解説書 Vol.1
- <この節の構成>
- (1) マルチプルスパニングツリー使用時の注意事項
- (2) BCU二重化構成でBPDUガード機能を使用する場合について
- (3) ループガード機能を設定するポートについて
- (4) VLANトンネリングについて
- (5) プライベートVLANについて
- (6) BCUの過負荷について
(1) マルチプルスパニングツリー使用時の注意事項
(a) MSTリージョンについて
- 複数の装置を同じMSTリージョンにするためには,該当装置は同じMSTコンフィギュレーションにする必要があります。リージョン名,リビジョン番号,MSTインスタンス番号とVLANの対応を同じにしてください。
- 本装置は1〜4,095のVLANをサポートしていますが,他装置が扱えるVLANの範囲が本装置と異なることがあります。そのような装置を同じMSTリージョンとして扱いたい場合は,該当VLANをMSTインスタンス0に所属させてください。
(b) トポロジーの収束に時間が掛かる場合について
CISTのルートブリッジまたはMSTインスタンスのルートブリッジで,次の表に示すイベントが発生すると,トポロジーが落ち着くまでに時間が掛かる場合があります。その間,通信が途絶えたり,FDBのクリアが発生したりします。
イベント 内容 イベントの発生したルートブリッジ種別 影響トポロジー コンフィグレーション変更 リージョン名(1),リビジョン番号(2),またはインスタンス番号(3)とVLANの対応(4)をコンフィグレーションで変更し,リージョンを分割または同じにする場合
(1) spanning-tree mstのnameサブコマンド
(2)spanning-tree mstのrevisionサブコマンド
(3)spanning-tree mstのinstanceサブコマンド
(4)spanning-tree mst instanceのinstance-vlanサブコマンドCISTのルートブリッジ CIST MSTインスタンス0 (IST)でのルートブリッジ CIST MSTインスタンス1以降でのルートブリッジ 当該MSTインスタンス ブリッジ優先度をspanning-tree mst instanceのbridge-priorityサブコマンドのコンフィグレーションで下げた(現状より大きな値を設定した)場合 CISTのルートブリッジ CIST MSTインスタンス1以降でのルートブリッジ 当該MSTインスタンス 現在の装置のMACアドレスより値が小さくなるようにコンフィグレーションコマンドlocal-mac-addressで設定した場合 CISTのルートブリッジ CIST MSTインスタンス1以降でのルートブリッジ 当該MSTインスタンス 二重化BCUの系切替※ BCUの系切替後に,装置のMACアドレスの値が小さくなった場合【AX7800S】 CISTのルートブリッジ CIST MSTインスタンス1以降でのルートブリッジ 当該MSTインスタンス その他 本装置が停止した場合 CISTのルートブリッジ CIST MSTインスタンス0 (IST)でのルートブリッジ CIST MSTインスタンス1以降でのルートブリッジ 当該MSTインスタンス 本装置と接続している対向装置で,ループ構成となっている本装置の全回線がダウンした場合(本装置が当該ループ構成上ルートブリッジではなくなった場合) CISTのルートブリッジ CIST MSTインスタンス0 (IST)でのルートブリッジ CIST MSTインスタンス1以降でのルートブリッジ 当該MSTインスタンス
- 注※ 実施時の回避策
- コンフィグレーションコマンドlocal-mac-addressを設定し,運用系と待機系のMACアドレスを同じ値に設定してください。
(c) ループガード機能ついて
マルチプルスパニングツリーでループガード機能を使用することはできません。
(2) BCU二重化構成でBPDUガード機能を使用する場合について
BPDUガード機能によってポートがダウンした場合,BCU障害などでBCU切り替えが発生すると,新運用系で当該ポートがダウンしたままになります。この状態でコマンドによってスパニングツリーの状態を出力すると,BPDUガードでポートがダウンしたのではなく,最初からポートがダウンしていたように出力されます。その場合,freeコマンドによって当該Lineを運用状態にしてください。
(3) ループガード機能を設定するポートについて
ループガード機能を設定したあと,次に示すイベントが発生すると,ループガードが動作してポートをブロックします。その後,BPDUを受信するまで,ループガードは解除されません。
- 装置起動
- 系切替
- ポートのアップ(リンクアグリゲーションのアップも含む)
- スパニングツリープログラムの再起動
- スパニングツリープロトコルの種別変更(STP/高速STP,PVST+/高速PVST+)
なお,ループガード機能は,指定ポートだけでなく対向装置にも設定してください。指定ポートだけに設定すると,上記のイベントが発生しても,指定ポートはBPDUを受信しないことがあります。このような場合,ループガードの解除に時間が掛かります。ループガードを解除するには,対向装置のポートでBPDU受信タイムアウトを検出したあとのBPDUの送信を待つ必要があるためです。
また,両ポートにループガードを設定した場合でも,指定ポートでBPDUを一度も受信せずに,ループガードの解除に時間が掛かることがあります。具体的には,対向ポートが指定ポートとなるようにブリッジやポートの優先度,パスコストを変更した場合です。対向ポートでBPDUタイムアウトを検出し,ループガードが動作します。このポートが指定ポートになった場合,BPDUを受信しないことがあり,ループガードの解除に時間が掛かることがあります。
運用中にループガード機能を設定した場合,その時点では,ループガードは動作しません。運用中に設定したループガードは,BPDUの受信タイムアウトが発生した時に動作します。
本装置と対向装置のポート間にBPDUを中継しない装置が存在し,かつポートの両端にループガード機能を設定した状態でポートがリンクアップした場合,両端のポートはループガードが動作したままになります。復旧するには,ポート間に存在する装置のBPDU中継機能を有効にし,再度ポートをリンクアップさせる必要があります。
(4) VLANトンネリングについて
VLANトンネリング設定時,Untaggedポート(VLANトンネリングのアクセス回線側)はスパニングツリーの対象外になります。Taggedポート(バックボーン回線側)だけがスパニングツリーを使用できます。
(5) プライベートVLANについて
プライベートVLANでスパニングツリーを使用する場合,次に示す注意事項があります。
- PVST+の場合,プライベートVLANを構成する各VLANでPVST+を使用してください。
- マルチプルスパニングツリーの場合,プライベートVLANを構成する各VLANを異なるMSTインスタンスに設定すると,トポロジーによっては通信できない組み合わせができる可能性があります。プライベートVLANを構成するVLANはすべて同じMSTインスタンスに設定してください。
(6) BCUの過負荷について
BCUが過負荷な状態となった場合,本装置が送受信するBPDUの廃棄が発生し,タイムアウトのメッセージ出力,トポロジー変更,一時的な通信断となることがあります。
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