5.1.5 スパニングツリーのトポロジ設計
スパニングツリーは,ブリッジ識別子,パスコストによってトポロジを構築します。次の図に,トポロジ設計の基本的な手順を示します。図の構成は,コアスイッチとして2台を冗長化して,エッジスイッチとして端末を収容するスイッチを配置する例です。
- 〈この項の構成〉
(1) ブリッジ識別子によるルートブリッジの選出
ルートブリッジは,ブリッジ識別子の最も小さい装置を選出します。通常,ルートブリッジにしたい装置のブリッジ優先度を最も小さい値(最高優先度)に設定します。図の例では,本装置Aがルートブリッジになるように設定します。本装置B,本装置Cは指定ブリッジとなります。
また,ルートブリッジに障害が発生した場合に代替のルートブリッジとして動作するスイッチを本装置Bになるように設定します。本装置Cは最も低い優先度として設定します。
スパニングツリーのトポロジ設計では,図の例のようにネットワークのコアを担う装置をルートブリッジとし,代替のルートブリッジとしてコアを冗長化する構成をお勧めします。
(2) 通信経路の設計
ルートブリッジを選出したあと,各指定ブリッジからルートブリッジに到達するための通信経路を決定します。
(a) パスコストによるルートポートの選出
本装置B,本装置Cでは,ルートブリッジに到達するための経路を最も小さいルートパスコスト値になるよう決定します。図の例は,すべてのポートがパスコスト200000としています。それぞれ直接接続したポートが最もルートパスコストが小さく,ルートポートとして選出します。
ルートパスコストの計算は,指定ブリッジからルートブリッジへ向かう経路で,各装置がルートブリッジの方向で送信するポートのパスコストの総和で比較します。例えば,本装置Cの本装置Bを経由する経路はパスコストが400000となりルートポートには選択されません。
パスコストは,ポートの速度が速いほど小さい値をデフォルト値に持ちます。また,ルートポートの選択にはルートブリッジまでのコストの総和で比較します。そのため,速度の速いポートや経由する装置の段数が少ない経路を優先して使用したい場合,通常はパスコスト値を変更する必要はありません。速度の遅いポートを速いポートより優先して経路として使用したい場合はコンフィグレーションで変更することによって通信したい経路を設計します。
(b) 指定ポート,非指定ポートの選出
本装置B,本装置C間の接続はルートポート以外のポートでの接続になります。このようなポートではどれかのポートが非指定ポートとなってBlocking状態になります。スパニングツリーは,このように片側がBlocking状態となることでループを防止します。
指定ポート,非指定ポートは次のように選出します。
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装置間でルートパスコストが小さい装置が指定ポート,大きい装置が非指定ポートになります。
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ルートパスコストが同一の場合,ブリッジ識別子の小さい装置が指定ポート,大きい装置が非指定ポートになります。
図の例では,ルートパスコストは同一です。ブリッジ優先度によって本装置Bが指定ポート,本装置Cが非指定ポートとなり,本装置CがBlocking状態となります。Blocking状態になるポートを本装置Bにしたい場合は,パスコストを調整して本装置Bのルートパスコストが大きくなるように設定します。