18.1.6 シェーパモード
シェーパモードは,通常ユーザ間の帯域制御方式をNIFごとに決定します。シェーパモードを設定すると,該当するNIFで階層化シェーパが有効になります。
シェーパモードには,RGQ,LLPQ1,およびLLPQ4の三つのモードがあります。シェーパモードを設定したあと,該当するNIFを再起動すると動作に反映されます。
(1) RGQ
RGQは通常ユーザごとの最低帯域を保証しつつ,余剰帯域がある場合は最大帯域まで使用できるようにするモードです。各通常ユーザには設定した最低帯域を分配して,さらに帯域に余剰がある場合は,重みに従った割合で各通常ユーザに帯域を最大帯域まで分配します。RGQの概念を次の図に示します。
|
(a) 通常ユーザの重みが均等な場合
ポート帯域制御によって回線帯域を9Gbit/sにシェーピングする場合で,重みが均等なときの帯域計算例を次の表に示します。
シェーパユーザ |
入力帯域 (Gbit/s) |
最低帯域 (Gbit/s) |
最大帯域 (Gbit/s) |
余剰帯域※1 (Gbit/s) |
余余剰帯域※2 (Gbit/s) |
送信帯域※3 (Gbit/s) |
---|---|---|---|---|---|---|
通常ユーザ1 |
5 |
2 |
8 |
1 |
0.25 |
3.25 |
通常ユーザ2 |
3.5 |
2 |
8 |
1 |
0.25 |
3.25 |
通常ユーザ3 |
2.5 |
2 |
8 |
0.5 |
0 |
2.5 |
- 注※1
-
回線内の余剰帯域=回線帯域−各通常ユーザの最低帯域の合計=9−(2+2+2)=3(Gbit/s)
通常ユーザ1,2,および3への余剰帯域の分配=3×(1÷(1+1+1))=1(Gbit/s)
通常ユーザ3への入力帯域が2.5Gbit/sのため,余剰帯域で使用する帯域は0.5Gbit/sだけとなります。
- 注※2
-
回線内の余剰帯域の余剰帯域(以降,余余剰帯域)=回線帯域−各通常ユーザの最低帯域の合計−各通常ユーザの余剰帯域の合計=9−(2+2+2)−(1+1+0.5)=0.5(Gbit/s)
通常ユーザ1および2への余余剰帯域の分配=0.5×(1÷(1+1))=0.25(Gbit/s)
- 注※3
-
各通常ユーザの送信帯域(最大帯域以下)=各通常ユーザの最低帯域+各通常ユーザに分配された余剰帯域+各通常ユーザに分配された余余剰帯域
通常ユーザ1の送信帯域=2+1+0.25=3.25(Gbit/s)
通常ユーザ2の送信帯域=2+1+0.25=3.25(Gbit/s)
通常ユーザ3の送信帯域=2+0.5=2.5(Gbit/s)
(b) 通常ユーザの重みが異なる場合
ポート帯域制御によって回線帯域を9Gbit/sにシェーピングする場合で,ユーザ間の重みが異なり,最大帯域で制限されるときの帯域計算例を次の表に示します。
シェーパユーザ |
入力帯域 (Gbit/s) |
最低帯域 (Gbit/s) |
最大帯域 (Gbit/s) |
余剰帯域※1 (Gbit/s) |
余余剰帯域※2 (Gbit/s) |
送信帯域※3 (Gbit/s) |
---|---|---|---|---|---|---|
通常ユーザ1 (重み2) |
5 |
1 |
8 |
3 |
0.67 |
4.67 |
通常ユーザ2 (重み1) |
3.5 |
1 |
8 |
1.5 |
0.33 |
2.83 |
通常ユーザ3 (重み1) |
2.0 |
1 |
1.5 |
0.5 |
0 |
1.5 |
- 注※1
-
回線内の余剰帯域=回線帯域−各通常ユーザの最低帯域の合計=9−(1+1+1)=6(Gbit/s)
通常ユーザ1への余剰帯域の分配=6×(2÷(2+1+1))=3(Gbit/s)
通常ユーザ2への余剰帯域の分配=6×(1÷(2+1+1))=1.5(Gbit/s)
通常ユーザ3への余剰帯域の分配=6×(1÷(2+1+1))=1.5(Gbit/s)
通常ユーザ3への入力帯域が2Gbit/sのため余剰帯域で使用する帯域は1Gbit/sだけとなりますが,最大帯域が1.5Gbit/sに制限されているため余剰帯域で使用する帯域は0.5Gbit/sだけとなります。
- 注※2
-
回線内の余剰帯域の余剰帯域(以降,余余剰帯域)=回線帯域−各通常ユーザの最低帯域の合計−各通常ユーザの余剰帯域の合計=9−(1+1+1)−(3+1.5+0.5)=1(Gbit/s)
通常ユーザ1への余余剰帯域の分配=1×(2÷(2+1))≒0.67(Gbit/s)
