コンフィグレーションガイド Vol.3


22.1.3 マルチパス

マルチパスは,一つの宛先ネットワークに対して複数の経路(パス)を生成して,トラフィックの負荷分散を実現します。本装置でのBGP経路のマルチパス生成はBGP4とBGP4+で同じです。

〈この項の構成〉

(1) IGP経路のマルチパス化によるBGP経路のマルチパス

本装置はBGP経路のネクストホップをIGP経路に基づいて解決します。ネクストホップ解決時,BGP経路のNEXT_HOP属性値に対応するIGP経路がマルチパス化されている場合はBGP経路もマルチパス化されます。IGP経路のマルチパス化によるBGP経路のマルチパス化を次の図に示します。

図22‒3 IGP経路のマルチパス化によるBGP経路のマルチパス化

[図データ]

各ルータ間は物理的に2本のインタフェースが接続されているものとします。各ルータ間のピアリングには装置自体に設定されたアドレスを使用するように構成します。本装置ではループバックインタフェースを指定したコンフィグレーションコマンドip addressで,装置自体にアドレスを設定できます。また,コンフィグレーションコマンドneighbor update-sourceを使用して,ピアリングの自側アドレスにループバックインタフェースに設定したアドレスを指定できます。なお,外部ピアおよびメンバーAS間ピアでコンフィグレーションコマンドneighbor update-sourceを使用する場合は,コンフィグレーションコマンドneighbor ebgp-multihopも合わせて指定してください。

AS100から本装置1に通知されたBGP経路(宛先:ネットワークW,ネクストホップ:A)は,ネクストホップ解決時にIGP経路を参照します。ネクストホップ:A宛てのIGP経路のゲートウェイが「a」および「b」となっているため,BGP経路のゲートウェイも「a」および「b」になります。同様に,本装置1から本装置2に通知されたBGP経路(宛先:ネットワークW,ネクストホップ:B)は,ネクストホップB宛てのIGP経路のゲートウェイが「c」および「d」となっているため,BGP経路のゲートウェイも「c」および「d」になります。

IGP経路のマルチパス化に伴うBGPマルチパスの注意事項

本装置のBGP4でマルチパス化できるIGP経路はスタティック経路およびOSPF経路,BGP4+でマルチパス化できるIGP経路はスタティック経路およびOSPFv3経路です。スタティック経路のマルチパス化については,「14.1 解説」を,OSPF経路のマルチパス化については,「17.1.7 イコールコストマルチパス」を,OSPFv3経路のマルチパス化については,「19.1.7 イコールコストマルチパス」を参照してください。

(2) 複数のピアから学習したBGP経路のマルチパス

本装置はコンフィグレーションコマンドmaximum-pathsを使用して,同一隣接ASと接続された複数のピアから学習したタイブレーク状態にある同一宛先へのBGP経路をマルチパス化できます。また,コンフィグレーションコマンドmaximum-pathsにall-asパラメータを指定すると,異なる隣接ASから学習したBGP経路をマルチパス化できます。タイブレーク条件を次の表に示します。

表22‒2 タイブレーク条件

条件

備考

weight値が等しい

LOCAL_PREF属性の値が等しい

AS_PATH属性の取り扱い属性のAS数が等しい

AS_PATH属性の取り扱い属性上のパスタイプAS_SETは,全体で一つのASとしてカウントします。

ORIGIN属性の値が等しい

MED属性の値が等しい

MED属性値によるタイブレーク条件は,同一隣接ASから学習した重複経路に対してだけ有効になります。なお,コンフィグレーションコマンドbgp always-compare-medを指定すると,異なる隣接ASから学習した重複経路に対しても有効になります。

同一ピアタイプ(外部ピア,メンバーAS間ピア,内部ピア)で学習している

ネクストホップ解決時に使用したIGPメトリックが等しい

(凡例) −:該当しない

複数のピアから学習したBGP経路のマルチパス化を次の図に示します。

図22‒4 複数のピアから学習したBGP経路のマルチパス化

[図データ]

AS100のルータ2,およびルータ3から本装置1に通知されたBGP経路(ルータ2の経路:宛先 ネットワークW,ネクストホップ a,ルータ3の経路:宛先 ネットワークW,ネクストホップ b)がタイブレーク状態である場合,本装置1は各BGP経路が持っているNEXT_HOP属性を基にゲートウェイを生成します。この図の例では,ゲートウェイは「a」および「b」となります。なお,該当するBGP経路を本装置1からそのほかのピアに広告する場合は,今まで示した2経路のうち最優先経路を広告します。