解説書 Vol.2
仮想ルータは自身の物理的なMACアドレスとは別に,仮想ルータ用のMACアドレスを持ちます。仮想ルータのMACアドレスは,00-00-5E-00-01-{仮想ルータのID}に決められており,仮想ルータのIDから自動的に生成されます。マスタ状態のルータは仮想MACアドレス宛てのイーサネットフレームを受信してパケットをフォワーディングする能力を持ちますが,バックアップ状態のルータは仮想MACアドレス宛てのフレームを受信しません。VRRPは仮想ルータの状態に応じて仮想MACアドレス宛てイーサネットフレームを受信するかどうかを制御します。マスタ状態のルータは仮想MAC宛てフレームを受信すると,自ルーティングテーブルに従ってIPパケットのフォワーディング処理を行います。仮想MACアドレス宛てフレームの受信を次の図に示します。
VRRPでは仮想MACアドレス宛てフレームが切り替えの対象になります。マスタとバックアップが切り替わった後で通信を継続できるのは仮想MACアドレス宛てフレームに限定されます。「図4-1 仮想MACアドレス宛てフレームの受信」の場合,PCは仮想MACアドレスを宛先としてフレームの送信を行わなければなりません。
仮想ルータは仮想ルータのIPアドレスを持ちます。マスタ状態のルータは,仮想ルータのIPアドレスに対するARP要求パケットまたはNDP要求パケットを受信すると,常に仮想ルータのMACアドレスを使用してARP応答またはNDP応答します。仮想MACアドレスによるARP応答およびNDP応答を次の図に示します。
図4-2 仮想MACアドレスによるARP応答およびNDP応答
仮想ルータをデフォルトルータとして使用するPCなどのホストは,自ARPキャッシュテーブル内に仮想ルータのIPアドレス宛てのフレームは仮想MACアドレス宛てに送信するように学習します。このように学習されたホストは常に仮想ルータへ送信するときに仮想MACアドレスを宛先に指定してフレームの送信を行うようになるため,VRRPのマスタ/バックアップの切り替えが発生した場合でも,通信を継続できます。
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