コンフィグレーションガイド Vol.3


31.4.2 IPv6 PIM-SM

IPv6 PIM-SMメッセージのサポート仕様を次の表に示します。すべてのメッセージが送信および受信をサポートしています。

表31‒8 IPv6 PIM-SMメッセージのサポート仕様

タイプ

機能

PIM-Hello

PIM近隣ルータの検出

PIM-Join/Prune

マルチキャスト配送ツリーの参加および刈り込み

PIM-Assert

Forwarderの決定

PIM-Register

マルチキャストパケットをランデブーポイント宛てにカプセル化する。

PIM-Register-stop

Registerメッセージを抑止する。

PIM-Bootstrap

BSRを決定する。またランデブーポイントの情報を配信する。

PIM-Candidate-RP-Advertisement

ランデブーポイントがBSRに自ランデブーポイント情報を通知する。

IPv6 PIM-SMの動作の流れを次に示します。

  1. 各IPv6 PIM-SMルータはMLDで学習したグループ情報をランデブーポイントに通知します。

  2. ランデブーポイントは各IPv6 PIM-SMからグループ情報の受信で各グループの存在を認識します。

  3. IPv6 PIM-SMは最初にマルチキャストパケットをその送信元ネットワークからランデブーポイント経由ですべてのグループメンバーに配送するために,送信元を頂点としたランデブーポイント経由配送ツリーを形成します。

  4. 送信元から各グループに対して最短パスで到達できるように,既存のユニキャストルーティングを使用して送信元からの最短パスを決定します(最短パス配送ツリーを形成します)。

  5. 送信元から最短パスで各グループメンバーへのマルチキャストパケット中継を行います。

PIM-SMの動作概要を次の図に示します。

図31‒6 PIM-SMの動作概要

[図データ]

〈この項の構成〉

(1) ランデブーポイントおよびブートストラップルータ(BSR)

ランデブーポイントルータおよびBSRはコンフィグレーションで設定します。本装置ではBSRはネットワーク(VPN)当たり最大16台とします。なお,IPv4 PIM-SMとIPv6 PIM-SMとで,ランデブーポイントおよびBSRを設定するルータを別にすることもできます。

BSRはランデブーポイントの情報(IPv6アドレスなど)をすべてのマルチキャストインタフェースに通知します。この通知はホップバイホップで全PIMルータリンクローカル・マルチキャストアドレス(ff02::d)宛てに行われます。ランデブーポイントルータおよびBSR以外のルータでは,ランデブーポイントルータおよびBSR方向のインタフェースにPIMを設定してください。ランデブーポイントおよびブートストラップルータ(BSR)を次の図に示します。

図31‒7 ランデブーポイントおよびブートストラップルータ(BSR)

[図データ]

BSR(PIM-SMルータC)はランデブーポイント情報をすべてのIPv6マルチキャストインタフェースに通知します。ランデブーポイント情報を受信したルータはランデブーポイントのIPv6アドレスを学習し,受信したインタフェース以外でIPv6 PIMルータが存在するすべてのインタフェースにランデブーポイント情報を通知します。

(2) ランデブーポイントに対するグループ参加情報の通知

各ルータはMLDで学習したグループ参加情報をランデブーポイントに通知します。この通知のときに使用される送信元および宛先IPv6アドレスは,それぞれ該当するルータの装置アドレスになります。ランデブーポイントはIPv6グループ情報を受信することで,IPv6グループの存在をインタフェースごとに認識します。ランデブーポイントに対するグループ参加情報の通知を次の図に示します。

図31‒8 ランデブーポイントへのグループ参加情報の通知

[図データ]

まず,各ホストはMLDでグループ1に参加します。PIM-SMルータDおよびPIM-SMルータEはグループ1情報を学習し,ランデブーポイント(PIM-SMルータC)にグループ1情報を通知します。ランデブーポイント(PIM-SMルータC)はグループ1情報を受信することによって受信したインタフェースにグループ1が存在することを学習します。

(3) IPv6マルチキャストパケット通信(カプセル化)

送信元のサーバがグループ1宛てのIPv6マルチキャストパケットを送信した場合,PIM-SMルータAはそのIPv6マルチキャストパケットをランデブーポイント(PIM-SMルータC)宛てにIPv6カプセル化(Registerパケット)して送信します。本装置の場合,この通知のときに使用される送信元および宛先IPv6アドレスは,それぞれ該当するルータの装置アドレスになります(ランデブーポイントのIPv6アドレスは「(1) ランデブーポイントおよびブートストラップルータ(BSR)」で学習済み)。

