コンフィグレーションガイド Vol.2
- <この節の構成>
- (1) 運用中のコンフィグレーション変更について
- (2) 他機能との共存
- (3) リングポートフォワーディング遷移時間の設定について
- (4) 共有リンクありのマルチリングでのVLAN構成について
- (5) Ring Protocol使用時のネットワーク構築について
- (6) ヘルスチェックフレームの送信間隔と障害監視時間について
- (7) 相互運用
- (8) リングを構成する装置について
- (9) マスタノード障害時について
- (10) ネットワーク内の多重障害時について
- (11) VLANのダウンを伴う障害発生時の経路の切り替えについて
- (12) ネットワーク負荷の高い環境での運用について
- (13) VLANのダウンを伴うコンフィグレーションコマンドの設定について
- (14) 経路切り戻し抑止機能適用時のリングポートフォワーディング遷移時間の設定について
- (15) ヘルスチェックフレームの送信について
(1) 運用中のコンフィグレーション変更について
運用中に,Ring Protocolの次に示すコンフィグレーションを変更する場合は,ループ構成にならないように注意が必要です。
- Ring Protocol機能の停止(disableコマンド)
- 動作モード(modeコマンド)の変更および属性(ring-attributeパラメータ)の変更
- 制御VLAN(control-vlanコマンド)の変更および制御VLANに使用しているVLAN ID(interface vlanコマンド,switchport trunkコマンド)の変更
- データ転送用VLAN(axrp vlan-mappingコマンド,vlan-groupコマンド)の変更
- プライマリポート(axrp-primary-portコマンド)の変更
- 共有リンク監視リングのマスタノードが動作している装置に,共有リンク非監視リングの最終端ノードを追加(動作モードの属性にrift-ring-edgeパラメータ指定のあるリングを追加)
これらのコンフィグレーションは,次の手順で変更することを推奨します。
- コンフィグレーションを変更する装置のリングポート,またはマスタノードのセカンダリポートをshutdownコマンドなどでダウン状態にします。
- コンフィグレーションを変更する装置のRing Protocol機能を停止(disableコマンド)します。
- コンフィグレーションを変更します。
- Ring Protocol機能の停止を解除(no disableコマンド)します。
- 事前にダウン状態としたリングポートをアップ(shutdownコマンドなどの解除)します。
(2) 他機能との共存
「1.3 レイヤ2スイッチ機能と他機能の共存について」を参照してください。
(3) リングポートフォワーディング遷移時間の設定について
リングポートフォワーディング遷移時間(forwarding-shift-time)がマスタノードのヘルスチェック送信間隔(health-check interval)よりも短い場合,マスタノードがリング障害の復旧を検出して,セカンダリポートをブロッキング状態に変更するよりも先に,障害が復旧したノードのリングポートがフォワーディング状態となることがあり,ループが発生するおそれがあります。したがって,リングポートフォワーディング遷移時間(forwarding-shift-time)はヘルスチェック送信間隔(health-check interval)より大きい値を設定してください。
(4) 共有リンクありのマルチリングでのVLAN構成について
複数のリングで共通に使用する共有リンクでは,それぞれのリングで同じVLANを使用する必要があります。共有リンク間でのVLANのポート状態(フォワーディング状態またはブロッキング状態)は共有リンク監視リングで制御します。このため,共有リンク監視/非監視リングで異なるVLANを使用すると,共有リンク非監視リングで使用しているVLANはブロッキング状態のままとなり,通信ができなくなります。
(5) Ring Protocol使用時のネットワーク構築について
(a) リングネットワークを構築してから,Ring Protocolを動作させる場合
Ring Protocolを利用するネットワークはループ構成となります。ネットワークの構築時は,次に示すような対応をしてループを防止してください。
- 事前に,リング構成ノードのリングポート(物理ポートまたはチャネルグループ)をshutdownコマンドなどでダウン状態にしてください。
- Ring Protocolのコンフィグレーションを設定して,Ring Protocolを有効にしてください。
- ネットワーク内のすべての装置にRing Protocolの設定が完了した時点でリングポートをアップ(shutdownコマンドなどの解除)してください。
(b) Ring Protocolが動作している装置を順次接続して,リングネットワークを構築する場合
リングネットワークの構築が完了していない状態,かつコンフィグレーションコマンドforwarding-shift-timeで「infinity」をマスタノードに設定している状態で,マスタノードのセカンダリポートを他装置と接続した場合,セカンダリポートがリンクアップしてもブロッキング状態を維持するため,該当ポートを使用した通信はできません。このため,次に示すどれかの方法でリングネットワークを構築してください。
- リングネットワークを構成するすべてのトランジットノードの接続が完了したあと,マスタノードを接続してください。
- リングネットワークを構築するときに,最初にマスタノードを接続する場合は,プライマリポート側からトランジットノードを接続してください。そして,すべてのトランジットノードの接続が完了したあと,マスタノードのセカンダリポートを接続してください。
- リングポートがフォワーディング状態に遷移するまでの保護時間として,コンフィグレーションコマンドforwarding-shift-timeで「infinity」以外の値をマスタノードに設定してください。また,リングネットワークの構築が完了したあと,この保護時間(forwarding-shift-timeコマンドでの設定値)は,マスタノードでのヘルスチェックフレームの送信間隔(health-check intervalコマンドでの設定値)よりも大きい値を設定してください。小さい場合,一時的にループの発生するおそれがあるため,設定値は十分に考慮してください。
- リングネットワークを構築するときに,最初にマスタノードを接続して,セカンダリポート側からトランジットノードを接続する場合は,次の手順で実施してください。
- マスタノードのプライマリポートでは,接続時にダウン状態となるように,shutdownコマンドを実行します。
