解説書 Vol.1
MPLSを導入するメリットとして次に示すものが挙げられます。
- VPN
コネクション型ネットワークの閉域性を生かして,MPLSによるIP-VPNを実現できます。専用線に準じる閉域性で比較的安価なサービスとしてVPNを提供できます。
また,上位プロトコルが限定されないMPLSの特徴を利用したL2-VPNを実現することもできます。専用線サービスよりも安価な広域イーサネットサービスを,MPLSによるL2-VPNで実現できます。
- トラフィックエンジニアリング
通常のIP経路情報に従って経路を選択する場合は,基本的に最短経路を選択するため,特定経路にトラフィックが集中しやすくなるという問題があります。ルーティングのメトリック(経由するルータ数)を設定することである程度回避できますが,大規模なネットワークではあらゆる宛先に対してメトリックの整合性を保つことは非常に困難になります。
MPLSではIP経路情報に従ったLSPを設定することのほかに,指定ルータを経由するLSPを強制的に設定できます。これを明示的ルーティング(Explicit Route)と呼びます。これによって,多量の特定宛先トラフィックで特定経路が輻輳するような場合に,該当するトラフィックを強制的に迂回経路に経由させるようにして,輻輳を回避できます。このようにトラフィックの分散を図ることをトラフィックエンジニアリングといいます。
- QoSの高度化
LSPはFEC(Forwarding Equivalent Class)と呼ばれるトラフィック識別子ごとに設定されますが,一般的なFECは宛先IPアドレスまたはIPプレフィックスです。宛先IPアドレスが同一であれば,トラフィックの種別に関係なく,同一LSPに沿って転送されるのが基本です。一般的なFECであっても,入口ルータで検出したトラフィックフローをMPLSヘッダの一部(EXP bits)に対応づけ,LSPに沿った各ルータでEXP bitsに従ってキュー制御・送信制御を行います。
また,入口ルータで検出したトラフィックフローに対して,出力スタティックLSPを指定できます。LSPに沿った各ルータではLSPを決定する受信ラベル値に従ってキュー制御・送信制御を行います。
前者は,EXP bitsによってQoS制御を実現することから,E-LSP(EXP-Inferred-PSC LSP)に相当します。後者はLSPによってQoS制御を実現することから,L-LSP(Label-Only-Inferred-PSC LSP)に相当するといえます。
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