コンフィグレーションガイド Vol.2


9.1.1 概要

〈この項の構成〉

(1) マルチキャストの概要

同一の情報を複数の受信者に送信する場合,ユニキャストでは送信者が受信者の数だけユニキャストパケットを複製して送信するため,送信者とネットワークの負荷が高くなります。マルチキャストでは送信者がネットワーク内で選択されたグループに対してマルチキャストパケットを送信します。送信者は受信者ごとにマルチキャストパケットを複製する必要はなく,受信者が増えたときのネットワークの負荷を軽減できます。マルチキャストの概要を次の図に示します。

図9‒1 マルチキャストの概要

[図データ]

マルチキャストで送信する場合,宛先アドレスにはグループアドレス(マルチキャストアドレス)を使用します。グループアドレスを次の表に示します。

表9‒1 グループアドレス

プロトコル

アドレス範囲

IPv4

224.0.0.0〜239.255.255.255

IPv6

上位8ビットがff(16進数)となるIPv6アドレス

(2) IGMP snoopingおよびMLD snoopingの概要

レイヤ2スイッチはマルチキャストトラフィックをVLAN内の全ポートに中継します。そのため,レイヤ2スイッチが接続されているネットワークでマルチキャストを使用すると,マルチキャストトラフィックの受信者がいないポートに不要なマルチキャストトラフィックが流れます。

IGMP snoopingおよびMLD snoopingは,IGMPメッセージもしくはMLDメッセージを監視して,受信者が接続しているポートにだけマルチキャストトラフィックを中継します。この機能を利用することで,不要なマルチキャストトラフィックの中継を抑止し,ネットワークを効率的に利用できます。IGMP/MLD snoopingの概要を次の図に示します。

図9‒2 IGMP/MLD snoopingの概要

[図データ]

本装置はマルチキャストグループ管理プロトコルのパケットを監視して,マルチキャストトラフィックの受信者が接続しているポートを検出します。マルチキャストグループ管理プロトコルは,ルータと受信者間でマルチキャストグループメンバシップ情報を送受信するプロトコルで,IPv4ネットワークではIGMP,IPv6ネットワークではMLDをサポートしています。本装置は,受信者から送信されるマルチキャストグループ参加および離脱要求を示すパケットを検出することで,どの接続ポートへマルチキャストトラフィックを中継すればよいかを学習します。