解説書 Vol.1
RAによるアドレス配布には,ルータからの定期的な配布と,端末からのリクエストに対するルータの応答の2種類があります。両者は配布の契機が異なるだけで,どちらの場合も,ルータからのアドレス配布はICMPv6パケットType 134で規定されたRAによって行われます。また,端末からのリクエストはICMPv6パケットType133 のRS(Router Solicitation)によって行われます。
RAを受信した端末は,与えられたプレフィックスと各端末で固有である64ビットのインタフェースID(通常は48ビットのMACアドレスを基に生成)を組み合わせたグローバルアドレスを生成し,RAを受信したインタフェースに設定します。同時にRA送信元アドレス(=RAを送信したルータのインタフェースリンクローカルアドレス)を端末のデフォルトゲートウェイとして設定します。MACアドレスからのインタフェースID生成を次の図に示します。
ルータから端末に伝えられるプレフィックスは,通常はRAを広告するインタフェースに定義されたアドレスプレフィックスのうち,リンクローカルを除いたものです。ただし,それに加えてそのほかのプレフィックスを広告することもできます。また,ルータからのRA送出時間間隔の最大値,最小値をインタフェース単位で設定できます。RAで配布される情報を次の表に示します。
配布情報 説明 設定できる
範囲省略時の
初期値アドレス自動管理設定フラグ
(managed-flag)RA以外の方法(DHCPv6など)によるIPv6アドレス設定を,RA受信を契機に端末で自動的に行わせることを指定するフラグ。
このフラグの値に関係なく,RAによるアドレス設定は必ず行われます。通常はOFFにします。ON/OFF OFF アドレス以外情報設定フラグ
(other-flag)RA以外の方法(DHCPv6など)によるIPv6アドレス以外の情報(DNSサーバなど)を,RA受信を契機に端末で自動的に行わせることを指定するフラグ。通常はOFFにします。 ON/OFF OFF リンクMTU
(link-mtu)端末が実際の通信に使MTU値を指定します。通常使用されるMTU値はRAを受信したインタフェースのMTU値ですが,インタフェースのMTUいっぱいのパケットを端末に使わせたくない場合に,このパラメータをMTU値よりも小さい値に設定します。インタフェースのMTUよりも大きい値を通知することはできません。 1280〜インタフェースのMTU 指定なし 可到達時間
(reachable-time)IPv6ではICMPv6によって隣接ノードの到達性を確認しますが,その確認結果の有効期間を端末に指定します。未指定の場合は端末ごとに定められたデフォルト値が到達性確認結果の有効期間になります。 0〜3600
(秒)指定なし 再送時間
(retrans-timer)IPv6ではICMPv6によって隣接ノードの到達性を確認しますが,そのとき送信するICMPv6パケットの送信間隔を端末に指定します。未指定(=0)の場合は端末ごと決められしたデフォルト値が再送間隔として使用されます。 0 指定なし 端末ホップリミット
(curhoplimit)端末がパケットを送信するときに,何ホップ先まで中継できるかを示すIPv6ヘッダ内のホップリミット領域に設定する値を指定します。 0〜255 64 ルータ生存時間
(lifetime)端末がRAによって確定したデフォルトルータの有効期間。0を指定すると,端末は,受信したRAの送信元アドレスをデフォルトゲートウェイとみなしません。 0〜9000
(秒)RA送出間隔の3倍 リンク層オプション
(advlinkopt)RA送信元のIPv6アドレスに対応するリンク層アドレス。本装置の場合は,RA広告インタフェースがイーサネットおよびギガビット・イーサネットの場合だけ,そのポートのMACアドレスが入ります。このオプションをOFFにすると,各端末でデフォルトゲートウェイのリンク層アドレス解決が行われます。そのためリンク層アドレスによる負荷分散を行えます。本装置ではオプションをOFFに指定してありますが,ロードバランス機能はサポートしていません。 ON/OFF ON ルータ優先度
(router-preference)端末が複数ルータよりRAを受信した場合に,どのRAの情報を優先して使用するか指定します。 high,medium,
lowmedium プレフィックス RAで広告するプレフィックス。指定していないときは,広告するインタフェースについているリンクローカルではないプレフィックスを広告します。それ以外に,さらにプレフィックスを広告したい場合や,インタフェースについているプレフィックスに対して有効期間を設定する場合に使用します。 グローバル,サイトローカルプレフィックス インタフェースの非リンクローカルプレフィックス 自律設定有効フラグ
(autonomous-flag)このオプションがOFFのプレフィックスは端末に付与されません。RAの試験運用以外のときは常時ONにします。 ON/OFF ON オンリンクフラグ
(onlink-flag)このオプションがOFFのプレフィックスについては,端末でのredirectメッセージの送信が抑制されます。RAの試験運用以外の時は常時ONにしてください。 ON/OFF ON 推奨有効期間
(preferred-lifetime)RAによって通知されたプレフィックスを,端末が通信時のソースアドレスに使用することを許可する時間。推奨する有効期間を過ぎてもRAを受信しないと,該当するプレフィックス以外のアドレスを通信のソースアドレスとして使用することを試行します。ただし,ほかに適切なプレフィックスを持たない場合は,端末は推奨する有効期間を過ぎたプレフィックスを通信に使用します。 RA送出間隔の最大値〜4294967296
(秒)604800 最終有効期間
(valid-lifetime)RAによって通知されたプレフィックスが消滅するまでの時間。最終有効期間を過ぎてもRAを受信しないと,端末は該当するプレフィックスのアドレスを削除します。 RA送出間隔の最大値〜4294967296
(秒)2592000
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