解説書 Vol.1
OSPFv3では,OSPFv3を使用しているルータがAS外の経路情報を認識している場合,この経路をOSPFv3を使用してそのほかすべてのOSPFv3を使用しているルータに通知できます。OSPFv3を使用し,AS外経路をOSPFv3内に導入するルータをAS境界ルータと呼びます。本装置をAS境界ルータとして使用するためには,エキスポート・フィルタのコンフィグレーション(コンフィグレーションコマンドexportの配布先プロトコルにospf6aseを指定)が必要となります。AS外経路情報の導入の概念を次の図に示します。
- <この項の構成>
- (1) AS外経路の広告
- (2) AS外経路の導入例
OSPFv3へAS外経路を導入するとき,導入元のAS境界ルータは,宛先までのメトリック,AS外経路メトリックタイプ,フォワーディングアドレスとタグを付加して広告します。
- メトリック
宛先までのメトリックとして,固定の値を指定します(コンフィグレーションコマンドdefaults(ospf6モード)のcostサブコマンド,コンフィグレーションコマンドroute-filterまたはexportコマンドのmetricパラメータ)。また,RIPngのようにメトリックの情報を含んだ経路情報をOSPFv3へ取り込む場合には,メトリック引き継ぎ指定(コンフィグレーションコマンドdefaults(ospf6モード)のinherit-metricサブコマンド)によって,メトリックを引き継ぐことができます。
- AS外経路メトリックタイプ
OSPFv3へ導入するAS外経路には,Type 1とType 2の2種類があります。Type 1とType 2の経路では,経路の優先順位,およびメトリックを経路の選択に使用するときの計算方法が異なります。
- フォワーディングアドレス(転送先)
本装置では設定しません。
- タグ
付加情報としてタグを広告できます。
(2) AS外経路の導入例
バックアップ回線を使用した構成でのAS外経路の導入例を次の図に示します。
図14-23 バックアップ回線を使用した構成でのAS外経路の導入例
OSPFv3では,隣接するルータを検出するために,定期的にパケットを交換します。このため,バックアップ回線をOSPFv3のトポロジの一部として使用した場合,この回線でパケットを継続して交換するため,バックアップ回線も常に運用状態になります。バックアップ回線上での通信が必要ではない場合にバックアップ回線を休止状態とするには,次のように設定します。
本装置Aでは主回線でOSPFv3を動作させ,バックアップ回線にネットワークAへのスタティック経路を定義します。デフォルトでは,OSPFv3のAS内経路のプリファレンス値はスタティック経路のプリファレンス値と比べ小さい(優先度が高い)ため,ネットワークAへの経路はOSPFv3で学習したAS内経路が選択されます。主回線障害時,本装置Aでは該当するAS内経路が削除されスタティック経路を再選択しますが,本装置CではネットワークAへの経路情報が存在しなくなります。本装置AでのネットワークAへのスタティック経路情報をAS外経路として本装置Cに広告するためには本装置Aでエキスポート定義を設定する必要があります。こうすることによって,バックアップ回線上でHelloパケットを交換しないで主回線障害時にもOSPFv3にネットワークAへの有用な経路情報を導入できます。
Copyright (c)2005, 2011, ALAXALA Networks Corporation. All rights reserved.