コンフィグレーションガイド Vol.3


26.4.3 IPv6 PIM-SSM

PIM-SSMはグループアドレスのアドレス範囲を分離することで,PIM-SMと同時に使用できます。PIM-SSMが使用するグループアドレスはIANAで割り当てられています。本装置では,コンフィグレーションでPIM-SSMが動作するグループアドレスのアドレス範囲を指定できます。指定したアドレス範囲以外ではPIM-SMが動作します。

PIM-SMはマルチキャスト中継エントリの作成にマルチキャストパケットが必要なのに対して,PIM-SSMはマルチキャスト経路情報(PIM Joinメッセージ)の交換でマルチキャスト中継エントリを作成して,該当するエントリでマルチキャストパケットを中継します。また,PIM-SSMではランデブーポイントおよびブートストラップルータは必要ありません。したがって,マルチキャストパケットを中継するときにマルチキャストパケットのIPカプセル化およびIPデカプセル化がなくなり,効率の良いマルチキャスト中継が実現できます。

PIM-SSMはMLDv2(INCLUDEモード)の受信者と接続している場合に動作します。また,本装置にはMLDv1またはMLDv2(EXCLUDEモード)の受信者がPIM-SSMを利用できるようにするMLD PIM-SSM連携機能があります。

〈この項の構成〉

(1) IPv6 PIM-SSMメッセージサポート仕様

PIM-SSMメッセージのサポート仕様を次の表に示します。

表26‒14 PIM-SSMメッセージのサポート仕様

メッセージタイプ

機能

PIM Hello

隣接するマルチキャストルータを検出する。

PIM Join/Prune

マルチキャスト配送ツリーの参加および刈り込みをする。

PIM Assert

Forwarderを決定する。

(2) IPv6 PIM-SSMを動作させる前提条件

本装置のコンフィグレーションで次に示す設定が必要です。

(3) IPv6 PIM-SSM動作(受信者がMLDv2(INCLUDEモード)の場合)

PIM-SSMを使用するためには送信者の情報が必要です。MLDv2では,送信者をMLD Reportメッセージで指定するとPIM-SSMを使用できます。マルチキャスト送信者(送信元アドレス:S1)がマルチキャストグループ(グループアドレス:G1)にマルチキャストパケットを送信する場合の動作を次に示します。

  1. 受信者からマルチキャストグループに参加するためのMLDv2 Report(G1,S1)メッセージを受信します。

  2. MLDv2 Report(G1,S1)メッセージを受信した装置は,MLDv2 Report(G1,S1)メッセージで通知された送信元アドレス(S1)の方向(ユニキャストのルーティング情報で決定)にPIM Joinメッセージを送信します。この場合,PIM Joinメッセージには,送信元アドレス(S1)とグループアドレス(G1)の情報が入ります。

  3. PIM Joinメッセージを受信した各装置は,送信元アドレス(S1)への最短パス方向にホップバイホップでPIM Joinメッセージを送信します。PIM Joinメッセージを受信した装置は送信元アドレス(S1)とグループアドレス(G1)のマルチキャスト経路情報を学習します。

  4. マルチキャスト送信者(送信元アドレス:S1)がマルチキャストグループ(グループアドレス:G1)宛てにマルチキャストパケットを送信します。マルチキャストパケットを受信した装置は学習したマルチキャスト経路情報から生成したマルチキャスト中継エントリに従ってマルチキャストパケットを中継します。

PIM-SSMの動作概要を次の図に示します。

図26‒17 PIM-SSM動作概要(受信者がMLDv2(INCLUDEモード)の場合)

[図データ]

(4) IPv6 PIM-SSM動作(受信者がMLDv1またはMLDv2(EXCLUDEモード)の場合)

PIM-SSMを使用するためには送信者の情報が必要です。MLDv1またはMLDv2(EXCLUDEモード)を使用する場合,本装置でMLD PIM-SSM連携機能を設定するとPIM-SSMを使用できます。受信者がMLDv1の場合に,マルチキャスト送信者(送信元アドレス:S1)がマルチキャストグループ(グループアドレス:G1)にマルチキャストパケットを送信するときの動作を次に示します。

  1. 受信者からマルチキャストグループに参加するためのMLDv1 Reportメッセージを受信します。

  2. MLDv1 Reportメッセージを受信した装置は,MLDv1 Reportメッセージで通知されたグループアドレス(G1)とMLD PIM-SSM連携機能で設定したグループアドレスを比較します。グループアドレスが一致した場合,MLD PIM-SSM連携機能で設定した送信元アドレス(S1)への最短パス方向(ユニキャストのルーティング情報で決定)にPIM Joinメッセージを送信します。この場合,PIM Joinメッセージには,送信元アドレス(S1)とグループアドレス(G1)の情報が入ります。

  3. PIM Joinメッセージを受信した各装置は送信元アドレス(S1)への最短パス方向にホップバイホップでPIM Joinメッセージを送信します。PIM Joinメッセージを受信した装置は送信元アドレス(S1)とグループアドレス(G1)のマルチキャスト経路情報を学習します。

  4. マルチキャスト送信者(送信元アドレス:S1)がマルチキャストグループ(グループアドレス:G1)宛てにマルチキャストパケットを送信します。マルチキャストパケットを受信した装置は学習したマルチキャスト経路情報から生成したマルチキャスト中継エントリに従ってマルチキャストパケットを中継します。

PIM-SSMの動作概要を次の図に示します。

図26‒18 PIM-SSMの動作概要(受信者がMLDv1またはMLDv2(EXCLUDEモード)の場合)

[図データ]

(5) 近隣検出

PIM-SM(「26.4.2 IPv6 PIM-SM (3) 近隣検出」)と同じです。

(6) Forwarderの決定

PIM-SM(「26.4.2 IPv6 PIM-SM (4) Forwarderの決定」)と同じです。

(7) DRの決定および動作

PIM-SM(「26.4.2 IPv6 PIM-SM (5) DRの決定および動作」)と同じです。

(8) 冗長経路時の注意事項

PIM-SM(「26.4.2 IPv6 PIM-SM (6) 冗長経路時の注意事項」)と同じです。