通常ユーザ2への余余剰帯域の分配=1×(1÷(2+1))≒0.33(Gbit/s)
- 注※3
-
各通常ユーザの送信帯域(最大帯域以下)=各通常ユーザの最低帯域+各通常ユーザに分配された余剰帯域+各通常ユーザに分配された余余剰帯域
通常ユーザ1の送信帯域=1+3+0.67=4.67(Gbit/s)
通常ユーザ2の送信帯域=1+1.5+0.33=2.83(Gbit/s)
通常ユーザ3の送信帯域=1+0.5=1.5(Gbit/s)
(2) LLPQ1およびLLPQ4
LLPQ1およびLLPQ4の2モードは,LLPQ方式で帯域を制御します。LLPQ方式は,RGQと同様に,通常ユーザごとの最低帯域を保証しつつ,余剰帯域がある場合は重みに従って各通常ユーザの最大帯域まで使用できるようにする方式です。RGQとの違いは次のとおりです。
-
各通常ユーザのユーザ送信キューの一部を低遅延キュー(以降LLPQ)として,ほかの通常ユーザのユーザ送信キューより優先的に出力できる
-
LLPQに対して最大帯域を設定できる
LLPQを使用することで,ある通常ユーザの優先したいデータが,別の通常ユーザの通常データによって遅延することを防げます。
なお,LLPQ1およびLLPQ4のシェーパモード名の数値は,LLPQの数を示しています。LLPQ1はユーザ当たりのキュー数が4キューの場合だけ使用できます。LLPQ1の概念を次の図に示します。この図に示すとおり,Q#4がLLPQとなります。
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LLPQ4はユーザ当たりのキュー数が8キューの場合だけ使用できます。LLPQ4の概念を次の図に示します。この図に示すとおり,Q#5〜8がLLPQとなります。
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LLPQ方式では,各通常ユーザのLLPQへ割り当てる帯域を分配したあと,LLPQ以外へ割り当てる帯域を決定します。各通常ユーザのLLPQへ割り当てる帯域は,LLPQ最大帯域を上限としたLLPQに対する全入力帯域になります。ただし,LLPQへ割り当てる帯域がポート帯域を超える場合は,合計帯域がポート帯域以内になるように,各通常ユーザのLLPQへ割り当てる帯域を均等に減らします。
LLPQ以外のユーザ送信キューへは,次に示す2段階で帯域を割り当てます。
-
「各通常ユーザの最低帯域−LLPQへ割り当てる帯域」を割り当てます。
LLPQへ割り当てる帯域が最低帯域より大きい場合は,この段階で帯域を割り当てません。
-
1段階目の帯域割り当て後に余った回線帯域を,各通常ユーザ間で均等に割り当てます。
(3) LLRLQユーザ帯域がシェーパモード帯域へ与える影響
LLRLQユーザと組み合わせた場合の帯域計算例を次の表に示します。ここでは,通常ユーザのシェーパモードをRGQとします。
シェーパユーザ |
入力帯域 (Gbit/s) |
最低帯域 (Gbit/s) |
最大帯域 (Gbit/s) |
未使用帯域※1 (Gbit/s) |
余剰帯域※2 (Gbit/s) |
送信帯域 (Gbit/s) |
---|---|---|---|---|---|---|
LLRLQユーザ |
1 |
− |
2 |
− |
− |
1※3 |
(RGQ)通常ユーザ1 |
6.5 |
1 |
5 |
2 |
1 |
2 |
(RGQ)通常ユーザ2 |
4 |
1 |
5 |
1 |
2 |
(凡例)−:対象外
- 注※1
-
通常ユーザに割り当てられる未使用帯域=回線帯域−(LLRLQユーザの送信帯域)=5−1=4(Gbit/s)
- 注※2
-
通常ユーザの余剰帯域=通常ユーザに割り当てられる未使用帯域−各通常ユーザの最低帯域の合計値=4−(1+1)=2(Gbit/s)
通常ユーザ1および2の余剰帯域=2×(1÷(1+1))=1(Gbit/s)
- 注※3
-
LLRLQユーザの送信帯域は次のどちらかの値です。
・入力帯域≦最大帯域の場合,入力帯域
・入力帯域>最大帯域の場合,最大帯域
(4) デフォルトユーザ帯域がシェーパモード帯域へ与える影響
デフォルトユーザは,LLRLQユーザおよび通常ユーザの余剰帯域がある場合にフレームを出力する最低優先度のシェーパユーザで,最大帯域までフレームを送信します。
