18.1.5 マルチキャストアドレス
マルチキャストアドレスは複数のノードの集合体を示すアドレスです。アドレスフォーマットプレフィックスの上位8ビットがffであるアドレスが定義されています。ノードは複数のマルチキャストグループに属することができます。マルチキャストアドレスは,パケットの始点アドレスとして使用することはできません。マルチキャストアドレスには,アドレスフォーマットプレフィックスに続いて,フラグフィールド(4ビット),スコープフィールド(4ビット)およびグループ識別子フィールド(112ビット)が含まれます。IPv6マルチキャストアドレスを次の図に示します。
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フラグフィールドの4ビットは1ビットずつフラグとして定義されています。4ビット目はT(transient)フラグビットと定義されており,次の値になります。
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Tフラグビットが0:IANAによって永続的に割り当てられた既知のマルチキャストアドレス
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Tフラグビットが1:一時的に使用される(非永続的な)マルチキャストアドレス
スコープフィールドは4ビットのフラグでマルチキャストグループのスコープを限定するために使用します。マルチキャストアドレスのスコープフィールド値を次の表に示します。
値 |
スコープの範囲 |
---|---|
0 |
予約 |
1 |
ノードローカルスコープ |
2 |
リンクローカルスコープ |
3 |
未割り当て |
4 |
アドミンローカルスコープ |
5 |
サイトローカルスコープ |
6 |
未割り当て |
7 |
未割り当て |
8 |
組織ローカルスコープ |
9 |
未割り当て |
A |
未割り当て |
B |
未割り当て |
C |
未割り当て |
D |
未割り当て |
E |
グローバルスコープ |
F |
予約 |
(1) 予約マルチキャストアドレス
次に示すマルチキャストアドレスはあらかじめ予約されており,どのマルチキャストグループにも割り当てることができません。
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ff00:0:0:0:0:0:0:0
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ff01:0:0:0:0:0:0:0
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ff02:0:0:0:0:0:0:0
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ff03:0:0:0:0:0:0:0
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ff04:0:0:0:0:0:0:0
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ff05:0:0:0:0:0:0:0
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ff06:0:0:0:0:0:0:0
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ff07:0:0:0:0:0:0:0
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ff08:0:0:0:0:0:0:0
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ff09:0:0:0:0:0:0:0
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ff0a:0:0:0:0:0:0:0
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ff0b:0:0:0:0:0:0:0
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ff0c:0:0:0:0:0:0:0
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ff0d:0:0:0:0:0:0:0
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ff0e:0:0:0:0:0:0:0
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ff0f:0:0:0:0:0:0:0
(2) 全ノードアドレス
全ノードアドレスは,指定されたスコープ内すべてのIPv6ノードの集合体を示すアドレスです。このアドレスを終点アドレスに持つパケットは指定スコープ内すべてのノードで受信されます。全ノードアドレスの種類を次に示します。
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ff01:0:0:0:0:0:0:1 ノードローカル・全ノードアドレス
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ff02:0:0:0:0:0:0:1 リンクローカル・全ノードアドレス
(3) 全ルータアドレス
全ルータアドレスは,指定されたスコープ内すべてのIPv6ルータの集合体を示すアドレスです。このアドレスを終点アドレスに持つパケットは指定スコープ内すべてのルータで受信されます。全ルータアドレスの種類を次に示します。
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ff01:0:0:0:0:0:0:2 ノードローカル・全ルータアドレス
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ff02:0:0:0:0:0:0:2 リンクローカル・全ルータアドレス
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ff05:0:0:0:0:0:0:2 サイトローカル・全ルータアドレス
(4) 要請ノードアドレス
要請ノードアドレスは,ノードのユニキャストアドレスとエニキャストアドレスから変換され,要請ノードのアドレス(ユニキャスト,またはエニキャスト)の下位24ビットを104ビットのプレフィックスff02:0:0:0:0:1:ff00::/104に加えたものです。要請ノードアドレスの範囲を次に示します。
ff02:0:0:0:0:1:ff00:0000 〜 ff02:0:0:0:0:1:ffff:ffff
集約プロバイダごとに上位プレフィックスが異なるなどの理由で上位の数ビットだけが異なるIPv6アドレスが生成された場合,これらのアドレスは同じ要請ノードアドレスとなります。これによってノードが加入しなくてはならないマルチキャストアドレスの数を少なくできます。