解説書 Vol.1
BGP4はAS間のルーティングプロトコルなので,扱う経路情報は宛先ネットワークへのASパス情報(パケットが宛先のネットワークに到達するまでに通過するASの列)で構成されます。BGP4が動作するルータをBGPスピーカといいます。このBGPスピーカはそのほかのBGPスピーカと経路情報を交換するためにピアを形成します。
- <この項の構成>
- (1) ピアの種類
- (2) 装置アドレス
本装置で使用されるピアの種類には外部ピアと内部ピアがあります。ネットワーク構成に合わせてピアを使用してください。外部ピアと内部ピアを次の図に示します。
外部ピアはエキスターナルピアとも呼ばれ,異なるASに属するBGPスピーカ間に形成するピアです。ピアリングに使用するIPアドレスは直接接続されたインタフェースのインタフェースアドレスを使用します。
「図13-4 内部ピアと外部ピア」のルータ1−ルータ6間,ルータ2−ルータ7間,ルータ3−ルータ8間に形成されるピアです。
内部の同じASに属するBGPスピーカ間に形成するピアです。BGP4はピア間のコネクションを確立するためにTCP(ポート179)を使用します。このため,すべてのBGPスピーカが物理的にフルメッシュで接続される必要はありませんが,内部ピアはAS内の各BGPスピーカ間で論理的にフルメッシュに形成されなければなりません。これは,内部ピアで受信した経路情報はそのほかの内部ピアに通知しないためです。なお,ルート・リフレクションやコンフィデレーションの機能を使用すると,この条件は緩和されます。
内部ピアには次に示す2種類があります。
- インターナルピア
同じAS内に属し,物理的に直接接続されたBGPスピーカ間に形成するピアです。ピアリングに使用するIPアドレスは直接接続されたインタフェースのインタフェースアドレスを使用します。IPアドレスに装置アドレスを使用する場合はルーティングピアとなります。
「図13-4 内部ピアと外部ピア」のルータ1−ルータ2間に形成されるピアです。
- ルーティングピア
同じAS内に属し,物理的に直接接続されないBGPスピーカ間に形成するピアです。ピアリングに使用するIPアドレスはそのルータの装置アドレスか,またはルータ内のインタフェースのインタフェースアドレスのどちらかになります。
「図13-4 内部ピアと外部ピア」のルータ1−ルータ3間,ルータ2−ルータ3間に形成されるピアです。
なお,コンフィデレーション構成時は,これら三つのピアに加え,メンバーAS間ピア(サブAS間ピア)が追加されます。メンバーAS間ピアについては「13.3.6 コンフィデレーション」の項を参照してください。
本装置では装置に対してIPアドレスを割り当てることができます。これを装置アドレスと呼びます。この装置アドレスを内部ピアのIPアドレスとして使用することによって,特定の物理インタフェースの状態に依存した内部ピア(TCPコネクション)への影響を排除できます。
例えば,「図13-4 内部ピアと外部ピア」でルータ1−ルータ2間の内部ピアにインタフェースのIPアドレスを使用すると,ルータ1−ルータ2間に障害が発生しインタフェースが使用できない場合にルータ1−ルータ2間の内部ピアは確立できません。しかし,内部ピアのIPアドレスとして装置アドレスを使用すると,ルータ1−ルータ2間のインタフェースが使用できない場合でもルータ4,ルータ5経由で内部ピアを確立できます。
- 装置アドレス使用上の注意事項
- 装置アドレスを使用する場合,そのアドレスへの経路情報をスタティックまたはIGP(RIP,OSPFなど)でお互いに学習していなければなりません。なお,本装置は装置アドレスを直結経路情報として扱います。
- ルーティングピアで非BGPスピーカを経由する場合の注意事項
- ルーティングピアで非BGPスピーカを経由して経路情報を通知する(例えば,ルータ2からルータ3に通知する)場合,非BGPスピーカでIGP経由でその経路情報を学習していなければなりません。これは該当する経路情報の通知によって通知先BGPスピーカから入ってくる該当宛先へのIPパケットが,該当する経路を学習していない非BGPスピーカのルータで廃棄されるのを防ぐためです。例えば,「図13-4 内部ピアと外部ピア」ではルータ3からルータ5に入ってくるIPパケットがルータ5で廃棄されるのを防ぐためです。
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