解説書 Vol.1
イーサネットは,従来LANに用途が限定されていましたが,10ギガビットイーサネットでは,従来のイーサネットとの互換性を考慮した10GBASE-R/10GBASE-Xと,WANで広く使用されるSONET/SDHフレームを使用した10GBASE-WがIEEE802.3aeで規格化されました。
本章では,10GBASE-Wの光ファイバを使用したインタフェースについて説明します。
10GBASE-Wは,WAN用の物理層(WAN PHY)を使用することで,ペイロードのイーサネットフレームをSONET/SDHフレームでカプセリングし通信を行います。これによって,ペイロードのインタフェース速度は,9.58464Gbit/sとなります。本装置ではSONET/SDH網とのシームレスな接続が可能となります。また,物理層においてWANに近い信頼性の確保も可能となります。
- <この項の構成>
- (1) 接続インタフェース
- (2) フローコントロール
- (3) ジャンボフレーム
- (4) フレーム長とIP MTU長の設定時の注意事項
- (5) クロック
- (6) 10GBASE-W接続時の注意事項
(1) 接続インタフェース
(a) 10GBASE-W
本装置の10GBASE-Wファミリーでは10GBASE-LW,10GBASE-EWをサポートしています。インタフェース速度は10Gbit/s全二重固定です。
- 10GBASE-LW:
- 中距離間を接続するために使用します。例えば,中距離間の他事業所または支店間接続用として使用します。
- 10GBASE-EW:
- 長距離間を接続するために使用します。例えば,長距離間の他事業所または支店間接続用として使用します。
(b) 10GBASE-W接続仕様
本装置の物理仕様については,マニュアル「ハードウェア取扱説明書」を参照してください。
(c) フレームフォーマット
ペイロードのイーサネットフレームは,IEEE802.3aeで規定されたSONET/SDHフレームでカプセリングします。フレームフォーマットを次の図に示します。なお,ペイロードのインタフェース速度は,SONET/SDHフレームでカプセリングしているため,9.58464Gbit/sとなります。
図4-5 10GBASE-Wのフレームフォーマット
- SOH
セクションオーバヘッドを示します。セクションオーバヘッドのフォーマットを次の図に示します。
図4-6 セクションオーバヘッドのフレームフォーマット
- POH
パスオーバヘッドを示します。パスオーバヘッドのフォーマットを次の図に示します。パスオーバヘッドの各バイトの機能を「表4-15 フレームフォーマットの詳細情報」に示します。
図4-7 パスオーバヘッドのフレームフォーマット
- ペイロード
イーサネットフレームが入ります。イーサネットフレームについては「4.3 MACおよびLLC副層制御」のフレームフォーマットを参照してください。
(d) フレームフォーマットの詳細情報
SONET/SDHフレームは,IEEE802.3aeで規定された情報が設定されています。SONET/SDH装置との接続の際は,フレームフォーマットの詳細情報を確認の上設定してください。
表4-15 フレームフォーマットの詳細情報
項目 バイト名称 IEEE802.3ae規格 本装置 仕様 デフォルト値 パスシグナルラベル 送信値 C2 1A 00〜FF 1A P-PLM障害検出 検出する 検出する − パスステータス P-ERDI転送(3bitモード) G1 3bitモード 1 or 3bitモード 3bitモード P-RDI転送(1bitモード) セクショントレース 送信メッセージトレースモード J0,Z0 16オクテット 1オクテット or 16オクテット or C1バイト 16オクテット 1オクテット(16進数) J0 規定なし 00〜FF J0:
890000000000
000000000000
0000000
Z0:CCZ0 CC 16オクテット(16進数) J0 890000000000
000000000000
00000000890000000000
000000000000
0000000Z0 CC CC C1バイト(16進数) J0 規定なし 01 Z0 02,03・・・C0※ 受信メッセージトレースモード J0 16オクテット 1オクテット or 16オクテット or C1バイト 16オクテット パストレース 送信メッセージトレースモード J1 16オクテット 1オクテット or 16オクテット 16オクテット 1オクテット(16進数) 規定なし 00〜FF 890000000000
000000000000
0000000016オクテット(16進数) 890000000000
000000000000
00000000890000000000
000000000000
00000000受信メッセージトレースモード 16オクテット 1オクテット or 16オクテット 16オクテット H1ポインタ内のSSビット(2進数) H1 10 00 or 10 10 (凡例) −:該当なし
注※ Z0バイトにそれぞれ02Hから01Hずつ加算し,C0Hまでの値が入ります。
(2) フローコントロール
