8.11.1 概要
グレースフル・リスタートは,スタック構成時にマスタスイッチを切り替えたときや,運用コマンドなどによってユニキャストルーティングプログラムが再起動したときに,ネットワークから経路が消えることによる通信停止時間を短縮するための機能です。
- 〈この項の構成〉
(1) グレースフル・リスタートを使用しない場合の問題
本装置では,スタック構成時にそれぞれのメンバスイッチに対してリンクアグリゲーションを設定している状態でマスタスイッチを切り替えたときや,運用コマンドなどによってユニキャストルーティングプログラムが再起動したときでも,本装置がパケット転送を中断することはありません。これは,本装置ではルーティングプログラムが交替しても以前のルーティングプログラムの経路を保留して動作し続けているためです。
しかし,ルーティングプロトコルを使用している場合は隣接ルータが本装置へパケットを転送しなくなるため,ネットワーク全体では通信が一時的に停止することがあります。これは次の理由によります。
-
新たに動作を始めたルーティングプログラムが隣接ルータと通信を開始すると,隣接ルータは新たな接続要求を受け取ります。これによって,隣接ルータでは以前の接続が切断したものと認識して,該当装置を経由する経路を削除します。
-
本装置が一部の経路を広告しません。これは,新しく動作を開始したルーティングプログラムが経路広告を開始した時点では,まだ経路情報の学習が完了していないためです。隣接ルータでは,本装置が広告しなかった経路を削除します。
(2) サポート範囲
グレースフル・リスタートのサポート範囲を次の表に示します。
項目 |
サポート可否 |
|
---|---|---|
対象イベント |
全装置再起動 |
× |
マスタスイッチの切り替え |
○※1 |
|
ユニキャストルーティングプログラム再起動 |
○※1 |
|
対象インタフェース |
VLANインタフェース |
○※2※3 |
マネージメントポート |
× |
|
対象ルーティングプロトコル |
OSPF |
○ |
BGP |
○ |
|
OSPFv3 |
○ |
|
BGP4+ |
○ |
(凡例) ○:取り扱う ×:取り扱わない
- 注※1
-
グレースフル・リスタート中に再度イベントが発生した場合は,グレースフル・リスタートの実行を中止します。または,グレースフル・リスタートが失敗します。
- 注※2
-
スパニングツリーを使用するVLANを除きます。
- 注※3
-
リンクアグリゲーションで,LACPを次に示す条件で使用する場合を除きます。
・本装置または対向装置のLACPDU送信間隔をshortで運用