コンフィグレーションガイド Vol.3


23.1.3 RIPおよびRIPng

〈この項の構成〉

(1) 学習経路フィルタリング

RIPおよびRIPngでは,学習した経路をすべてフィルタできます。フィルタした結果,学習しないことになった経路はルーティングテーブルに導入されません。

(a) フィルタの適用方法と適用順

学習した経路をdistribute-list inで指定したフィルタでフィルタします。パラメータにインタフェースやルータを指定することによって,特定のインタフェースやルータから学習した経路にだけフィルタを適用できます。学習経路フィルタリングのコンフィグレーションコマンドを次の表に示します。

表23‒8 学習経路フィルタリングのコンフィグレーションコマンド

コマンド名

パラメータ

フィルタ対象経路

distribute-list in(RIP)

gateway <ipv4 address>

指定した隣接ルータから学習したRIP経路だけ,フィルタを適用します。

<interface type> <interface number>

指定したIPv4インタフェースから学習したRIP経路だけ,フィルタを適用します。

なし

学習したRIP経路すべてにフィルタを適用します。

distribute-list in(RIPng)

<interface type> <interface number>

指定したIPv6インタフェースから学習したRIPng経路だけ,フィルタを適用します。

なし

学習したRIPng経路すべてにフィルタを適用します。

経路の学習後,指定したフィルタをRIPおよびRIPngそれぞれの順番に適用します。適用するフィルタが一つもない場合,またはフィルタを適用した結果がすべてpermitである場合,学習経路を有効経路としてルーティングテーブルに導入します。適用した結果がdenyであるフィルタが一つでもある場合,その学習経路をルーティングテーブルに導入しません。

(b) 学習経路フィルタリングで変更できる経路属性

RIPおよびRIPngの学習経路フィルタリングで変更できる属性を次の表に示します。

表23‒9 学習経路フィルタリングで変更できる経路の属性

属性

デフォルト値

ディスタンス値

distanceに指定した値。

指定していない場合は120。

メトリック値

受信経路の属性値。

タグ値

受信経路の属性値。

変更したメトリック値は,RIPおよびRIPngの優先経路選択に使用します。変更したディスタンス値は,ルーティング種別間の優先経路選択に使用します。

注意
  • メトリック値の変更方法に,加算以外の方法を使用しないことをお勧めします。メトリック値を置き換えまたは減算で変更すると,ルーティングループが発生して,パケットを正しく転送できなくなることがあるためです。

  • メトリック値を16以上に変更するように設定できます。しかし,変更後のメトリック値が16以上のRIP経路およびRIPng経路は無効経路になります。

  • コンフィグレーションコマンドmetric-offsetによるメトリック値の変更は,学習経路フィルタリングしたあとで適用します。経路フィルタで変更したメトリック値を,さらにmetric-offsetで変更します。metric-offsetによって変更した結果,メトリック値が16以上になった経路は無効になります。

  • タグ値を最大4294967295に変更できます。しかし,変更した経路をRIPバージョン2で広告するときには,2進数表現の下位16ビットだけを使用して,上位のビットを切り捨てます。RIPの場合,タグ値は,経路を学習したRIPのバージョンに関係なく変更できます。しかし,変更した経路を広告するときに,タグ値を付けて広告するのはRIPバージョン2だけです。

(2) 広告経路フィルタリング

RIPおよびRIPngでは,ルーティングテーブルの優先経路だけを広告でき,スプリットホライズンは広告しません。また,RIPでは,RIPバージョン1の経路広告条件を満たさない経路は広告しません。

広告経路フィルタリングの設定をしていない場合,RIP経路とRIPインタフェースの直結経路,およびRIPng経路とRIPngインタフェースの直結経路が広告対象になります。

注意

RIPでOSPF経路やBGP4経路を広告するとき,またはRIPngでOSPFv3経路やBGP4+経路を広告するときには,広告経路フィルタリングや広告メトリック値を設定することでmetric値を変更してください。上記経路のデフォルト広告メトリック値が16なので,そのままでは広告されません。

