コンフィグレーションガイド Vol.3
本装置でIPv6マルチキャストパケットを中継する場合には次の点に注意してください。
- <この項の構成>
- (1) IPv6 PIM-SMおよびIPv6 PIM-SSM共通
- (2) IPv6 PIM-SM
- (3) IPv6 PIM-SSM
(1) IPv6 PIM-SMおよびIPv6 PIM-SSM共通
(a) ルーティングプログラムの再起動に伴う中継断
本装置は,restart ipv6-multicastコマンド実行によるIPv6マルチキャストルーティングプログラムの再起動を行う場合は,IPv6マルチキャスト経路情報を再学習するまでIPv6マルチキャスト通信が停止するので注意してください。
(b) ポイント−ポイント型の回線
ユニキャストのスタティック経路を設定したポイント−ポイント型の回線を使用して,IPv6マルチキャスト通信を行う場合は,接続先アドレスを明示的に指定(ゲートウェイ指定)してください。
(c) タイミングによるパケット追い越し
本装置で送信者からのマルチキャストデータと受信者側からのPIM-Joinメッセージを同時に受信した場合,タイミングによっては一部のパケットで追い越しが発生し,パケットの順序が入れ替わる場合があります。
(2) IPv6 PIM-SM
IPv6でPIM-SMを使用する場合は次の点に注意してください。
(a) ソフトウェア中継処理時のパケットロス
本装置は,最初のIPv6マルチキャストパケット受信でIPv6マルチキャスト通信を行うためのIPv6マルチキャスト中継エントリをハードウェアへ設定します。エントリを作成するまでの間ソフトウェアでIPv6マルチキャストパケットを中継するため,一時的にパケットをロスする場合があります。
(b) ハードウェア中継切り替え時のパケット追い越し
本装置ではハードウェアへのIPv6マルチキャスト中継エントリの設定が完了すると,それまでのソフトウェアによるIPv6マルチキャストパケットの中継処理がハードウェア中継へと切り替わります。この時に一部のパケットで追い越しが発生し,パケットの順序が入れ替わる場合があります。
(c) パス切り替え時の二重中継またはパケットロス
本装置は,ランデブーポイント経由でのIPv6マルチキャストパケット中継時およびランデブーポイント経由から最短パス経由への切り替え時,一時的に二重中継またはパケットロスが発生する場合があります。
ランデブーポイント経由のIPv6マルチキャストパケットの中継動作およびランデブーポイント経由から最短パス経由切り替え動作は「31.4.2 IPv6 PIM-SM」を参照してください。
(d) ループバックインタフェースへのアドレス設定必須
本装置をfirst-hop-routerとして使用する場合,ランデブーポイントへの通信にはループバックインタフェースに設定したIPv6アドレスが用いられます。そのためIPv6 PIM-SMでは,IPv4 PIM-SMとは異なりランデブーポイントやBSRでない場合にもループバックインタフェースへのアドレス設定が必須です。
(e) ループバックインタフェースに設定したアドレスへの到達可能性
本装置をランデブーポイントおよびブートストラップルータとして使用する場合,ループバックインタフェースに設定したIPv6アドレスがランデブーポイントとブートストラップルータのアドレスとなります。このアドレスは,IPv6マルチキャスト通信する全装置でユニキャストでのルート認識および通信ができる必要があります。
(f) 静的ランデブーポイント
静的ランデブーポイントは,BSRを使用しないでランデブーポイントを指定する機能です。静的ランデブーポイントはコンフィグレーションで設定します。
静的ランデブーポイントはBSRからBootstrapメッセージによって広告されたランデブーポイント候補との共存もできます。共存時,静的ランデブーポイントはBSRからBootstrapメッセージによって広告されたランデブーポイント候補よりも優先されます。
なお,ランデブーポイント候補のルータは,ランデブーポイントルータアドレスが自アドレスであることを認識することでランデブーポイントとして動作します。したがって,BSRを使用しないで静的ランデブーポイントを使ってネットワークを設計する場合は,ランデブーポイント候補のルータでも静的ランデブーポイントの設定が必要です。