ランデブーポイント(PIM-SMルータC)はIPv6カプセル化したパケットを受信すると,デカプセル化してグループ1が存在するインタフェースにグループ1宛てのマルチキャストパケットを中継します(グループ1の存在は「(2) ランデブーポイントに対するグループ参加情報の通知」で学習済み)。PIM-SMルータDおよびPIM-SMルータEは,グループ1宛てのIPv6マルチキャストパケットを受信すると,グループ1が存在するインタフェースにIPv6マルチキャストパケットを中継します(グループ1の存在は「(2) ランデブーポイントに対するグループ参加情報の通知」のMLDで学習済み)。IPv6マルチキャストパケット通信(カプセル化)を次の図に示します。

図31‒9 IPv6マルチキャストパケット通信(カプセル化)

[図データ]

(4) IPv6マルチキャストパケット通信(デカプセル化)

ランデブーポイント(PIM-SMルータC)はIPv6カプセル化したパケットを受信すると,デカプセル化してグループ1が存在するインタフェースにグループ1宛てのIPv6マルチキャストパケットを中継します(「(3) IPv6マルチキャストパケット通信(カプセル化)」で説明)。

ランデブーポイントはこの処理のあと,既存のIPv6ユニキャストルーティング情報を基に決定された送信元のサーバへの最短経路方向にグループ1情報を通知します。この通知のときに使用される宛先アドレスは全PIMルータリンクローカル・マルチキャストアドレス(ff02::d)です。

グループ1情報を受信したPIM-SMルータBおよびPIM-SMルータAは受信したインタフェースのグループ1の存在を認識(学習)します。PIM-SMルータAは送信元サーバが送信したグループ1宛てのIPv6マルチキャストパケットをIPv6カプセル化しないで該当するインタフェースに中継します。グループ1宛てのIPv6マルチキャストパケットを受信したPIM-SMルータB,PIM-SMルータC,PIM-SMルータD,PIM-SMルータEはグループ1が存在するインタフェースに中継します。IPv6マルチキャストパケット通信(デカプセル化)を次の図に示します。

図31‒10 IPv6マルチキャストパケット通信(デカプセル化)

[図データ]

(5) 最短パスのマルチキャストパケット通信

PIM-SMルータDおよびPIM-SMルータEは,送信元サーバのグループ1宛てIPv6マルチキャストパケットを受信した場合(「(4) IPv6マルチキャストパケット通信(デカプセル化)」で説明),PIM-SMルータDおよびPIM-SMルータEは送信元サーバに対して最短のパス(既存のIPv6ユニキャストルーティング情報)の方向にグループ1情報を通知します。この通知のときに使用される宛先アドレスは全PIMルータリンクローカル・マルチキャストアドレス(ff02::d)です。

PIM-SMルータAは,PIM-SMルータDおよびPIM-SMルータEからグループ1情報を受信すると,受信したインタフェースにグループ1の存在を認識し,送信元サーバのグループ1宛てのIPv6マルチキャストパケットを受信すると該当するインタフェースに中継します。最短パスのIPv6マルチキャストパケット通信を次の図に示します。

図31‒11 最短パスのIPv6マルチキャストパケット通信

[図データ]

(6) IPv6マルチキャスト配送ツリーの刈り込み

PIM-SMルータDは,ホストがMLDでグループ1から離脱をした場合,グループ1情報を通知していたインタフェースに対してグループ1の刈り込み情報を通知します。この通知のときに使用される宛先アドレスは全PIMルータリンクローカル・マルチキャストアドレス(ff02::d)です。

PIM-SMルータAはグループ1の刈り込み通知を受信すると,受信したインタフェースに対してグループ1宛てのIPv6マルチキャストパケットの中継を中止します。IPv6マルチキャスト配送ツリーの刈り込みを次の図に示します。

図31‒12 IPv6マルチキャスト配送ツリーの刈り込み

[図データ]

(7) ランデブーポイントの選出

各グループのランデブーポイント候補が複数存在する場合は,RFC2362およびRFC4601に記載されている選出アルゴリズムに従って,ランデブーポイントを選出します。ランデブーポイントの選出アルゴリズムは,コンフィグレーションコマンドipv6 pim rp-mapping-algorithmで指定します。なお,ランデブーポイントの選出アルゴリズムは,ネットワーク内で統一してください。

RFC2362およびRFC4601のランデブーポイントの選出条件,および各選出条件の優先順位を次の表に示します。

表31‒9 ランデブーポイントの選出条件

選出項目

選出条件

優先順位

RFC2362

RFC4601

ランデブーポイントが管理するグループアドレス

最長一致

1

ランデブーポイントの優先度※1

最小値

1

2

ランデブーポイントのハッシュ値※2

最大値

2

3

ランデブーポイントのIPアドレス

最大値

3

4

(凡例) −:条件なし

注※1

本装置をランデブーポイント候補とする場合,コンフィグレーションコマンドipv6 pim bsr candidate rpで指定できます。

注※2

RFC2362およびRFC4601に記載されているハッシュ関数の計算値です。