解説書 Vol.1

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8.4.3 RIP-1での経路情報の広告

ルーティングプロトコルにRIP-1(RFC1058準拠)を使用している場合には経路情報の広告に注意が必要です。一般に経路情報は次の表に示す4種類に分類されます。

表8-6 経路情報の種類

経路情報の種類 定義
デフォルト経路情報 すべてのネットワーク宛ての経路情報 0.0.0.0/0
ナチュラルマスク経路情報 IPアドレスのクラスに対応したネットワークマスクの経路情報
(クラスA:8ビット)
(クラスB:16ビット)
(クラスC:24ビット)
172.16.0.0/16
  • クラスB
  • ネットマスク:16ビット
    (255.255.0.0)
サブネット経路情報 特定のサブネット宛ての経路情報 172.16.10.0/24
  • クラスB
  • ネットマスク:24ビット
    (255.255.255.0)
ホスト経路情報 特定のホスト宛ての経路情報
(ポイント−ポイント型回線の経路情報も含みます)
172.16.10.1/32
  • ネットマスク:32ビット
    (255.255.255.255)

RIP-1を使用する場合は,RIPメッセージを送信するポートのサブネットマスク値によって,広告する経路情報のエントリに制限が付きます。同一ネットワークアドレス内ですべて同一のサブネットマスクを使用する場合は問題ありません。しかし,サブネットマスクを2種類以上使用する場合(可変長サブネットマスク:VLSM(Variable Length Subnet Mask))は問題になります。VLSMとなるネットワークではルーティングプロトコルにRIP-2(RFC2453準拠)を使用する必要があります。この場合,一部でRIP-1も併用する場合には次の表に示すRIP-1の経路情報の広告条件に注意してください。

表8-7 RIP-1の経路情報の広告条件

広告する経路情報 広告条件
デフォルト経路情報 無条件に広告します。ただし,RIP以外で学習したデフォルト経路情報はエキスポートの設定が必要です。
ナチュラルマスク
経路情報

  • ブロードキャスト型で接続している場合,本装置が保持しているナチュラルマスク経路情報とインタフェースのネットワークアドレス(アドレスクラスに対応したネットワークアドレス)が異なるとき。
図8-15 ブロードキャスト接続で広告する経路情報」参照

  • ポイント−ポイント型で接続している場合,本装置が保持しているナチュラルマスク経路情報と接続相手のインタフェースのネットワークアドレスが異なるとき。
図8-16 ポイント−ポイント接続で広告する経路情報」参照
サブネット経路情報
  • ブロードキャスト型で接続している場合,本装置が保持しているサブネット経路情報のネットワークアドレス(アドレスクラスに対応したネットワークアドレス)とインタフェースのネットワークアドレスが一致し,該当するサブネット経路情報のサブネット長とインタフェースアドレスのサブネット長が一致したとき。
図8-15 ブロードキャスト接続で広告する経路情報」参照

  • ポイント−ポイント型で接続している場合,本装置が保持しているサブネット経路情報のネットワークアドレスと自インタフェースのネットワークアドレスおよび接続相手のインタフェースのネットワークアドレスが一致し,該当するサブネット経路情報のサブネット長と接続相手のインタフェースアドレスのサブネット長が一致したとき。
図8-16 ポイント−ポイント接続で広告する経路情報」参照
ホスト経路情報 本装置が保持している全ホスト経路情報のうち,無番号インタフェースを除くすべてのホスト経路情報を広告します。 図8-17 ホスト経路情報の広告条件」参照

(凡例) −:該当しない


<この項の構成>
(1) ブロードキャスト接続のナチュラルマスク経路およびサブネットマスク経路情報の広告
(2) ポイント−ポイント接続でのナチュラルマスク経路およびサブネットマスク経路情報の広告
(3) ホスト経路情報の広告

(1) ブロードキャスト接続のナチュラルマスク経路およびサブネットマスク経路情報の広告

ブロードキャスト接続で広告する経路情報を次の図に示します。

図8-15 ブロードキャスト接続で広告する経路情報

[図データ]

また,この図でのブロードキャスト接続の広告条件を次の表に示します。

表8-8 ブロードキャスト接続の広告条件

経路情報の種類 ルーティングテーブル上の経路情報 広告条件 広告の有無
インタフェースDのネットワークアドレスとの一致/不一致 インタフェースDのサブネット長との一致/不一致
ナチュラルマスク経路 172.16.0.0/16(No.1) 一致 ×
172.17.0.0/16(No.4) 不一致
サブネット経路 172.17.1.0/24(No.5) 不一致 一致 ×
172.16.2.0/24(No.2) 一致 一致
172.16.3.0/28(No.3) 一致 不一致 ×

