コンフィグレーションガイド Vol.3


24.4.5 系切替時の無停止マルチキャスト中継機能

IPv4マルチキャストでは,二重化装置による運用で系切替する場合,無停止でPIM-SMおよびPIM-SSMのマルチキャスト中継を継続する機能をサポートしています。本機能は,コンフィグレーションコマンドip pim nonstop-forwardingを設定すると有効になります。

本機能では,系切替前に最短パスに切り替わったマルチキャスト中継エントリを無停止中継の対象にしています。そのため,本機能を使用しても,PIM-SMプロトコルの通常処理(ランデブーポイント経由,最短パス切り替えなど)で発生するパケットロスは発生します。

系切替後,再学習時間内は系切替前に設定したハードウェアエントリでマルチキャスト中継を継続します。再学習時間内に新しいマルチキャスト経路情報を学習した場合は,すぐに該当するマルチキャスト中継を開始します。また,学習したエントリに対して離脱要求を受信した場合は,すぐに該当するマルチキャスト中継を停止します。再学習時間内に学習しなかったマルチキャスト中継エントリは,再学習時間終了時に削除します。なお,再学習時間の開始時と終了時にはシステムメッセージを出力します。

再学習時間はデフォルトで240秒です。「(2) 再学習時間の算出方法」を参照して,適切な再学習時間を設定してください。

本機能使用時,VRFのインタフェースでIPv4マルチキャストを使用している場合は,IPv4マルチキャストを使用したVRFの全インタフェースで本機能が有効になります。

なお,系切替後のIPv4マルチキャスト中継エントリの再学習状況は,次に示す運用コマンドで確認できます。

〈この項の構成〉

(1) 無停止マルチキャスト中継機能を使用するための前提条件

(a) ユニキャストルーティング高可用機能の使用

無停止マルチキャスト中継機能を使用するときは,ユニキャストルーティング高可用機能を有効にしてください。ユニキャストルーティング高可用機能が無効な場合,系切替後に上流のユニキャスト経路が安定しないため,マルチキャスト中継のパケットロスが多発することがあります。

(b) Generation IDオプションをサポートしている装置の設置

系切替するルータの近隣ルータには,Generation IDオプションをサポート(RFC4601およびRFC5059に準拠)している装置を設置してください。近隣ルータがGeneration IDオプションをサポートしていない場合,系切替後にPIMメッセージの送受信が遅延するため,再学習時間内に再学習が完了しないことがあります。なお,Generation IDオプションについては,「24.4.2 IPv4 PIM-SM」の「(3) 近隣検出」を参照してください。

(2) 再学習時間の算出方法

すべてのマルチキャスト中継エントリの再学習が完了する前に再学習時間が終了すると,未学習のエントリの中継が一時的に停止します。そのため,コンフィグレーションコマンドip pim nonstop-forwardingのaging-timeパラメータには,次の計算式で算出した再学習時間以上の値を設定してください。

再学習時間=次に示す1と2のうち最長値+105秒

  1. IGMPのグループメンバ学習時間

    各IGMPインタフェースのIGMP General Queryメッセージの送信間隔のうち最長値(デフォルトでは125秒)と,IGMP Reportメッセージの最大応答待ち時間(本装置がQuerierの場合は10秒)との合計。

  2. PIM Joinメッセージの受信時間

    各PIMインタフェースの下流ルータから受信するPIM Join/Pruneメッセージの受信間隔のうち最長値(下流ルータが本装置の場合,デフォルトでは60秒)。

(3) 無停止マルチキャスト中継機能使用時のタイマ仕様

本機能を有効にした場合,次に示すタイマ仕様を変更します。

(4) 再学習時間内の上流インタフェースの切り替え

再学習時間内にマルチキャスト中継エントリの上流インタフェースのユニキャスト経路が変更された場合,通常と同様に,該当するエントリの上流インタフェースもユニキャスト経路に従って変更します。このとき,一時的にパケットロスが発生します。

このユニキャスト経路の変更を抑止するには,送信元へのユニキャスト経路をスタティック経路で設定してください。また,ユニキャスト経路の変更によって上流インタフェースが該当するエントリの下流インタフェースに変更された場合,この下流インタフェースへの中継を停止します。

(5) コンフィグレーションコマンド変更時の中継動作

(a) PIM-SSMで使用するアドレス範囲の変更

再学習時間内にコンフィグレーションコマンドでPIM-SSMで使用するアドレス範囲を変更すると,再学習時間が終了します。この場合,再学習時間内に未学習のマルチキャスト中継エントリの中継を停止します。

(b) VRFのマルチキャスト中継の停止

再学習時間内にコンフィグレーションコマンドでVRFのマルチキャスト中継を停止すると,再学習時間が終了します。この場合,残りのすべてのVRFで,再学習時間内に未学習のマルチキャスト中継エントリの中継を停止します。

(c) 下流インタフェースのIPv4マルチキャスト設定

再学習時間内にコンフィグレーションコマンドでマルチキャスト中継エントリの下流インタフェースのIPv4マルチキャストを無効にしても,未学習のエントリの場合は該当するエントリの中継を継続します。ただし,この中継は再学習時間終了時に停止します。

(6) 注意事項