コンフィグレーションガイド Vol.3

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14.4.5 VRFでのIPv4マルチキャスト【OS-L3CA】

<この項の構成>
(1) IPv4マルチキャストVRF
(2) IPv4マルチキャストエクストラネット
(3) PIM-SM VRFゲートウェイ
(4) IPv4マルチキャストエクストラネット使用時の注意事項

(1) IPv4マルチキャストVRF

本装置を複数のVPNに接続して,それぞれのVPN上でIPv4マルチキャストを使用できます。VPNごとにVRFを設定して,それぞれのVRFでIPv4マルチキャストを動作させます。VRF上のIPv4マルチキャストでは,ランデブーポイント,BSR,各種タイマ,SSMアドレス範囲などにそれぞれ異なる設定ができます。

本装置を四つのVPNに接続した場合の構成例および本装置での設定情報を次に示します。

図14-21 VRFでのIPv4マルチキャスト

[図データ]

表14-14 本装置での設定情報

VPN 運用
プロトコル
ループバック
アドレス
ランデブーポイント
()内はランデブーポイントアドレス
SSMアドレス
1 PIM-SM 1.1.1.1 本装置(1.1.1.1) 未使用
2 PIM-SM/
PIM-SSM
2.2.2.2 本装置(2.2.2.2) 232.0.0.0/8
3 PIM-SSM 2.2.2.2 なし 232.10.0.0/16
4 PIM-SM 3.3.3.3 ルータ4(1.1.1.1) 未使用

(2) IPv4マルチキャストエクストラネット

IPv4マルチキャストエクストラネットを使用すると,VRF間でIPv4マルチキャスト中継ができます。また,IPv4マルチキャスト経路フィルタリングを使用すると,エクストラネットで使用するグループアドレスの範囲と,下流からの中継要求を許可するVRFを限定できます。

なお,last-hop-routerから最短パスを確立するため,ユニキャストエクストラネットによる送信者へのユニキャスト経路が存在する必要があります。

IPv4マルチキャストエクストラネットの動作概要を次の図に示します。

図14-22 IPv4マルチキャストエクストラネットの動作概要

[図データ]

(3) PIM-SM VRFゲートウェイ

PIM-SMでマルチキャスト通信をするには,last-hop-routerにIPv4マルチキャストパケットを中継する必要があります。PIM-SMをエクストラネットで使用する場合でも,各VRFにあるすべてのlast-hop-routerにIPv4マルチキャストパケットを中継する必要があります。

本装置では,各VRFのランデブーポイントにIPv4マルチキャストパケットを転送するために,PIM-SM VRFゲートウェイを使用します。

送信者(マルチキャスト配信サーバ)が存在するVRFにPIM-SM VRFゲートウェイを設定すると,指定グループに対して該当VPNでのlast-hop-routerとして動作し,ランデブーポイントに中継要求をします。ランデブーポイントからIPv4マルチキャストパケットを受信すると,そのパケットを中継対象となるVRFに転送します。

転送先のVPNではfirst-hop-routerとして動作し,各VRFのランデブーポイントへIPv4マルチキャストパケットをカプセル化(Registerパケット)して送信します。Registerパケットを受信したランデブーポイントは通常のPIM-SMの動作に従って,デカプセル化してIPv4マルチキャストパケットをlast-hop-routerに転送します。そのあと,last-hop-routerから送信元への最短パス配送ツリーを形成します。このとき,エクストラネットのIPv4マルチキャストパケットもハードウェア中継となります。

このようにPIM-SM VRFゲートウェイを使用すると,本装置以外の設定を変更しないでPIM-SMによるエクストラネットができます。PIM-SM VRFゲートウェイの動作概要を次の図に示します。

図14-23 PIM-SM VRFゲートウェイの動作概要

[図データ]

(4) IPv4マルチキャストエクストラネット使用時の注意事項

(a) 装置内での2段以上のVRF中継

IPv4マルチキャストエクストラネットでは装置内で2段以上のVRF中継を禁止しています。

あるVRFのIPv4マルチキャスト経路情報で,上流インタフェースと下流インタフェースの一部にほかのVRFを設定できません。上流インタフェースが異なるVRFのマルチキャスト経路情報は,VRFからの中継要求を無視します。また,下流インタフェースにVRFを持つマルチキャスト経路情報の上流インタフェースが異なるVRFに切り替わった場合,該当マルチキャスト経路情報からVRFの下流インタフェースを切り離します。

次の図に示すようにVPN 3からVPN 1へのユニキャスト経路がVPN 2を経由して形成されていた場合,VPN 1上のサーバ1が送信するIPv4マルチキャストパケットをVPN 2上のホスト1は受信できますが,VPN 3のホスト2は受信できません。

図14-24 IPv4マルチキャストエクストラネット使用時に装置内でVRF中継を禁止している例

[図データ]

(b) PIM-SM/PIM-SSM相互接続

IPv4マルチキャストエクストラネットを使用してVRF間でマルチキャスト中継をする場合は,使用するグループアドレスのプロトコルを同じにしてください(IPv4マルチキャストVRFでは,VRFごとにPIM-SSMで使用するグループアドレスを指定できます)。

プロトコルが異なる場合,IPv4マルチキャストエクストラネットによるマルチキャスト中継はできません。VRF間のプロトコル不一致で中継できない例および本装置の設定情報を次に示します。

図14-25 IPv4マルチキャストエクストラネット使用時にVRF間プロトコル不一致で中継できない例

[図データ]

表14-15 本装置の設定情報

VPN 運用プロトコル ランデブーポイント
()内はランデブーポイントアドレス
SSMアドレス
1 PIM-SM 本装置(1.1.1.1) 未使用
2 PIM-SSM なし 232.0.0.0/8

G1:232.10.10.10

S1:10.10.10.10


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