(凡例) ○:広告する ×:広告しない −:該当しない


(2) ポイント−ポイント接続でのナチュラルマスク経路およびサブネットマスク経路情報の広告

ポイント−ポイント接続で広告する経路情報を次の図に示します。なお,この図の構成でインタフェースA,Bのネットワークアドレスが異なっている場合,サブネット経路情報は広告されません。

図8-16 ポイント−ポイント接続で広告する経路情報

[図データ]

また,ポイント−ポイント接続のナチュラルマスク経路情報の広告条件を「表8-9 ポイント−ポイント接続のナチュラルマスク経路情報の広告条件」に,ポイント−ポイント接続のサブネット経路情報の広告条件を「表8-10 ポイント−ポイント接続のサブネット経路情報の広告条件」に示します。

表8-9 ポイント−ポイント接続のナチュラルマスク経路情報の広告条件

経路情報の種類 ルーティングテーブル
上の経路情報
広告条件 広告の
有無
インタフェースEのネットワークアドレスとの一致/不一致
ナチュラルマスク経路 172.16.0.0/16(No.1) 一致 ×
172.17.0.0/16(No.4) 不一致

(凡例) ○:広告する ×:広告しない


表8-10 ポイント−ポイント接続のサブネット経路情報の広告条件

経路情報の種類 ルーティングテーブル上の経路情報 広告条件 広告の有無
インタフェースDおよびEのネットワークアドレスとの一致/不一致 インタフェースDおよびEのサブネット長との一致/不一致
サブネット経路 172.17.1.0/24(No.5) 不一致 一致 ×
172.16.2.0/24(No.2) 一致 一致
172.16.3.0/28(No.3) 一致 不一致 ×

(凡例) ○:広告する ×:広告しない


(3) ホスト経路情報の広告

ホスト経路情報の広告条件を次の図に示します。

図8-17 ホスト経路情報の広告条件

[図データ]

(a) IPインタフェースが一つの場合のRIP広告について

本装置では動作できる(インタフェースがアップしており通信できる)IPインタフェースが一つの場合にはRIP広告を行いません。動作できるインタフェースが一つの場合でもRIP広告を行わせるには,コンフィグレーションコマンドripのbroadcastサブコマンドで設定する必要があります。

直結経路を広告しない場合
本装置では,該当する装置の各インタフェースが持つIPアドレスに対するナチュラルマスク経路情報を自動生成しません。ブロードキャスト接続ではサブネット経路情報を,ポイント−ポイント接続ではホスト経路情報を生成します。
RIP-1ではアドレス境界をまたがる場合,サブネット経路情報は広告しないため注意が必要です。構成例を次の図に示します。

図8-18 直結経路を広告しない構成例

[図データ]

注意すべき構成
  • ルーティングプロトコルはRIP-1。
  • 本装置上にアドレス境界を生成する。
  • ブロードキャスト接続するインタフェースのサブネットマスクが,ナチュラルマスクではない。

対策1
  • コンフィグレーションで,経路集約(サブネット経路情報およびホスト経路情報をナチュラルマスク経路情報に集約する)を設定する。
  • コンフィグレーションで,エキスポート(集約経路をRIPにエキスポートする)機能を設定する。

対策2
  • コンフィグレーションで,サブネットワーク化されたインタフェースに対応するナチュラルマスクのダイレクト経路を生成するように設定する(コンフィグレーションコマンドoptionsのgen-class-routeパラメータ)。
  • 上記経路はダイレクト経路として取り扱っているので,デフォルト(エキスポートの設定なし)で広告されます。

注意事項:RIPの異なる実装
本装置ではサブネット経路をネットワーク経路に集約するためには経路集約の定義が必要であり,集約経路はアクティブ経路としてフォワーディング・テーブルに登録されます。RIPの異なる実装ではサブネット経路を自動的にネットワーク経路に集約して広告する装置もあり,通常該当する集約経路はフォワーディング・テーブルに登録されません。集約経路をフォワーディング・テーブルに登録しないような装置と互換の動作をさせる場合には経路集約のコンフィグレーションコマンドaggregateのnoinstallサブコマンドで指定してください。

ポイント−ポイント型回線途中にアドレス境界を作る場合

禁止構成
  • ルーティングプロトコルはRIP-1。
  • ポイント−ポイント型回線の両端が異なるネットワークアドレスのインタフェースアドレスを持つ。(ポイント−ポイント型回線上にアドレス境界を作る。)
  • マスク長はサブネットマスク。(ナチュラルマスクでもなくホストマスクでもない)

問題となる事例
ナチュラルマスク経路情報の広告で次の図に示すように,経路広告側と広告情報を受け取った側のルーティングテーブルに経路情報の不一致が生じます。

図8-19 ポイント−ポイント接続のナチュラルマスク経路情報の不一致

[図データ]

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