7.1.6 複数プロトコル同時動作時の注意事項
(1) OSPFまたはRIP-2とRIP-1の同時動作
OSPFやRIP-2はIPアドレスのClassA,B,Cを意識しないで可変長サブネットマスクを扱うルーティングプロトコルであるのに対して,RIP-1はClassA,B,Cを前提としているため可変長サブネットマスクは扱えません。したがって,両者を同ネットワークで混在して使用する場合には次に示す注意が必要です。この項ではOSPFとRIP-1の関係を例に説明しますが,RIP-2とRIP-1の関係も同様です。
(a) OSPFで学習したサブネット経路をRIP-1で広告しない場合
サブネッティングされたネットワークへの経路は次に示すどちらかの条件に当てはまる場合,該当する経路をRIP-1で広告しないので注意してください。
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RIPを使用しているインタフェースのネットワークアドレスと異なるサブネットマスク長を持つサブネットへの経路。
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RIPを使用しているインタフェースのネットワークアドレスと異なるネットワークアドレスのサブネットへの経路。
■ 異なるサブネットマスク長のサブネット間の接続
次の図の本装置Aの場合,ネットワークBへの経路を自分のルーティングテーブルに登録します。このとき,ネットワークBが前に示した1の条件に当てはまるため,ネットワークAにネットワークBの経路を広告しません。
「図7‒5 サブネット間の接続の例」の本装置Aの場合,ネットワークAとネットワークBは同一ネットワーク内の同一サブネット長のサブネットのために経路を広告します。
■ 異なるネットワークアドレスのサブネット間の接続
次の図の本装置Aの場合,ネットワークBへの経路を自分のルーティングテーブルに登録しますが,ネットワークBが前に示した2の条件に当てはまるため,ネットワークAにネットワークBの経路を広告しません。
「図7‒5 サブネット間の接続の例」の本装置Aの場合,ネットワークAとネットワークBは同一ネットワーク内の同一サブネット長のサブネットのために経路を広告します。
(b) OSPFによるRIPのネットワーク間接続
RIPが動作しているネットワーク間をOSPFで接続する場合は,次に示すどれかの構成で接続してください。
■ サブネットを使用しない。
次の図の場合,ネットワークA,ネットワークBへの経路情報は,それぞれネットワークB,ネットワークAに広告されます。
■ 同一ネットワークで同一サブネット長のサブネット間の接続に使用する。
次の図の場合,ネットワークA,ネットワークBへの経路情報は,それぞれネットワークB,ネットワークAに広告されます。
■ デフォルトルートを広告する。
本装置Aおよび本装置Bに宛先がデフォルトルートのスタティック経路を設定し,RIPが動作しているネットワークに広告します。
次の図の場合,デフォルトルートの広告によって宛先アドレスが自ネットワークに一致しないパケットはデフォルトルートによって本装置Aおよび本装置Bに到達し,OSPF経路経由で相手のネットワークに配送されます。
■ 集約経路を広告する。
本装置Aに学習元がOSPF/OSPFASE(OSPFのAS外経路)であるネットワークB宛ての経路をナチュラルマスクの経路に集約し,RIPが動作しているネットワークに広告するように指定します。
次の図の場合,集約経路の広告によってネットワークB宛てのパケットは本装置Aに到達し,OSPF/OSPFASE経路経由で相手のネットワークに配送されます。
(2) 複数のプロトコルで同じ宛先の経路を学習する場合の注意事項
複数のプロトコルで同じ宛先の経路を学習すると,ネットワーク構成によってはルーティングループが発生することがあります。そのようなネットワーク構成では,経路のフィルタリングによってルーティングループが発生しないように注意してください。
次の図のネットワーク構成例では,10.0.0.0のネットワークはOSPFを使用し,10.1.0.0のネットワークではRIPを使用しています。
ネットワーク10.2.0.0宛ての経路は次の3種類が生成されます。
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ルータCが広告するAS外経路(図の(a))
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OSPFからRIPに広告した経路(図の(b),(c))
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RIPからOSPFに広告した経路(図の(d),(e))
この例では,本装置Bが(d)を選択し本装置Aが(c)を選択した場合,または本装置Aが(e)を選択し本装置Bが(b)を選択した場合に,ルーティングループ(ネクストホップがお互いのルータを向いている)が発生します。このようなケースでは,本装置Aや本装置BがOSPFからRIPに広告した10.2.0.0宛ての経路をRIPからOSPFのAS外経路として学習しないように,経路フィルタリングを設定する必要があります。