コンフィグレーションガイド Vol.2


22.1.5 ポーリング監視

ポーリング監視は,ネットワーク上の装置をトラック対象とし,定期的にポーリングパケットを送信して,通信できればトラック状態をUpとするトラック種別です。

ポーリング監視では,トラック対象の装置へ定期的にポーリングパケットを送信し,その応答パケットを受信するかどうかを監視します。応答パケットを受信したらポーリング成功と見なし,連続して成功するとトラック状態がUpになります。応答パケットを受信しないとポーリング失敗と見なし,連続して失敗するとトラック状態がDownになります。

本装置のトラッキング機能では,ポーリング監視の方法としてICMP監視をサポートしています。

〈この項の構成〉

(1) ICMP監視

ICMP監視では,トラック対象としてネットワーク上の装置をIPアドレスで指定します。本装置は,ポーリングパケットとして,ICMP Echoパケットをトラック対象のIPアドレスへ定期的に送信します。ポーリングの応答パケットとしてICMP Echo Replyパケットを受信するかどうかを監視します。

(2) ポーリングの成否と検証シーケンス

ネットワークでは,通信できる状況でも,一時的にパケットが廃棄されることがあります。また,実質的に通信できないネットワークでも,一時的に通信できてしまうことがあります。このようなネットワークにポーリング監視を適用し,ポーリングの成否を直接トラック状態に反映すると,トラック状態が不安定になることがあります。このような状況に対応するため,本装置のポーリング監視では,トラック状態を変更するのに必要なポーリング回数やポーリング間隔を指定できます。

また,ポーリング監視には,トラック状態のほかに,トラックの動作状況を示すトラック動作状態という状態があります。以降,各トラック動作状態とポーリング動作について説明します。

(a) 動作中

ポーリングの応答が安定している間,トラック動作状態は動作中になります。動作中の場合,ポーリングパケットの送信間隔にはコンフィグレーションコマンドintervalの設定値が適用されます。

(b) 検証中(障害回復検証)

トラック状態がDownのときにポーリング応答を受信すると,トラック動作状態を検証中に更新します。

トラック状態をDownからUpに変更するかどうかの検証を,障害回復検証と呼びます。障害回復検証中は,コンフィグレーションコマンドrecovery detectionで設定するパラメータに従って,ポーリング動作をします。設定するパラメータと障害回復検証中のポーリング動作について次の表に示します。

表22‒4 障害回復検証中のポーリング動作

パラメータ

項目

説明

interval <seconds>

ポーリング間隔

障害回復検証中のポーリングパケット送信間隔

<success count>

ポーリング成功回数

トラック状態をUpに変更するために必要なポーリング成功回数

(障害回復検証を始めるきっかけとなったポーリングの成功も回数に含みます)

trial <count>

ポーリング試行回数

障害回復検証中のポーリング最大試行回数

障害回復検証は,次のどちらかの条件を満たすまで実施します。

  • ポーリングの成功回数が<success count>の設定値に達し,トラック状態をUpに変更する

  • ポーリングの失敗回数がtrial <count>−<success count>+1に達し,トラック状態がDownに確定する

障害回復検証が終了すると,トラック動作状態は前述した動作中に戻ります。

障害回復検証によって,トラック状態がDownからUpに遷移する場合のシーケンスを次の図に示します。この例では,トラック動作状態が動作中の場合のポーリング間隔を4秒,障害回復検証中のポーリング間隔を2秒,ポーリング成功回数を3回としています。

図22‒1 障害回復検証シーケンス例

[図データ]

  1. トラック状態がDown,トラック動作状態が動作中のときに,トラック対象装置からポーリングの応答パケットを受信します。これを契機に,トラック動作状態は検証中に遷移し,ポーリング間隔が2秒に変更されます。

  2. ポーリング成功回数を3回に設定しているため,3回目の応答パケットの受信を契機として,トラック状態をUpに更新します。あわせて,トラック動作状態は検証中から動作中に遷移し,ポーリング間隔も4秒に戻ります。

(c) 検証中(障害発生検証)

