7.1.5 ルーティングプロトコルの同時動作
スタティックルーティングおよびダイナミックルーティングの各プロトコルは同時に動作できます。
- 〈この項の構成〉
(1) 学習経路の優先度選択
複数のルーティングプロトコルが同時動作するとき,それぞれは独立した経路選択手順に従って,ある宛先アドレスへの経路情報から一つの最良の経路を選択します。直結経路や集約経路もルーティングプロトコルで学習した経路と同じように一つのプロトコル経路として扱います。その結果,本装置内ではある宛先アドレスへの経路情報が複数存在することになります。このような場合,それぞれの経路情報のディスタンス値が比較されて優先度の高い経路がアクティブ経路になります。
本装置では,スタティック経路ごとおよびダイナミックルーティングのルーティングプロトコル(例えばRIP)ごとに生成する経路情報のデフォルトのディスタンス(優先度)値をコンフィグレーションで設定できます。なお,ディスタンスは値の小さい方の優先度が高くなります。各プロトコルのディスタンスのデフォルト値を次の表に示します。
経路 |
デフォルトディスタンス値 |
---|---|
直結経路 |
0(固定値) |
スタティック経路 |
2 |
BGP4の外部ピア学習経路 |
20 |
OSPFのAS内経路 |
110 |
OSPFのAS外経路 |
110 |
RIP経路 |
120 |
集約経路 |
130 |
BGP4の内部ピア学習経路 |
200 |
BGP4メンバーAS間ピア学習経路 |
200 |
(2) 広告経路
複数のルーティングプロトコルが同時動作するとき,各ルーティングプロトコルで広告する経路情報は同一のルーティングプロトコルで学習した経路情報に限られます。異なるルーティングプロトコルから学習した経路情報は広告されません。
本装置では,あるルーティングプロトコルの経路情報をほかのルーティングプロトコルで広告したい場合や,特定の経路情報の広告をフィルタリングしたい場合には経路フィルタリングによって実現できます。なお,非アクティブ経路の経路情報はほかのルーティングプロトコルで広告できません。
経路フィルタリングについては,「13 経路フィルタリング(IPv4)」を参照してください。
(a) RIPでの経路広告
RIP-1とRIP-2は同一のルーティングプロトコルです。RIP-1とRIP-2はお互いが学習した経路情報を広告します。
(b) OSPFでの経路広告
OSPFの各ドメインは,互いに異なるルーティングプロトコルとして動作します。そのため,一つの宛先アドレスに異なるOSPFドメインに由来する複数のOSPF AS内経路,またはOSPF AS外経路が存在することがあります。OSPFの経路間でディスタンス値が同じ場合には,ドメイン番号の小さい経路を優先します。OSPF AS外経路およびOSPF AS内経路(エリア内経路,エリア間経路)は,ドメインごとにディスタンスのデフォルト値を変更できます。
経路フィルタリングを使用しない場合,本装置内の複数のOSPFドメイン間で互いに経路を広告することはありません。OSPF AS内経路やOSPF AS外経路をほかのOSPFドメインにAS外経路として広告したい場合には,経路フィルタリングを設定してください。
(c) BGP4での経路広告
経路フィルタリングを設定していない場合,あるASから学習したBGP4経路はほかのASに広告されます。この場合,BGP4以外のルーティングプロトコルでBGP4経路と同一宛先経路が存在してもBGP4で選択された最適なBGP4経路が広告されます。
経路フィルタリングを設定している場合,広告される経路情報はディスタンス値によって選択された最も優先度の高い経路が対象となります。