RGQでは,完全最低優先で,LLRLQユーザおよび通常ユーザの余剰帯域がある場合だけフレームを出力します。LLPQ4およびLLPQ1では,LLRLQユーザおよび通常ユーザのLLPQで余剰帯域がある場合に,通常ユーザのLLPQ以外とデフォルトユーザが999対1の比率でフレームを出力します。通常ユーザのシェーパモードがRGQとLLPQ4の二つの場合を例に説明します。
(a) 通常ユーザのシェーパモードがRGQの場合
LLRLQユーザおよびデフォルトユーザと組み合わせた場合の帯域計算例を次の表に示します。ここでは,通常ユーザのシェーパモードをRGQとします。
シェーパユーザ |
入力帯域 (Gbit/s) |
最低帯域 (Gbit/s) |
最大帯域 (Gbit/s) |
未使用帯域 (Gbit/s) |
余剰帯域※1 (Gbit/s) |
送信帯域 (Gbit/s) |
---|---|---|---|---|---|---|
LLRLQユーザ |
1 |
− |
2 |
− |
− |
1 |
(RGQ)通常ユーザ1 |
2 |
1 |
5 |
5※2 |
1 |
2 |
(RGQ)通常ユーザ2 |
2 |
1 |
5 |
1 |
2 |
|
デフォルトユーザ |
3 |
− |
5 |
1※3 |
− |
1※3 |
(凡例)−:対象外
- 注※1
-
通常ユーザの余剰帯域=通常ユーザに割り当てられる未使用帯域−各通常ユーザの最低帯域の合計値=5−(1+1)=3(Gbit/s)
通常ユーザ1および2の余剰帯域=3×(1÷(1+1))=1.5(Gbit/s)
通常ユーザへは最低帯域+余剰帯域を割り当てられますが,入力帯域を超えているため,送信帯域=入力帯域となります。
- 注※2
-
通常ユーザに割り当てられる未使用帯域=回線帯域−(LLRLQユーザの送信帯域)=6−1=5(Gbit/s)
- 注※3
-
デフォルトユーザに割り当てられる未使用帯域=回線帯域−(LLRLQユーザの送信帯域)−(通常ユーザの送信帯域合計)=6−1−(2+2)=1(Gbit/s)
この結果,デフォルトユーザは1(Gbit/s)の余剰帯域が使用できますが,最大帯域が0.5(Gbit/s)のため,送信帯域は0.5(Gbit/s)に制限されます。
(b) 通常ユーザのシェーパモードがLLPQ4の場合
LLRLQユーザおよびデフォルトユーザと組み合わせた場合の帯域計算例を次の表に示します。ここでは,通常ユーザのシェーパモードをLLPQ4とします。
シェーパユーザ |
入力帯域 (Gbit/s) |
LLPQ 最大帯域 (Gbit/s) |
最低帯域 (Gbit/s) |
最大帯域 (Gbit/s) |
未使用帯域 (Gbit/s) |
余剰帯域 (Gbit/s) |
送信帯域 (Gbit/s) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
LLRLQユーザ |
1 |
− |
− |
2 |
− |
− |
1 |
(LLPQ4)通常ユーザ1 |
0.5 (LLPQ) 1.5 (LLPQ以外) |
0.5 |
1 |
5 |
4.5※1 |
1.5※2 (LLPQ以外) |
0.5 (LLPQ) 1.5 (LLPQ以外) |
(LLPQ4)通常ユーザ2 |
3 (LLPQ以外) |
0.5 |
1 |
5 |
2.24775※2 |
2.24775 (LLPQ以外) |
|
デフォルトユーザ |
6 |
− |
− |
5 |
2※2 |
0.75225※3 |
(凡例)−:対象外
- 注※1
-
通常ユーザとデフォルトユーザに割り当てられる未使用帯域(A)=回線帯域−(LLRLQユーザの送信帯域)=6−1=5(Gbit/s)
通常ユーザのLLPQ以外とデフォルトユーザに割り当てられる未使用帯域=上記計算式の(A)−(LLPQユーザの送信帯域)=5−0.5=4.5(Gbit/s)
- 注※2
-
通常ユーザのLLPQ以外の余剰帯域=通常ユーザとデフォルトユーザに割り当てられる未使用帯域×999÷1000−各通常ユーザの最低帯域の合計値=4.5×999÷1000−(1+1)=4.4955(Gbit/s)
通常ユーザ1および2の余剰帯域=4.4955×(1÷(1+1))=2.24775(Gbit/s)
通常ユーザ1へはLLPQ帯域+余剰帯域を割り当てられますが,入力帯域を超えているため,送信帯域=入力帯域となります。
- 注※3
-
デフォルトユーザに割り当てられる余剰帯域=回線帯域−(LLRLQユーザの送信帯域)−(通常ユーザの送信帯域合計)=6−1−(2+2.24775)=0.75225(Gbit/s)