- マスタノードのRing Protocol機能を停止(disableコマンド)します。
- すべてのトランジットノードを接続します。
- マスタノードのRing Protocol機能の停止を解除(no disableコマンド)します。
- ダウン状態としていたマスタノードのプライマリポートをアップ(no shutdownコマンド)します。
(6) ヘルスチェックフレームの送信間隔と障害監視時間について
障害監視時間(health-check holdtime)は送信間隔(health-check interval)より大きな値を設定してください。送信間隔よりも小さな値を設定すると,受信タイムアウトとなって障害を誤検出します。また,障害監視時間と送信間隔はネットワーク構成などを十分に考慮した値を設定してください。障害監視時間は送信間隔の2倍以上を目安として設定することを推奨します。2倍未満に設定すると,ヘルスチェックフレームの受信が1回失敗した状態で障害を検出することがあるため,ネットワークの負荷などによって遅延が発生した場合に障害を誤検出するおそれがあります。
(7) 相互運用
Ring Protocolは,本装置独自仕様の機能です。他社スイッチとは相互運用できません。
(8) リングを構成する装置について
Ring Protocolを使用したネットワーク内で,本装置間にRing Protocolをサポートしていない他社スイッチや伝送装置などを設置した場合,本装置のマスタノードが送信するフラッシュ制御フレームを解釈できないため,すぐにMACアドレステーブルエントリがクリアされません。その結果,通信経路の切り替え(もしくは切り戻し)前の情報に従ってデータフレームの転送が行われるため,正しくデータが届かないおそれがあります。
(9) マスタノード障害時について
マスタノードが装置障害などによって通信できない状態になると,リングネットワークの障害監視が行われなくなります。このため,迂回経路への切り替えは行われないで,マスタノード以外のトランジットノード間の通信はそのまま継続されます。また,マスタノードが装置障害から復旧する際には,フラッシュ制御フレームをリング内のトランジットノードに向けて送信します。このため,一時的に通信が停止するおそれがあります。
(10) ネットワーク内の多重障害時について
同一リング内の異なるノード間で2個所以上の障害が起きた場合(多重障害),マスタノードはすでに1個所目の障害で障害検出を行っているため,2個所目以降の障害を検出しません。また,多重障害での復旧検出についても,最後の障害が復旧するまでマスタノードが送信しているヘルスチェックフレームを受信できないため,復旧を検出できません。その結果,多重障害のうち,一部の障害が復旧した(リングとして障害が残っている状態)ときには一時的に通信できないことがあります。
(11) VLANのダウンを伴う障害発生時の経路の切り替えについて
マスタノードのプライマリポートでリンクダウンなどの障害が発生すると,データ転送用のVLANグループに設定されているVLANが一時的にダウンする場合があります。このような場合,経路の切り替えによる通信の復旧に時間がかかることがあります。
なお,VLAN debounce機能を使用することでVLANのダウンを回避できる場合があります。VLAN debounce機能の詳細については,「4.7 VLAN debounce機能の解説」を参照してください。
(12) ネットワーク負荷の高い環境での運用について
トランジットノードで,定常的またはバースト的に,リングポートに高負荷のトラフィックが流れると,Ring Protocolの制御フレームの破棄または遅延が発生し,マスタノードで障害を誤検出するおそれがあります。上記の環境に当てはまる場合には,次の対応を行ってください。
- Ring Protocolのパラメータ値の調整による対応の場合
ヘルスチェックフレームの送信間隔(health-check interval),および障害監視時間(health-check holdtime)を環境に合わせて調整して運用してください。
- フロー制御の設定による対応の場合
次のどちらかを条件としたQoSフローリストを使用して,Ring Protocolの制御フレームに対する優先制御を設定して運用してください。詳細は,「13. QoSフロー」を参照してください。
- Ring Protocolの制御フレームに使用しているEtherType値(0x88f3)またはEtherType名称(axp)を条件とする。
- Ring Protocolの制御VLANに使用しているVLAN IDを条件とする。
(13) VLANのダウンを伴うコンフィグレーションコマンドの設定について
Ring Protocolに関するコンフィグレーションコマンドが設定されていない状態で,一つ目のRing Protocolに関するコンフィグレーションコマンド(次に示すどれかのコマンド)を設定した場合に,すべてのVLANが一時的にダウンします。そのため,Ring Protocolを使用したリングネットワークを構築する場合には,あらかじめ次に示すコンフィグレーションコマンドを設定しておくことを推奨します。
- axrp
- axrp vlan-mapping
- axrp-primary-port
- axrp-ring-port
なお,VLANマッピング(axrp vlan-mappingコマンド)については,新たに追加設定した場合でも,そのVLANマッピングに関連づけられるVLANが一時的にダウンします。すでに設定されているVLANマッピング,およびそのVLANマッピングに関連づけられているその他のVLANには影響ありません。
(14) 経路切り戻し抑止機能適用時のリングポートフォワーディング遷移時間の設定について
経路切り戻し抑止機能を動作させる場合,トランジットノードでのリングポートフォワーディング遷移時間(forwarding-shift-time)にはinfinityを指定するか,または経路切り戻し抑止時間(preempt-delay)よりも大きな値を指定してください。経路切り戻し抑止中,トランジットノードでのリングポートフォワーディング遷移時間がタイムアウトして該当リングポートのブロッキング状態を解除してしまうと,マスタノードはセカンダリポートのブロッキング状態を解除しているため,ループが発生するおそれがあります。
(15) ヘルスチェックフレームの送信について
本装置では,リングポートの状態に関係なく,ヘルスチェックフレームの送信処理をします。このため,リングポートがダウン状態の場合,ヘルスチェックフレームは送信されませんが,該当ポートのヘルスチェックフレームの送信統計はカウントされます。ヘルスチェックフレームの統計情報を確認するときは注意してください。
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