(a) 広告経路フィルタリングで変更できる経路属性

RIPの広告経路フィルタリングで変更できる属性を次の表に示します。

表23‒10 RIP広告経路フィルタリングで変更できる経路の属性

属性

経路学習元プロトコル

デフォルト値

メトリック値

直結経路

集約経路

1

スタティック経路

default-metricで指定した値を使用します。

default-metric未設定時は1を使用します。

RIP経路

経路情報のメトリック値を引き継ぎます。

OSPF経路

BGP4経路

他VRFまたはグローバルネットワークからインポートした経路

inherit-metric設定時は経路情報のメトリック値を引き継ぎます。経路情報にメトリック値がない場合は16を使用します。

inherit-metric未設定時はdefault-metricで指定した値を使用します。

inherit-metricもdefault-metricも設定していないときは16を使用します。

タグ値

全プロトコル共通

経路情報のタグ値を引き継ぎます。

RIPngの広告経路フィルタリングで変更できる属性を次の表に示します。

表23‒11 RIPng広告フィルタリングで変更できる経路の属性

属性

経路学習元プロトコル

デフォルト値

メトリック値

直結経路

集約経路

1

スタティック経路

default-metricで指定した値を使用します。

default-metric未設定時は1を使用します。

RIPng経路

経路情報のメトリック値を引き継ぎます。

OSPFv3経路

BGP4+経路

他VRFまたはグローバルネットワークからインポートした経路

inherit-metric設定時は経路情報のメトリック値を引き継ぎます。経路情報にメトリック値がない場合は16を使用します。

inherit-metric未設定時はdefault-metricで指定した値を使用します。

inherit-metricもdefault-metricも設定していない場合は16を使用します。

タグ値

全プロトコル共通

経路情報のタグ値を引き継ぎます。

注意
  • RIP経路をRIPで広告する場合,またはRIPng経路をRIPngで広告する場合,加算以外のメトリック値変更方法を使用しないことをお勧めします。メトリック値を置き換えまたは減算すると,ルーティングループが発生して,パケットを正しく転送できなくなることがあるためです。

  • メトリック値を16以上に変更するように経路フィルタを設定できます。しかし,メトリック値が16以上の経路は広告されません。

  • コンフィグレーションコマンドmetric-offsetによるメトリック値の変更は,広告経路フィルタリングしたあとで適用します。経路フィルタで変更したメトリック値を,さらにmetric-offsetで変更します。metric-offsetによって変更した結果,メトリック値が16以上になった経路は広告されません。

  • タグ値を65535より大きな値に変更した場合,2進数表現の下位16ビットだけを使用して,上位のビットを切り捨てます。ただし,RIPでタグ値を広告するには,RIPのバージョンが2である必要があります。

(b) フィルタの適用方法と適用順

広告経路フィルタリングでのフィルタの適用方法と適用順を次に示します。

  1. RIPまたはRIPngで広告したい経路を選択します。

    広告したい経路の学習元プロトコルおよび経路種別をコンフィグレーションコマンドredistributeで設定します。このコマンドで指定されたプロトコルの経路だけが広告対象になります。また,route-mapを指定すると,route-mapでフィルタした結果がpermitである経路だけを広告対象にできます。redistributeでは,ルーティングテーブル上の経路属性値と条件を比較します。

    RIP経路およびRIPインタフェースの直結経路,またはRIPng経路およびRIPngインタフェースの直結経路は,redistributeで指定しなくても広告されます。

    redistributeに経路属性を変更するroute-mapや経路属性を直接指定すれば,広告する経路の属性も変更できます。

  2. メトリック値をプロトコルのデフォルト値に設定します。

    ただし,redistributeでメトリック値を変更した場合は,その値を使用します。

  3. redistributeで選択した経路に,distribute-list outの設定に従ってフィルタを適用します。

    distribute-list outでは次の設定ができます。

    • インタフェースおよびルータ(RIPだけ)を指定して,その指定先へ広告する場合にだけフィルタを適用。

    • プロトコルを指定して,そのプロトコルで学習した経路にだけフィルタを適用。

    広告経路フィルタリングのコンフィグレーションコマンドを次の表に示します。

    表23‒12 広告経路フィルタリングのコンフィグレーションコマンド

    コマンド名

    パラメータ

    フィルタ対象経路

    distribute-list out(RIP)

    gateway <ipv4 address> <protocol>

    指定した隣接ルータへ広告する経路,かつ指定したプロトコルの経路にフィルタを適用します。

    gateway <ipv4 address>

    指定した隣接ルータへ広告する経路にフィルタを適用します。

    <interface type> <interface number>

    指定したIPv4インタフェースから広告する経路にフィルタを適用します。

    <protocol>

    広告先に関係なく,指定したプロトコルの経路にフィルタを適用します。

    なし

    広告先に関係なく,すべての経路にフィルタを適用します。

    distribute-list out(RIPng)

    <interface type> <interface number>

    指定したIPv6インタフェースから広告する経路にフィルタを適用します。

    <protocol>

    広告先に関係なく,指定したプロトコルの経路にフィルタを適用します。

    なし

    広告先に関係なく,すべての経路にフィルタを適用します。

    経路をRIPインタフェースや特定の隣接ルータへ広告するに当たり,広告先や経路学習元プロトコルに応じてフィルタを選択し,それを表のRIPおよびRIPngそれぞれの順番に適用します。適用するフィルタが一つもない場合,またはフィルタした結果がすべてpermitである場合,指定の広告先へ経路を広告します。適用した結果がdenyであるフィルタが一つでもある場合,その広告先へはその経路を広告しません。

    distribute-list outにroute-mapを指定した場合,広告デフォルト属性値やredistributeで変更したあとの属性値に従って経路をフィルタします。

    distribute-list outに属性を変更するroute-mapを指定すれば,広告する経路の属性も変更できます。