解説書 Vol.1
- <この項の構成>
- (1) 概要
(1) 概要
隣接ルータとの接続・LSPの同期などが完了していなかったり,安定していなかったりすると,ネットワーク全体のルーティングが不安定になることがあります。ルータの起動時・再起動時やネットワークにルータを追加するときに,このような状況がおこることがあります。
本装置では,広告するLSPのオーバロードビットを1にすることで,本装置をルーティングに使用しないように広告することができます。また,オーバロードビット広告時にグレースフル・スタートによる隣接ルータ広告を抑止するかどうかを選択できます。
本装置のLSPのオーバロードビットを1にすると,ほかのルータは本装置に隣接しているルータがないものとして経路を計算します。この結果,それぞれのレベルで,本装置以外のルータが広告した宛先への経路が本装置を迂回します。迂回できない場合は,経路がなくなり通信できなくなります。本装置が広告している宛先へは,通常通り経路ができて通信できます。
グレースフル・スタートを併用すると,隣接ルータに隣接接続を広告させないようにできます。この結果,ほかのルータが経路を計算するときに本装置自体を除きます。このため,本装置が広告している宛先とも通信できなくなります。
本装置の装置アドレスによる通信は,IS-ISが装置アドレスを広告することによってできるようになります。このため,装置アドレスを使ったtelnet・SNMPによる管理やBGPによる経路交換は,オーバロードビットだけを使用した場合はできますが,グレースフル・スタートを併用するとできなくなります。
一方,本装置が広告している経路の代替経路をほかのルータが広告している場合,オーバロードビットだけを使用していると,本装置の経路を使用するおそれがあります。グレースフル・スタートを併用すれば,必ず代替経路を選択することになります。
本装置では,オーバロードビットを広告する条件を,次に示す三つから選択できます。
- 常時
常時,オーバロードビットを1にしてLSPを広告します。動作手順を次の図に示します。
ネットワークに装置を追加する時や,ネットワークから装置を取り除く時に使用します。
図14-8 常時設定時の動作手順
- 装置起動後常時
装置の起動・再起動・系切替(グレースフル・リスタート成功時を除く)後,オーバロードビットを1にしてLSPを広告します。定義を削除するか,オーバロード広告停止の運用コマンドを実行するまで,この広告が継続します。動作手順を次の図に示します。
装置が起動・再起動したときに,運用者が状態の安定を確認してからルーティングを開始したい場合に使用します。
図14-9 装置起動後常時設定時の動作手順
- 装置起動後,期限付き
装置の起動・再起動・系切替(グレースフル・リスタート成功時を除く)後,オーバロードビットを1にしてLSPを広告します。設定した期限を経過するか,オーバロード広告停止運用コマンドを実行するまで,この広告が継続します。動作手順を次の図に示します。
装置が起動・再起動したときにルーティングを抑止して,その後自動的に復旧するのが望ましい場合に使用します。
図14-10 装置起動後期限付き設定時の動作手順
- 【注意事項】
- 本装置がレベル1-2ルータの場合,デフォルトでレベル1学習経路をレベル2へ再配布するため,オーバロードビットを1にしてもほかのルータでは該当経路を経路計算から除きません。これは,IS-ISレベル間経路広告の宛先を本装置のLSPで広告するためです。
- グレースフル・スタートを使用するためには,隣接ルータ上でRFC 3847に規定してあるグレースフル・リスタートのヘルパー機能が動作している必要があります。これは規格上,グレースフル・スタート機能がグレースフル・リスタート機能の一部であるためです。隣接ルータがヘルパー機能をサポートしていない場合,グレースフル・スタートは機能しません。
- グレースフル・スタートを使用する場合,ブロードキャスト型ネットワークにある隣接ルータのプライオリティ値を1以上に設定してください。これは,グレースフル・スタートを併用している場合,オーバロード広告中は本装置が代表ルータにならないように,本装置のブロードキャスト型回線のプライオリティ値を0にするからです。
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