コンフィグレーションガイド Vol.3


15.1.5 RIP-1

〈この項の構成〉

(1) RIP-1での経路情報の広告

RIP-1を使用する場合は,RIPメッセージを送信するポートのサブネットマスク値によって,広告する経路情報のエントリに制限が付きます。同一ネットワークアドレス内ですべて同一のサブネットマスクを使用する場合は問題ありません。しかし,サブネットマスクを2種類以上使用する場合(可変長サブネットマスク:VLSM(Variable Length Subnet Mask))は問題になります。VLSMとなるネットワークではルーティングプロトコルにRIP-2(RFC2453準拠)を使用する必要があります。この場合,一部でRIP-1も併用する場合には次の表に示すRIP-1の経路情報の広告条件に注意してください。

表15‒9 RIP-1の経路情報の広告条件

広告する経路情報

広告条件

デフォルト経路情報

無条件に広告します。ただし,RIP以外で学習したデフォルト経路情報は広告経路フィルタの設定が必要です。

ナチュラルマスク経路情報

本装置が保持しているナチュラルマスク経路情報とインタフェースのネットワークアドレス(アドレスクラスに対応したネットワークアドレス)が異なるとき。

サブネット経路情報

本装置が保持しているサブネット経路情報のネットワークアドレス(アドレスクラスに対応したネットワークアドレス)とインタフェースのネットワークアドレスが一致して,該当するサブネット経路情報のサブネット長とインタフェースアドレスのサブネット長が一致したとき。

ホスト経路情報

無条件に広告します。

注※ コンフィグレーションコマンドauto-summaryが設定されている場合,サブネット経路情報は自動的に一つのナチュラルマスク経路情報に集約され広告されます。

(a) ナチュラルマスク経路およびサブネットマスク経路情報の広告

RIPで広告するナチュラルマスク経路およびサブネットマスク経路情報を次の図に示します。

図15‒11 RIPで広告するナチュラルマスク経路およびサブネットマスク経路情報

[図データ]

本装置のルーティングテーブル上の各経路情報の取り扱いは次のとおりです。

No.1

インタフェースAのネットワークアドレスと一致するナチュラルマスク経路情報のため広告されません。

No.2

インタフェースAのネットワークアドレスと一致してサブネット長も一致するサブネット経路情報のため広告されます。

No.3

インタフェースAのネットワークアドレスと一致するがサブネット長が異なるサブネット経路情報のため広告されません。

No.4

インタフェースAのネットワークアドレスと一致しないナチュラルマスク経路情報のため広告されます。

No.5

インタフェースAのネットワークアドレスと一致しないサブネット経路情報のため広告されません。

また,この図での広告条件を次の表に示します。

表15‒10 ナチュラルマスク経路およびサブネットマスク経路の広告条件

経路情報の種類

ルーティングテーブル上の経路情報

広告条件

広告の有無

インタフェースDのネットワークアドレスとの一致/不一致

インタフェースDのサブネット長との一致/不一致

ナチュラルマスク経路

172.16.0.0/16(No.1)

一致

×

172.17.0.0/16(No.4)

不一致

サブネット経路

172.17.1.0/24(No.5)

不一致

一致

×

172.16.2.0/24(No.2)

一致

一致

172.16.3.0/28(No.3)

一致

不一致

×

(凡例) ○:広告する ×:広告しない −:該当しない

(b) サブネット経路情報の広告に関する注意事項

本装置では,コンフィグレーションコマンドauto-summaryが設定されていない場合,該当する装置の各インタフェースが持つIPアドレスに対するナチュラルマスク経路情報を自動生成しないで,サブネット経路情報だけを生成します。アドレス境界を越える場合,RIP-1ではサブネット経路情報を広告しないため注意が必要です。構成例を次の図に示します。

図15‒12 直結経路を広告しない構成例

[図データ]

注意すべき構成
  • ルーティングプロトコルはRIP-1。

  • コンフィグレーションコマンドauto-summaryが設定されていない。

  • 本装置上にアドレス境界を生成する。

  • インタフェースのサブネットマスクが,ナチュラルマスクではない。

対策1
  • コンフィグレーションコマンドauto-summaryを設定する。

対策2
  • コンフィグレーションで,経路集約(サブネット経路情報およびホスト経路情報をナチュラルマスク経路情報に集約する)を設定する。

  • コンフィグレーションで,広告経路フィルタ(集約経路をRIPに再配布する)を設定する。

対策3
  • コンフィグレーションで,サブネットワーク化されたインタフェースに対応するナチュラルマスクの直結経路を生成するように設定する(コンフィグレーションコマンドip auto-class-route)。

  • 上記経路は直結経路として取り扱っているので,デフォルト(再配布フィルタの設定なし)で広告される。

(2) RFCとの差分

本装置のRIP-1はRFC1058に準拠していますが,ソフトウェアの機能制限から一部RFCとの差分があります。RFCとの差分を次の表に示します。

表15‒11 RFCとの差分

RFC

本装置

RFC1058

サブネットの広告

サブネット化されたネットワークと接続している境界ゲートウェイは,ほかの隣接ゲートウェイに対して全体のネットワーク経路だけを広告します。

サブネットワーク経路からネットワーク経路を生成したい場合は,RIP広告経路自動集約機能を使用する必要があります。

一般に全体のネットワークのメトリックは,サブネットの中でいちばん小さいメトリックが採用されます。

サブネットワーク経路からネットワーク経路を生成したい場合は,RIP広告経路自動集約機能を使用する必要があります。

境界ゲートウェイは直接接続されたネットワークにあるホスト経路をほかのネットワークに対して広告してはなりません。

本装置では直接接続されたネットワークにあるホスト経路を,ルーティングテーブルに追加および広告します。

レスポンス受信

すでに存在するネットワーク経路またはサブネットワーク経路に含まれるホスト経路は追加しないことが望ましいです。

本装置ではレスポンスによってホスト経路を受信した場合,ルーティングテーブルに追加します。