解説書 Vol.1

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9.4.1 インポート・フィルタ(BGP4)

インポート・フィルタは指定プロトコルで受信したルーティング・パケットの経路情報をルーティングテーブルに取り込むかどうかをフィルタリング条件に従って制御します。インポート・フィルタを指定していない場合は,すべての経路情報を取り込みます。

<この項の構成>
(1) プリファレンス値
(2) フィルタリング条件
(3) 拡張正規表現
(4) ASパス正規表現
(5) MED属性値

(1) プリファレンス値

取り込む経路情報にはフィルタリング条件ごとにその経路情報のプリファレンス値を指定できます。プリファレンス値を指定していない場合は,そのプロトコルのデフォルトのプリファレンス値になります。

同一宛先アドレスの経路情報が複数存在する場合,プリファレンス値によって優先度の高い経路情報が有効となります。プリファレンス値の詳細は,「8.3.3 スタティックルーティングとダイナミックルーティング(RIP/OSPF)の同時動作 (1) プリファレンス値」を参照ください。

(2) フィルタリング条件

取り込む経路情報はフィルタリング条件で指定できます。指定できるインポート・フィルタのフィルタリング条件を次に示します。

また,取り込まれた経路情報はフィルタリング条件ごとにその経路情報のBGP属性を変更できます。変更できるBGP属性を次に示します。

(3) 拡張正規表現

フィルタリング条件であるAS_PATH属性やCOMMUNITY属性は,拡張正規表現(Extended Regular Expression)によって,1文字単位に複数の意味を持つ文字列で指定できます。

拡張正規表現には,数字,小文字アルファベット,大文字アルファベット,記号(ただし,ダブルクォーテーション(")は除く)などの通常文字と,次に示す特殊文字が使用可能です。

コンフィグレーションコマンドや運用コマンドで拡張正規表現を指定する際には,拡張正規表現の前後をダブルクォーテーション(")で括って指定してください。

例:# show ip bgp aspath-regexp "^$"
    (config)# attribute-list attribute-filter 1 aspath-regexp "_100_"

拡張正規表現で使用する文字同士の結合の優先順位は次の表に示す様になります。

表9-21 拡張正規表現使用文字の結合の優先順位

優先順位 文字



( )
*,+,?
通常文字,.,[ ],^,$
|

(a) AS_PATH属性

AS_PATH属性は,10進数表記したAS番号を空白文字で接続して表現します。

なお,フィルタ条件としてAS_PATH属性のパスタイプを指定できません。フィルタ条件として指定するAS番号は,AS_PATH属性に含まれるすべてのパスタイプがフィルタの評価対象となります。次に示すAS_PATH属性を持つ経路をフィルタする場合を例として説明します。

[AS_PATH属性の内容]
AS_SEQ: 100 200 300, AS_SET: 1000 2000 3000, AS_CONFED_SET: 65001 65002

[運用コマンドでのAS_PATH属性の表示形式]
100 200 300 {1000 2000 3000} (65001 65002)

このようなAS_PATH属性の場合,次に示すどのAS番号を指定してもフィルタに一致します。

運用コマンドのパスタイプ表記である{}や()は,正規表現の特殊文字のため,パスタイプを表すための文字としては指定できないことに注意してください。

また,AS_SETについては経路受信時に昇順にソートするため,ソートした結果がフィルタの評価対象となります。

拡張正規表現を用いたASパスの指定例を次の図に示します。

図9-34 拡張正規表現を用いたASパス指定例

[図データ]

(b) Community属性

Community属性は,次の様に表現します。
<AS番号> : <値>
no-export : 0xFFFFFF01(16進数)を示します。
no-advertise : 0xFFFFFF02(16進数)を示します。
no-export-sub : 0xFFFFFF03(16進数)を示します。
注 <AS番号>や<値>は10進数で表します。

拡張正規表現を用いたCommunityの指定例を次の図に示します。

図9-35 拡張正規表現を用いたCommunity指定例

[図データ]

(4) ASパス正規表現

フィルタリング条件であるAS_PATH属性はASパス正規表現(ASPath-Regular-Expression)によって複数のAS_PATHに一致するような表現で指定できます。ASパス正規表現は次の形式で指定します。

 
<Aspath> := {<Aspath_Term>...|^$}
<Aspath_Term> := <Aspath_Symbol>[{ {m,n} | {m} | {m,} | * | + | ? }]
<Aspath_Symbol> := { <As> | .}
 

ASパス正規表現の例を次の図に示します。

図9-36 ASパス正規表現の例

[図データ]

(5) MED属性値

インポート・フィルタと次に示すパラメータの組み合わせによって,学習したBGP4経路情報のMED属性値を変更できます。

medサブコマンド(パラメータ)の指定値は,数値指定とオフセット指定があります。

インポート・フィルタと組み合わせたmedサブコマンド(パラメータ)でオフセット指定(±指定)した場合に,学習経路情報に設定されるMED属性値を次の表に示します。

表9-22 オフセット指定した場合に取り込む経路情報のMED属性値

学習元プロトコル MED属性値
BGP4
  • 経路情報にMED属性値が含まれている場合,経路情報のMED属性値にオフセット値を±した値を使用します。
  • 経路情報にMED属性値が含まれていない場合,0を基準にオフセット値を±した値を使用します。

注 オフセット値を±した結果がマイナスになった場合は0に,4294967295を超えた場合は4294967295に値が補正されます。


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