コンフィグレーションガイド Vol.3

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10.1.6 経路選択の基準

OSPFでは,LSAの生成や学習によってLSAが更新されるたびに,SPF計算を実行します。SPF計算では,SPFアルゴリズムに基づいて経路選択を行います。宛先への到達性がなくなった場合,経路を削除します。

エリアボーダルータでは,所属しているすべてのエリアについて,別個にSPFアルゴリズムに基づいて経路を選択します。

OSPFでの経路選択の判断基準を,優先順位が高い順に次に示します。なお,この優先順位は変更できません。

  1. 経路情報の種類
    OSPFのAS内経路(エリア内経路,またはエリア間経路)を,AS外経路より優先します。
  2. 学習元ドメイン
    複数ドメインに経路が存在する場合,ディスタンス値が最小である経路を選択します。ディスタンス値が等しい場合,OSPFドメイン番号が最小の経路を選択します。
  3. 経路の宛先タイプ
    • AS内経路
      エリア内経路を,エリア間経路より優先します。
    • AS外経路
      エリア内のAS境界ルータが広告している経路を,別エリアのAS境界ルータが広告している経路より優先します。
  4. AS外経路タイプ
    メトリックタイプがType1のAS外経路を,Type2のAS外経路より優先します。
  5. AS外経路で経由するエリア
    エリアボーダであるルータでは,宛先のAS境界ルータが複数のエリアに接続している場合,AS境界ルータまでのコスト値が最も小さいエリアを選択します。コスト値が等しい場合,エリアIDの最も大きいエリアを選択します。
  6. コスト
    • AS内経路
      宛先までのコスト値が最も小さい経路を優先します。
    • Type1のAS外経路
      AS外経路情報のメトリック値とAS境界ルータまでのコスト値の合計が最も小さい経路を優先します。
    • Type2のAS外経路
      AS外経路情報のメトリック値が最も小さい経路を選択します。メトリック値が等しい場合,AS境界ルータまでのコスト値が最も小さい経路を選択します。
  7. ネクストホップアドレス
    ネクストホップアドレスが最も小さいアドレスを選択します。
<この項の構成>
(1) ディスタンス値
(2) AS外経路のネクストホップ選択
(3) NSSA内のAS外経路のパケット転送先
(4) NSSAについての注意事項

(1) ディスタンス値

本装置は,同一宛先への経路が各プロトコルによって複数存在する場合,それぞれの経路のディスタンス値が比較され優先度の最も高い経路が有効になります。

OSPFでは,ディスタンス値のデフォルト値をドメインごとに設定できます。このディスタンス値は,AS外経路,エリア内経路,エリア間経路で,それぞれ別の値を設定できます。ディスタンス値は,distanceコマンドで変更できます。

(2) AS外経路のネクストホップ選択

AS外経路の転送先(ネクストホップアドレス)は,OSPFの隣接ルータのアドレス,またはLSAで広告しているフォワーディングアドレスのどちらかになります。詳細を次に示します。

(a) AS境界ルータを目標とする場合

AS境界ルータを目標とする場合のシステム構成例を次の図に示します。この例では,ルータ1がルータ3より学習した経路をAS外経路として導入するに当たって,転送先をルータ1とします。ルータ1までの経路には,AS内経路選択で選択した経路を使用します。

図10-4 システム構成例(AS境界ルータを目標とする場合)

[図データ]

(b) フォワーディングアドレスを目標とする場合

フォワーディングアドレスを目標とする場合のシステム構成例を次の図に示します。この例では,ルータ1(AS境界ルータ)がルータ3より学習した経路をAS外経路として導入する当たって,転送先をルータ3のネットワーク1へのインタフェースのアドレス(フォワーディングアドレス)とします。ルータ4からネットワーク1に転送する場合,ルータ2経由の経路の方がコストが少ない場合は,導入した外部経路宛てのパケットの転送にルータ2経由の経路を選択します。

図10-5 システム構成例(フォワーディングアドレスを目標とする場合)

[図データ]

(3) NSSA内のAS外経路のパケット転送先

経路情報をAS外経路として導入する場合,必ずAS外経路に転送先アドレスを記します。経路情報の導入元がブロードキャスト型のOSPFインタフェースである場合,転送先は導入元アドレスになります。そのほかの条件では,転送先はNSSA内の任意のインタフェースアドレスになります。任意のインタフェースを目標とする場合のシステム構成例を次の図に示します。この例では,ルータ1がルータ2から学習した経路をAS外経路として導入するときに,転送先をNSSA内の任意のインタフェースにします。ルータ4はAS外経路に記された転送先への経路を,エリア間経路選択によって選択します。

図10-6 システム構成例(任意のインタフェースを目標とする場合)

[図データ]

(4) NSSAについての注意事項

AS外経路の転送先アドレスは,NSSA内のOSPFが動作しているインタフェースの中から選択します。インタフェースがダウンした場合は変更します。転送先アドレスの変更後,新しいAS外経路を広告するまでの間,経路がいったん削除されることがあります。転送先を固定するため,経路情報の導入元であるブロードキャスト型インタフェースを,OSPFインタフェースとして設定することをお勧めします。

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