信したVLANを受信インタフェースとするネガティブキャッシュエントリだけを作成します。同じマルチキャストパケットが到着しても,ほかのVLANではネガティブキャッシュエントリを作成しません。

このため,ネガティブキャッシュエントリを作成したVLANではマルチキャストパケットを廃棄できますが,ほかのVLANでwrong-incoming-interfaceまたはcache-misshitとなるマルチキャストパケットを大量に受信すると,CPUで処理するパケットの輻輳が発生します。

コンフィグレーションコマンドip pim multiple-negative-cacheを設定すると,一つのマルチキャスト通信(S,G)に対して複数のネガティブキャッシュエントリを作成できます。複数のVLANでそれぞれネガティブキャッシュエントリを作成できるため,wrong-incoming-interfaceまたはcache-misshitとなるマルチキャストパケットを大量に受信しても,CPUで処理するパケットの輻輳を抑えられます。

(2) PIM-SM

(a) 推奨構成

PIM-SMによるネットワークの構成に当たっては,ツリー型ネットワーク構成および冗長経路が存在するネットワーク構成を推奨します。ただし,ランデブーポイントの配置には十分注意してください。PIM-SM推奨ネットワーク構成を次の図に示します。

図14‒26 PIM-SM推奨ネットワーク構成

[図データ]

[図データ]

(b) 注意が必要な構成

次に示す構成は注意が必要です。

  • 次の図に示すように送信者と直接接続するルータが同一ネットワーク上に2台以上存在する構成で,どれかをランデブーポイントとする場合は,ランデブーポイントがDRになるようにしてください。

    ランデブーポイント以外をDRにした場合,DRからランデブーポイントに対しPIM-Registerメッセージを送信するため,本装置A,Bに負荷が掛かります。また,PIM-Registerメッセージ中のマルチキャストパケットを中継するときに,ランデブーポイントでパケットロスが発生するおそれがあります。なお,ランデブーポイントをDRにした場合は,PIM-Registerメッセージによるカプセル化は行いません。

    図14‒27 注意が必要な構成(複数ルータと送信者の接続)

    [図データ]

(c) 不適応な構成

次に示す構成でPIM-SMは使用しないでください。

  • 送信者とランデブーポイントの間に受信者が存在する構成

    次に示す構成でサーバからグループ1のマルチキャスト通信を行う場合,ランデブーポイント経由の中継が効率よく行えません。

    図14‒28 不適応な構成(送信者とランデブーポイントの間に受信者が存在する場合)

    [図データ]

  • 送信者と同一回線上に複数のPIM-SMルータが動作する構成

    次に示す構成でサーバがマルチキャストデータを送信した場合,DRでないPIM-SMルータに不要な負荷がかかり,本装置の他機能に大きく影響を与えることがあります。回線を分けてください。

    図14‒29 不適応な構成(複数ルータと送信者の接続)

    [図データ]

  • マルチキャストグループ(受信者)と同一回線上に複数のPIM-SMルータを動作させ,ランデブーポイントに接続しないPIM-SMルータが存在する構成

    次に示す構成でグループ1宛てのマルチキャスト通信をした場合,送信者とグループ1間で最短パスが確立しない場合があります。PIM-SMルータ1およびPIM-SMルータ2はランデブーポイントと接続してください。

    図14‒30 不適応な構成(ランデブーポイントに接続しないルータが存在する場合)

    [図データ]

(3) PIM-SSM

(a) 注意が必要な構成

次に示す構成は注意が必要です。

  • マルチキャストグループ(受信者)と同一回線上に複数のPIM-SSMルータが動作する構成

    次に示す構成で,IGMPv2またはIGMPv3(EXCLUDEモード)でPIM-SSMを動作させる場合は,同一回線上の全ルータにコンフィグレーションコマンドip pim ssmおよびip igmp ssm-map staticを設定してください。

    図14‒31 注意が必要な構成(複数ルータとホストの接続)

    [図データ]