コンフィグレーションガイド Vol.1


30.1.2 動作仕様

Ring Protocolとスパニングツリーを併用するには,二つの機能が共存している任意の2装置間を仮想的な回線で接続する必要があります。この仮想的な回線を仮想リンクと呼びます。仮想リンクは,リングネットワーク上の2装置間に構築されます。仮想リンクの構築には,仮想リンクを識別するための仮想リンクIDと,仮想リンク間で制御フレームの送受信を行うための仮想リンクVLANが必要です。

Ring Protocolとスパニングツリーを併用するノードは,自装置の仮想リンクIDと同じ仮想リンクIDを持つ装置同士でスパニングツリートポロジーを構成します。同じ仮想リンクIDを持つ装置グループを拠点と呼び,各拠点では独立したスパニングツリートポロジーを構成します。

仮想リンクの概要を次の図に示します。

図30‒3 仮想リンクの概要

[図データ]

〈この項の構成〉

(1) 仮想リンクVLAN

仮想リンク間での制御フレームの送受信には,仮想リンクVLANを使用します。この仮想リンクVLANは,リングポートのデータ転送用VLANとして管理しているVLANのうち一つを使用します。また,仮想リンクVLANは,複数の拠点で同一のVLAN IDを使用できます。

(2) Ring Protocolの制御VLANの扱い

Ring Protocolの制御VLANは,スパニングツリーの対象外となります。

そのため,PVST+では当該VLANのツリーを構築しません。また,シングルスパニングツリーおよびマルチプルスパニングツリーの転送状態も適用されません。

(3) リングポートの状態とコンフィグレーションの設定値

リングポートのデータ転送用VLANの転送状態は,Ring Protocolで決定されます。

例えば,スパニングツリートポロジーでブロッキングと判断しても,Ring Protocolでフォワーディングと判断すれば,そのポートはフォワーディングとなります。したがって,スパニングツリーでリングポートがブロッキングとなるトポロジーを構築すると,ループとなるおそれがあります。このため,リングポートが常にフォワーディングとなるよう,Ring Protocolと共存したスパニングツリーでは,本装置がルートブリッジまたは2番目の優先度になるようにブリッジ優先度の初期値を自動的に高くして動作します。なお,コンフィグレーションで値を設定している場合は,設定した値で動作します。

ブリッジ優先度の設定値を次の表に示します。

表30‒1 ブリッジ優先度の設定値

設定項目

関連するコンフィグレーション

初期値

ブリッジ優先度

spanning-tree single priority

spanning-tree vlan priority

spanning-tree mst root priority

0

また,仮想リンクのポートは固定値で動作し,コンフィグレーションによる設定値は適用されません。

仮想リンクのポートの設定値を次の表に示します。

表30‒2 仮想リンクポートの設定値

設定項目

関連するコンフィグレーション

初期値(固定)

リンクタイプ

spanning-tree link-type

point-to-point

ポート優先度

spanning-tree port-priority

spanning-tree single port-priority

spanning-tree vlan port-priority

spanning-tree mst port-priority

0

パスコスト

spanning-tree cost

spanning-tree single cost

spanning-tree vlan cost

spanning-tree mst cost

1

(4) リングポートでのスパニングツリー機能について

リングポートでは次に示すスパニングツリー機能は動作しません。

(5) スパニングツリートポロジー変更時のMACアドレステーブルクリア

スパニングツリーでのトポロジー変更時に,シングルリングまたはマルチリングネットワーク全体に対して,MACアドレステーブルエントリのクリアを促すフラッシュ制御フレームを送信します。これを受信したリングネットワーク内の各装置は,Ring Protocolが動作中のリングポートに対する,MACアドレステーブルエントリをクリアします。なお,トポロジー変更が発生した拠点の装置は,スパニングツリープロトコルでMACアドレステーブルエントリをクリアします。

(6) リングポート以外のポートの一時的なブロッキングについて

Ring Protocolとスパニングツリーを併用する装置で,次に示すイベントが発生した場合,リングポート以外のスパニングツリーが動作しているポートを一時的にブロッキング状態にします。

スパニングツリーが仮想リンク経由の制御フレームを送受信できるようになる前にアクセスネットワーク内だけでトポロジを構築した場合,それだけではループ構成とならないためどのポートもブロッキングされません。したがって,このままでは,リングネットワークとアクセスネットワークにわたるループ構成となります。このため,本機能で一時的にブロッキングしてループを防止します。本機能はPortFast機能を設定しているポートでも動作します。本機能でのブロッキングは,次のどちらかで行われます。

本機能を有効に動作させるため,次の表に示すコンフィグレーションを「設定値」の範囲内で設定してください。範囲内の値で設定しなかった場合,一時的にループが発生するおそれがあります。

表30‒3 リングポート以外のポートを一時的にブロッキング状態にするときの設定値

設定項目

関連するコンフィグレーション

設定値

Ring Protocolフラッシュ制御フレームの受信待ち保護時間

forwarding-shift-time

10秒以下

(デフォルト値10秒)

スパニングツリー制御フレーム送信間隔

spanning-tree single hello-time

spanning-tree vlan hello-time

spanning-tree mst hello-time

2秒以下

(デフォルト値2秒)