コンフィグレーションガイド Vol.3
IPv6マルチキャストはサーバ(送信者)から各グループ(受信者)にデータを配信する1(送信者):N(受信者)の片方向通信に適します。IPv6マルチキャストの推奨ネットワーク構成,注意事項を次に示します。
- <この項の構成>
- (1) IPv6 PIM-SMおよびIPv6 PIM-SSM共通
- (2) IPv6 PIM-SM
- (3) IPv6 PIM-SSM
- (4) PIM-SM VRFゲートウェイ【OS-L3CA】
(1) IPv6 PIM-SMおよびIPv6 PIM-SSM共通
(a) 適用構成
IPv6 PIM-SMまたはIPv6 PIM-SSM(以下,PIMと略す)では送信者から受信者に至る経路上のすべてのルータでPIMの設定が必要となります。そのため,途中でPIMを設定していないルータがあると,マルチキャストパケットの中継が行えません。隣接ルータがPIMを設定していない場合には,コンフィグレーションコマンドipv6 pim directを設定するとパケットの中継ができるようになります。
「図30-27 コンフィグレーションコマンドipv6 pim directを設定する場合の適応例」はコンフィグレーションコマンドipv6 pim directを設定する場合の適用例です。ルータAと本装置は異なるマルチキャストドメインに属しているため,これらの間にはPIMが設定されていません。一方,ドメインXにいる送信元からドメインYにいる受信者にマルチキャストデータを送信したいという要求があります。ルータAと本装置の間でPIMが動作していないので,送信者Sから送られたマルチキャストデータは本装置にて廃棄されます。ここで本装置のインタフェースαにコンフィグレーションコマンドipv6 pim directで送信者Sを設定すると,ドメインY内へのマルチキャストパケットの転送が行われるようになります。
図30-27 コンフィグレーションコマンドipv6 pim directを設定する場合の適応例
コンフィグレーションコマンドipv6 pim directの設定は上図のような構成に適用されますので,これ以外の構成ではマルチキャストパケットを中継できなくなるおそれがあります。
(b) 注意が必要な構成
次に示す構成でIPv6 PIM-SMまたはIPv6 PIM-SSMを使用する場合,注意が必要です。
- 次の図に示す構成のようにホストと直接接続するルータが同一ネットワーク上に複数存在するインタフェースには,必ずPIM-SMを動作させてください。
同一ネットワーク上に複数のルータが存在するインタフェースにPIM-SMを動作させずにMLDだけを動作させた場合は,マルチキャストデータが二重中継される場合があります。
図30-28 注意が必要な構成(複数ルータとホストの接続)
- 次の図に示す構成のように本装置Cが本装置Aと本装置BにVRRPを設定した仮想インタフェースをゲートウェイとするスタティックルートを設定した環境では,PIMプロトコルが上流ルータを検出できず,マルチキャスト通信ができません(PIM-SSMも同じです)。
この構成でマルチキャスト通信する場合は,本装置CにランデブーポイントアドレスとBSRアドレスとマルチキャストデータ送信元アドレスへのゲートウェイアドレスを本装置Aまたは本装置Bの実アドレスとするスタティックルートを設定する必要があります。
図30-29 注意が必要な構成(VRRPを設定した場合)
- 異なるドメイン上のルータとPIM-SM/PIM-SSMプロトコルを使用しないでマルチキャスト中継をする場合,そのルータとのインタフェースをPIM非接続インタフェースと呼びます。
次の図に示す構成のように異なるドメイン上のサーバSから送信されるマルチキャストパケットをPIM非接続インタフェースを経由してマルチキャスト中継する場合,次の設定が必要です。
- 本装置の下流ルータ(ルータ2)に,サーバSへのユニキャスト経路を設定する。
- 本装置のPIM非接続インタフェースに,コンフィグレーションコマンドipv6 pim directを設定する。
図30-30 注意が必要な構成(PIM非接続インタフェース経由の中継)
- 次の図に示す構成のように,上流となるVPN1(グローバルネットワーク)で異なるドメイン上のサーバSから送信されるマルチキャストパケットをPIM非接続インタフェースを経由してVPN2(VRF20)にマルチキャスト中継する場合,次の設定が必要です。【OS-L3CA】
- 本装置では,上流となるVRFのPIM非接続インタフェースにコンフィグレーションコマンドipv6 pim directを設定する。また,IPv6マルチキャストエクストラネットの設定とともに,本装置の中継先VRFに,サーバSへのユニキャスト経路を設定する。
- 中継先VPN上の下流ルータ(ルータ2)に,サーバSへのユニキャスト経路を設定する。
図30-31 注意が必要な構成(エクストラネットでのPIM非接続インタフェース経由の中継)
(2) IPv6 PIM-SM
(a) 推奨構成
IPv6 PIM-SMによるネットワーク構成に当たっては,ツリー型ネットワーク構成および冗長経路が存在するネットワーク構成をお勧めします。ただし,ランデブーポイントの配置には十分注意してください。IPv6 PIM-SMのモード切り替えによるIPv6マルチキャスト送信パス変化処理の負荷を軽減するため,ランデブーポイントは送信者の直近に置くことをお勧めします。
IPv6 PIM-SM推奨ネットワーク構成を次の図に示します。
図30-32 IPv6 PIM-SM推奨ネットワーク構成
(b) 不適応な構成
次に示す構成でIPv6 PIM-SMは使用しないでください。
- 送信者とランデブーポイントの間に受信者が存在する構成
次に示す構成でサーバからグループ1のIPv6マルチキャスト通信を行う場合,ランデブーポイント経由の中継が効率よく行えません。
図30-33 不適応な構成(送信者とランデブーポイントの間に受信者が存在する場合)
(3) IPv6 PIM-SSM
(a) 注意が必要な構成
次に示す構成でIPv6 PIM-SSMを使用する場合注意が必要です。
- IPv6マルチキャストグループ(受信者)と同一回線上に複数のIPv6 PIM-SSMルータが動作する構成
次に示す構成で,MLDv1またはMLDv2(EXCLUDEモード)でPIM-SSMを動作させる場合は,同一回線上のすべてのルータにコンフィグレーションコマンドipv6 pim ssmおよびipv6 mld ssm-map staticを設定してください。
図30-34 注意が必要な構成(複数ルータとホストの接続)
(b) 端末側に複数のアドレスを設定したときの注意事項
SSM通信時,データ送信を行う端末に複数のIPv6アドレスを付与して運用する場合,送信されるデータの送信元アドレスが本装置にコンフィグレーションコマンドipv6 mld ssm-map staticで設定した送信元アドレス情報と一致するようにしてください。特に,RAなどのアドレス自動設定機能を使用した場合は,端末側が自動設定されたアドレスを使用して通信を行う場合があります。
(4) PIM-SM VRFゲートウェイ【OS-L3CA】
(a) 注意が必要な構成
次に示す構成は注意が必要です。
- PIM-SM VRFゲートウェイを使用したIPv6マルチキャストエクストラネットで,2台以上のVRF境界ルータで冗長構成を構築する場合,VRF境界ルータのどれかをランデブーポイントに設定してください。
VRF境界ルータ以外をランデブーポイントにした場合,最短パス配送ツリーが形成されるまでの間,IPv6マルチキャストパケットが境界ルータの数だけ多重中継になります。
PIM-SM VRFゲートウェイによって,カプセル化されたパケットが二重中継となる動作を次の図に示します。
図30-35 注意が必要な構成(2台以上のVRF境界ルータで冗長構成を構築する場合)
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