フローコントロールは,装置内の受信バッファ枯渇でフレームを廃棄しないように,相手装置にフレームの送信をポーズパケットによって,一時的に停止指示する機能です。自装置がポーズパケット受信時は,送信規制を行います。
本装置では,受信バッファの使用状況を監視し,相手装置の送信規制を行う場合,ポーズパケットを送信します。本装置がポーズパケット受信時は,送信規制を行います。フローコントロールのコンフィグレーションは,送信と受信とでそれぞれ設定でき,有効または無効モードを選択できます。本装置と相手装置の設定を送信と受信が一致するように合わせてください。例えば,本装置のポーズパケット送信がenableに設定した場合,相手装置のポーズパケット受信はenableと設定してください。
本装置と相手装置の設定内容と実行動作を「表4-16 フローコントロールの送信動作」および「表4-17 フローコントロールの受信動作」の表にそれぞれ示します。
表4-16 フローコントロールの送信動作
本装置のポーズ
パケット送信相手装置の
ポーズパケット受信フローコントロール動作 enable enable 相手装置が送信規制を行う disable disable 相手装置が送信規制を行わない (凡例) enable:有効 disable:無効
表4-17 フローコントロールの受信動作
本装置のポーズ
パケット受信相手装置の
ポーズパケット送信フローコントロール動作 enable enable 本装置が送信規制を行う disable disable 本装置が送信規制を行わない (凡例) enable:有効 disable:無効
(3) ジャンボフレーム
ジャンボフレームは,MACヘッダのDA〜データが1518オクテットを超えるフレームを中継するための機能です。コンフィグレーションコマンドIP情報のmtuパラメータを合わせて変更することで,IPパケットのフラグメント化するサイズを大きくすることも可能となります。
本装置では,Ethernet V2形式フレームだけサポートします。802.3形式フレームはサポートしていません。Tag付フレームでTPIDが0x8100の場合は設定したフレーム長より4加算した値まで受信します。フレームについては「4.3 MACおよびLLC副層制御」のフレームフォーマットを参照してください。Tag付きフレームについては「4.4 VLAN-Tag」のTag付フレームのフォーマットを参照してください。ジャンボフレームのサポート機能を次の表に示します。
表4-18 ジャンボフレームサポート機能
項目 フレーム形式 内容 EthernetV2※ IEEE802.3※ 送信フレーム長
(オクテット)Tagなし 1519〜9596 × MACヘッダのDA〜データの長さ。FCSは含みません。 Tag付き
(TPID=0x8100以外)Tag付き
(TPID=0x8100)受信フレーム長
(オクテット)Tagなし 1519〜9596 × MACヘッダのDA〜データの長さ。FCSは含みません。 Tag付き
(TPID=0x8100以外)Tag付き
(TPID=0x8100)1523〜9600 受信機能 ○ × IEEE802.3フレームは,LENGTHフィールド値が0x05DD(1501オクテット)以上の場合に廃棄します。 送信機能 ○ × IEEE802.3フレームは送信しません。 (凡例) ○:サポート ×:未サポート
注※ 「4.3 MACおよびLLC副層制御」のフレームフォーマットを参照してください。
(4) フレーム長とIP MTU長の設定時の注意事項
フレーム長およびIP MTU長の対象範囲は次の図のようになります。フレーム長およびIP MTU長を相手装置と合わせてください。
コンフィグレーションコマンドIP情報のmtuパラメータを設定せずに,Line情報のjumbo_frameサブコマンドまたはイーサネットジャンボフレーム情報を変更する場合,mtuパラメータはjumbo_frameサブコマンドに合わせ,Tagの有無に関わらず18オクテット減算された値となります。このためIP MTU長を相手装置と合わせる場合は,mtuパラメータを設定してください。
図4-8 フレーム長およびIP MTU長の設定
(5) クロック
本装置では,独立同期および従属同期をサポートしています。
独立同期はWDM(Wavelength Division Multiplexing)装置および,ルータまたはスイッチと接続する場合に指定します。
従属同期は網同期で接続する場合に指定します。なお,従属同期での接続は以下の入力周波数精度の装置としてください。
- 9.95328Gbit/s±20ppm以下(Sonet Minimum Clock)
本装置のデフォルト値は独立同期です。IEEE802.3aeに準拠しています。
(6) 10GBASE-W接続時の注意事項
- 10GBASE-Wの半二重およびオートネゴシエーションはIEEE802.3ae規格上なく,全二重固定接続だけとなります。
- ループコネクタを接続する場合はクロックを独立同期にしてください。なお,回線テストを実行する場合は,独立同期に変更しなくても実行できます。
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