3.1.5 マルチキャストアドレス
マルチキャストアドレスは複数のノードの集合体を示すアドレスです。アドレスフォーマットプレフィックスの上位8ビットがffであるアドレスが定義されています。ノードは複数のマルチキャストグループに所属できます。マルチキャストアドレスは,パケットの始点アドレスとして使用できません。マルチキャストアドレスには,アドレスフォーマットプレフィックスに続いて,フラグフィールド(4ビット),スコープフィールド(4ビット)およびグループ識別子フィールド(112ビット)が含まれます。IPv6マルチキャストアドレスを次の図に示します。
|
フラグフィールドの4ビットは,1ビットずつフラグとして次のように定義されています。
- 1ビット目
-
予約されていて,0に初期化されます。
- 2ビット目
-
Rフラグビットと定義されていて,次の値を取ります。
-
Rフラグビットが0
ランデブーポイントのアドレスが埋め込まれていないマルチキャストアドレス
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Rフラグビットが1
ランデブーポイントのアドレスが埋め込まれているマルチキャストアドレス
-
- 3ビット目
-
Pフラグビットと定義されていて,次の値を取ります。
-
Pフラグビットが0
ネットワークプレフィックスに基づかないで割り当てられたマルチキャストアドレス
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Pフラグビットが1
ネットワークプレフィックスに基づいて割り当てられたマルチキャストアドレス
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- 4ビット目
-
Tフラグビットと定義されていて,次の値を取ります。
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Tフラグビットが0
IANAによって永続的に割り当てられた既知のマルチキャストアドレス
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Tフラグビットが1
一時的に使用される(非永続的な)マルチキャストアドレス
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スコープフィールドは4ビットのフラグでマルチキャストグループのスコープを限定するために使用します。マルチキャストアドレスのスコープフィールド値を次の表に示します。
値 |
スコープの範囲 |
---|---|
0 |
予約 |
1 |
インタフェースローカルスコープ |
2 |
リンクローカルスコープ |
3 |
予約 |
4 |
アドミンローカルスコープ |
5 |
サイトローカルスコープ |
6 |
未割り当て |
7 |
未割り当て |
8 |
組織ローカルスコープ |
9 |
未割り当て |
A |
未割り当て |
B |
未割り当て |
C |
未割り当て |
D |
未割り当て |
E |
グローバルスコープ |
F |
予約 |
- 〈この項の構成〉
(1) 全ノードアドレス
全ノードアドレスは,指定されたスコープ内すべてのIPv6ノードの集合体を示すアドレスです。このアドレスを終点アドレスに持つパケットは,指定スコープ内すべてのノードで受信されます。全ノードアドレスの種類を次に示します。
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ff01:0:0:0:0:0:0:1 インタフェースローカル・全ノードアドレス
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ff02:0:0:0:0:0:0:1 リンクローカル・全ノードアドレス
(2) 全ルータアドレス
全ルータアドレスは,指定されたスコープ内すべてのIPv6ルータの集合体を示すアドレスです。このアドレスを終点アドレスに持つパケットは,指定スコープ内すべてのルータで受信されます。全ルータアドレスの種類を次に示します。
-
ff01:0:0:0:0:0:0:2 インタフェースローカル・全ルータアドレス
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ff02:0:0:0:0:0:0:2 リンクローカル・全ルータアドレス
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ff05:0:0:0:0:0:0:2 サイトローカル・全ルータアドレス
(3) 要請ノードアドレス
要請ノードアドレスは,ノードのユニキャストアドレスとエニキャストアドレスから変換され,要請ノードのアドレス(ユニキャストまたはエニキャスト)の下位24ビットを104ビットのプレフィックスff02:0:0:0:0:1:ff00::/104に加えたものです。要請ノードアドレスの範囲を次に示します。
ff02:0:0:0:0:1:ff00:0000 〜 ff02:0:0:0:0:1:ffff:ffff
集約プロバイダごとに上位プレフィックスが異なるなどの理由で上位の数ビットだけが異なるIPv6アドレスが生成された場合,これらのアドレスは同じ要請ノードアドレスとなります。これによってノードが加入しなくてはならないマルチキャストアドレスの数を少なくできます。