コンフィグレーションガイド Vol.3


24.5.1 IPv4マルチキャスト中継

本装置でマルチキャストパケットを中継する場合,次の点に注意してください。

〈この項の構成〉

(1) IPv4 PIM-SM/PIM-SSM共通

(a) ルーティングプログラムの再起動に伴う中継断

本装置では,運用コマンドrestart ipv4-multicastを実行してマルチキャストルーティングプログラムを再起動する場合,マルチキャスト経路情報を再学習するまでマルチキャスト通信が停止するので注意してください。

(b) 動作インタフェース

IPアドレスのマスク長が8ビットから30ビットのインタフェース上で動作します。

(c) 二重化装置での系切替に伴う中継断

本装置では,二重化装置による運用で系切替する場合,マルチキャスト経路情報を再学習するまでマルチキャスト通信が停止するので注意してください。系切替時に無停止でマルチキャスト通信を継続する場合は,コンフィグレーションコマンドip pim nonstop-forwardingを設定してください。

(d) マルチホーム

マルチホームを使用したインタフェースではマルチキャストは動作しません。

(2) IPv4 PIM-SM

IPv4でPIM-SMを使用する場合は次の点に注意してください。

(a) ソフトウェア処理時のパケットロス

本装置では,最初のマルチキャストパケット受信でマルチキャスト通信を行うためのマルチキャスト中継エントリをハードウェアに設定します。マルチキャスト中継エントリを作成するまでの間はソフトウェアでマルチキャストパケットを処理するため,マルチキャスト通信のトラフィック量によっては一時的にマルチキャストパケットをロスする場合があります。

(b) ソフトウェア処理時のマルチキャストパケットの追い越し

本装置では,ハードウェアへのマルチキャスト中継エントリの設定が完了すると,ハードウェア中継を開始します。そのあと,マルチキャスト中継エントリの生成のためにソフトウェアで処理したマルチキャストパケットを中継します。このときに一部のマルチキャストパケットで追い越しが発生して,マルチキャストパケットの順序が入れ替わる場合があります。

(c) パス切り替え時の二重中継またはパケットロス

本装置では,ランデブーポイント経由でのマルチキャストパケット中継時およびランデブーポイント経由から最短パス経由への切り替え時,一時的に二重中継またはパケットロスが発生する場合があります。

ランデブーポイント経由のマルチキャストパケットの中継動作およびランデブーポイント経由から最短パス経由への切り替え動作は「24.4.2 IPv4 PIM-SM」を参照してください。

(d) ループバックインタフェースに設定したアドレスへの到達可能性

本装置をランデブーポイントおよびブートストラップルータとして使用する場合,ループバックインタフェースに設定したIPv4アドレスがランデブーポイントとブートストラップルータのアドレスになります。このアドレスはマルチキャスト通信する全装置でユニキャストでのルート認識および通信ができる必要があります。

(e) PIM Registerメッセージのチェックサム

本装置以外の装置と混在するシステム構成では,PIM Registerメッセージ(IPカプセル化パケット)のチェックサムの計算範囲の相違によってマルチキャスト通信ができない場合があります。ランデブーポイントでPIM Registerメッセージがチェックサムエラーによってマルチキャスト中継しない場合は,本装置のコンフィグレーションコマンドip pim register-checksumでPIMチェックサムを計算する範囲を変更してください。

(f) 静的ランデブーポイント機能

静的ランデブーポイント機能は,ブートストラップルータを使用しないでランデブーポイントを指定する機能です。静的ランデブーポイント機能はコンフィグレーションで設定します。

静的ランデブーポイントはブートストラップルータからPIM Bootstrapメッセージによって広告されたランデブーポイント候補との共存もできます。共存時,静的ランデブーポイントはブートストラップルータからPIM Bootstrapメッセージによって広告されたランデブーポイント候補よりも優先されます。

なお,ランデブーポイント候補のルータは,ランデブーポイントルータアドレスが自アドレスであることを認識することでランデブーポイントとして動作します。したがって,ブートストラップルータを使用しないで静的ランデブーポイント機能を使用してネットワークを設計する場合は,ランデブーポイント候補のルータでも静的ランデブーポイント機能の設定が必要です。

また,静的ランデブーポイント機能を使用する場合,同一ネットワーク上の全ルータに対して同じ設定をする必要があります。