トラック状態がUpのときにポーリングに失敗すると,トラック動作状態を検証中に更新します。

トラック状態をUpからDownに変更するかどうかの検証を,障害発生検証と呼びます。障害発生検証中は,コンフィグレーションコマンドfailure detectionで設定するパラメータに従って,ポーリング動作をします。設定するパラメータと障害発生検証中のポーリング動作について次の表に示します。

表22‒5 障害発生検証中のポーリング動作

パラメータ

項目

説明

interval <seconds>

ポーリング間隔

障害発生検証中のポーリングパケット送信間隔

<failure count>

ポーリング失敗回数

トラック状態をDownに変更するために必要なポーリング失敗回数

(障害発生検証を始めるきっかけとなったポーリングの失敗も回数に含みます)

trial <count>

ポーリング試行回数

障害発生検証中のポーリング最大試行回数

障害発生検証は,次のどちらかの条件を満たすまで実施します。

  • ポーリングの失敗回数が<failure count>の設定値に達し,トラック状態をDownに変更する

  • ポーリングの成功回数がtrial <count>−<failure count>+1に達し,トラック状態がUpに確定する

障害発生検証が終了すると,トラック動作状態は前述した動作中に戻ります。

障害発生検証によって,トラック状態がUpからDownに遷移する場合のシーケンスを次の図に示します。この例では,トラック動作状態が動作中の場合のポーリング間隔を4秒,障害発生検証中のポーリング間隔を2秒,ポーリング失敗回数を3回,ポーリングの応答待ち時間を1秒としています。

図22‒2 障害発生検証シーケンス例

[図データ]

  1. トラック状態がUp,トラック動作状態が動作中のときに,トラック対象装置からポーリングの応答パケットを応答待ち時間(1秒)内に受信できませんでした。これを契機に,トラック動作状態は検証中に遷移し,ポーリング間隔が2秒に変更されます。

  2. ポーリング失敗回数を3回に設定しているため,3回目のポーリング失敗を契機として,トラック状態をDownに更新します。あわせて,トラック動作状態は検証中から動作中に遷移し,ポーリング間隔も4秒に戻ります。

(3) ポーリングパケットのネクストホップ指定

トラッキング機能では,ICMP監視トラックにネクストホップを指定できます。ポーリングパケットの宛先はトラック対象装置のアドレスですが,ネクストホップを指定すると,宛先アドレスや本装置の経路に関係なくネクストホップで指定した隣接装置へ転送されます。こうすると,ネクストホップで指定した装置を経由するトラック対象装置への通信を確認できます。

この機能を利用すると,本装置に接続したルータを経由するトラック対象装置への通信可能性を監視できます。例えば,本装置が2台のルータと接続していて,どちらのルータも同じサーバと接続している場合,トラック対象がサーバでネクストホップが各ルータとなる二つのトラックを設定することで,ルータ個別にサーバとの通信を確認できます。

(4) ポーリング応答パケットの受信インタフェース指定

ICMP監視トラックでネクストホップを指定している場合でも,障害に対して冗長経路を用意してあると,次の図に示すように,本装置自体やほかのルータを経由する冗長経路によってポーリングに成功し,意図した監視ができないことがあります。

図22‒3 冗長経路による意図しないポーリング成功例(自装置を経由する例)

[図データ]

図22‒4 冗長経路による意図しないポーリング成功例(ほかのルータを経由する例)

[図データ]

意図しないポーリング成功を回避するために,本装置のトラッキング機能のポーリング監視では,コンフィグレーションコマンドicmp check-reply-interfaceで応答パケットの受信インタフェースを指定できます。受信インタフェースを指定した場合,指定したインタフェース以外で受信した応答パケットが廃棄されて,ポーリング失敗となります。

上図の例の場合,ポーリングパケットのネクストホップにルータAを指定した上で,応答パケットの受信インタフェースとしてルータAへの接続インタフェースを指定することで,冗長経路による通信をポーリング失敗とします。

(5) ポーリング監視の注意事項

すべてのICMP監視トラックのポーリングパケットの送信頻度の合計は,最大で1000ppsです。

1000ppsを超えるパケットは,次の1秒まで送信が持ち越されます。1000ppsを超える構成にした場合,結果として,1000ppsに納まるようにすべてのトラックのポーリング間隔が長くなります。検証時にポーリング間隔が変わることを考慮した上で,1000ppsに収まるようにしてください。