また,静的ランデブーポイントを使用する場合,同一ネットワーク上の全ルータに対して同じ設定をする必要があります。
(3) IPv6 PIM-SSM
(a) 系切替時の通信無停止対応機能使用時の注意事項
- 系切替後のIPv6マルチキャスト中継エントリの再学習時間内の注意事項を次に示します。各注意事項は再学習時間終了後に解消されます。
- 再学習時間内にマルチキャストデータの二重中継が発生した場合,その解消に時間が掛かることがあります。
- 再学習時間内に中継中のIPv6マルチキャスト中継エントリのインタフェースに障害が発生し,その後回復した場合,再学習に関係なく中継を再開することがあります。
- 再学習時間内に,中継中のIPv6マルチキャスト中継エントリのインタフェースをコンフィグレーションまたはプロトコル処理によって削除した場合,中継が停止しないことがあります。
- 再学習時間内に中継中のIPv6マルチキャスト中継エントリの受信インタフェースが変更された場合,パケットロスが発生することがあります。
- 再学習時間内はPIM-SSMの動作範囲をコンフィグレーションで変更しないでください。再学習時間内にPIM-SSMの動作範囲をコンフィグレーションで変更して,マルチキャスト中継エントリがPIM-SMからPIM-SSMの経路,またはPIM-SSMからPIM-SMの経路になった場合,マルチキャスト中継の動作は保証できません。
- 系切替によって隣接ルータの次に示すどちらかの情報がタイムアウトし,IPv6マルチキャスト中継が中断する場合があります。
系切替時の通信無停止対応機能を使用する場合は,コンフィグレーションのipv6 pim hello-interval,ipv6 pim join-prune-interval,ipv6 mld query-intervalの値を次の表に示す推奨値か算出式で求めた値に設定してください。ipv6 pim join-prune-intervalの値は,last-hop-routerとlast-hop-router以外の両方の役割を持つ場合は大きい値を設定してください。
- 隣接ルータ情報
- IPv6マルチキャスト中継エントリ下流インタフェース
表31-17 ipv6 pim hello-interval,ipv6 pim join-prune-interval,ipv6 mld query-intervalの推奨値と算出式
設定項目 推奨値(秒)(デフォルト) 算出式(秒) ipv6 pim hello-interval 30(30) (2×a)/1.5 ipv6 pim join-prune-interval
(last-hop-routerの場合)120(60) (2×a + 2×d + e)/2.5 ipv6 pim join-prune-interval
(last-hop-router以外の場合)180(60) (2×a + b + c)/2.5 ipv6 mld query-interval 125(125) −
- (凡例) −:該当しない
- a:系切替時間
- 系切替後,運用コマンドshow ipv6 pim interfaceまたはshow ipv6 mld interfaceで全マルチキャストインタフェースが表示されるまでの時間を指定します。CPUが高負荷になる場合を考慮し,20秒以上で計算してください。
- b:隣接ルータからのPIM-Helloメッセージ最大受信周期
- c:隣接ルータからのPIM-Joinメッセージ最大受信周期
- d:Multicast Listener Query送信周期
- e:Multicast Listener Report最大応答待ち時間
- 10秒で計算してください。本装置がQuerierの場合10秒(固定)で動作します。
- 通信無停止対応機能を使用する場合,次の条件で使用してください。
- 隣接ルータからのPIM-Helloメッセージ受信周期:150秒以内
- 隣接ルータからのPIM-Joinメッセージ受信周期:260秒以内
- Multicast Listener Query送信周期:125秒以内
- Multicast Listener Report最大応答遅延時間:10秒以内
All Rights Reserved, Copyright(C), 2006, 2018, ALAXALA Networks, Corp.