26.1.1 概要
PTP(Precision Time Protocol)は,時刻同期をするプロトコルです。イーサネットでの利用に特化し,NTP(最大数ミリ秒)よりも高精度(最大数百ナノ秒)で同期させることを目的としています。
PTPでは,マスタ装置とスレーブ装置の間でパケットが中継される時間(以降,伝送遅延時間)を測定し,送信されたマスタ装置の時刻情報と伝送遅延時間によって,時刻を同期します。PTPでの各装置の役割について次の表に示します。
PTP装置の種別 |
説明 |
---|---|
マスタ装置 |
基準時刻を配信する装置 |
スレーブ装置 |
マスタ装置から受信した基準時刻に同期する装置 |
Transparent Clock(TC) |
伝送遅延時間を計算するためのPTPメッセージを中継する装置 |
Management Node(MN) |
リモート制御装置 |
本装置はTCとして動作します。マスタ装置,スレーブ装置,およびMNは未サポートです。
PTP装置は,PTP専用VLANによって時刻を同期します。PTPの適用例を次の図に示します。
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- 〈この項の構成〉
(1) 伝送遅延の計測方法
PTPの伝送遅延時間の計測方法には,E2E(end-to-end)とP2P(peer-to-peer)があります。E2EとP2Pの特長を次の表に示します。
項目 |
E2E |
P2P |
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伝送遅延時間計測単位 |
マスタ装置とスレーブ装置間で伝送遅延時間を計測 |
マスタ装置・スレーブ装置・TCの各装置で隣接装置との伝送遅延時間を計測 |
PTP未サポート装置との接続可否 |
接続できる |
接続できない |
中継段数による同期精度の劣化 |
劣化が大きい |
劣化が小さい |
スレーブ装置数によるマスタ装置への処理負荷 |
影響が大きい |
影響が小さい |
(2) 送信時刻の通知方法
PTPでは,伝送遅延時間を計測するために,PTPメッセージを送信した時刻(送信時刻)を使用します。送信時刻の通知方法には,One-step clock,Two-step clockの2種類があります。
送信時刻の通知方法 |
概要 |
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One-step clock |
一つのメッセージによって送信時刻を通知する方法です。 |
Two-step clock |
二つのメッセージによって送信時刻を通知する方法です。 |