コンフィグレーションガイド Vol.2


15.2.9 障害監視インタフェースとVRRPポーリングの設定

本装置では,障害監視インタフェースとVRRPポーリングの設定を,番号付けしたtrackで管理します。trackの設定は,コンフィグレーションコマンドtrackでtrack番号を指定します。trackを仮想ルータに割り当てることで,仮想ルータは指定されたtrack番号のtrackに保存された障害監視インタフェースの設定に従い,障害監視インタフェースを利用します。仮想ルータにtrackを割り当てるには,コンフィグレーションコマンドvrrp trackを利用します。

一つの仮想ルータには,優先度切替方式のtrackと優先度減算方式のtrackのどちらか一方だけを設定できます。

一つの仮想ルータに対してtrackを複数割り当てる場合は,優先度操作方式として優先度減算方式だけ設定できます。

優先度切替方式の場合,障害発生時に仮想ルータの優先度を指定した切替優先度に変更します。切替優先度の指定を省略または仮想ルータの優先度より大きい値を指定した場合は,デフォルト値の0が使用されます。優先度切替方式を指定した場合は,一つの仮想ルータにtrackを一つだけ割り当てることができます。

優先度切替方式で「図15‒13 優先度切替方式」のように,仮想ルータの優先度を100,障害監視インタフェースの切替優先度として10を指定した場合,障害監視インタフェースで障害が発生すると,仮想ルータの優先度は切替優先度の10に設定されます。

図15‒13 優先度切替方式

[図データ]

優先度減算方式の場合,障害発生時に仮想ルータの優先度を指定した優先度減算値だけ減算した値に変更します。優先度の指定を省略した場合は,デフォルト値の255が使用されます。decrementを指定した場合は,一つの仮想ルータに最大16のtrackを割り当てることができます。

優先度減算方式で「図15‒14 優先度減算方式」のように,仮想ルータの優先度を100,障害監視インタフェースの優先度減算値として60を指定した場合,障害監視インタフェースで障害が発生すると,仮想ルータの優先度は元々の優先度100から優先度減算値60を引いた40に設定されます。

図15‒14 優先度減算方式

[図データ]

〈この項の構成〉

(1) 障害監視インタフェースを行うtrackの設定

[設定のポイント]

コンフィグレーションコマンドtrack interfaceでline-protocolを指定すると,指定したVLANインタフェース,ポートチャネルインタフェース,およびイーサネットインタフェースの状態を監視します。

trackに監視するVLANインタフェース,ポートチャネルインタフェース,およびイーサネットインタフェースを設定します。

仮想ルータにコンフィグレーションコマンドvrrp trackで障害監視を行うtrackを設定します。

障害監視を行うVLANインタフェースには,IPアドレスが設定されている必要があります。

[コマンドによる設定]

  1. (config)# track 20 interface vlan 30 line-protocol

    (config)# track 30 interface gigabitethernet 1/0/8 line-protocol

    (config)# track 40 interface port-channel 10 line-protocol

    • track番号20のtrackに,障害監視インタフェースとしてvlan 30の状態を監視するよう,設定します。

    • track番号30のtrackに,障害監視インタフェースとしてギガビット・イーサネットインタフェース1/0/8の状態を監視するよう,設定します。

    • track番号40のtrackに,障害監視インタフェースとしてチャネルグループ10の状態を監視するよう,設定します。

  2. (config-if)# vrrp 1 track 20 decrement 60

    (config-if)# vrrp 1 track 30 decrement 10

    (config-if)# vrrp 1 track 40 decrement 40

    あらかじめ仮想ルータが設定してあるVLANのVLANコンフィグレーションモードにしておきます。この場合,仮想ルータID1の仮想ルータに,track番号20,30,40のtrackを割り当てます。

    • track番号20のtrackに設定された障害監視インタフェースで障害が発生した場合,仮想ルータ1の優先度が60下がります。

    • track番号30のtrackに設定された障害監視インタフェースで障害が発生した場合,仮想ルータ1の優先度が10下がります。

    • track番号40のtrackに設定された障害監視インタフェースで障害が発生した場合,仮想ルータ1の優先度が40下がります。

(2) VRRPポーリングを行うtrackの設定

[設定のポイント]

コンフィグレーションコマンドtrack interfaceでip routingを指定すると,指定したVLANを監視するとともに,コンフィグレーションコマンドtrack ip routeで指定した宛先へのpingによる疎通を監視します。

VRRPポーリングとして利用するVLANインタフェースをtrackに設定します。

仮想ルータにコンフィグレーションコマンドvrrp trackでVRRPポーリングを行うtrackを設定します。

VRRPポーリングによる障害監視を行う場合は,VRRPポーリングを行うVLANインタフェースにIPアドレスを設定し,track ip routeコマンドで指定した宛先への経路情報が設定されている必要があります。

同一のtrackを複数の仮想ルータに設定した場合,それぞれの仮想ルータからVRRPポーリングパケットを送信します。

[コマンドによる設定]

  1. (config)# track 50 interface vlan 34 ip routing

    (config)# track 51 interface vlan 35 ip routing

    (config)# track 52 interface vlan 36 ip routing

    • track番号50のtrackに,VRRPポーリングの送信インタフェースとしてvlan34の状態を監視するよう,設定します。

    • track番号51のtrackに,VRRPポーリングの送信インタフェースとしてvlan35の状態を監視するように設定します。

    • track番号52のtrackに,VRRPポーリングの送信インタフェースとしてvlan36の状態を監視するように設定します。

  2. (config)# track 50 ip route 192.168.20.1 reachability

    (config)# track 51 ip route 192.168.21.1 reachability

    (config)# track 52 ip route 192.168.22.1 reachability

    • track番号50のtrackに,VRRPポーリングの宛先として192.168.20.1を設定します。

    • track番号51のtrackに,VRRPポーリングの宛先として192.168.21.1を設定します。

    • track番号52のtrackに,VRRPポーリングの宛先として192.168.22.1を設定します。

  3. (config-if)# vrrp 3 track 50 priority 10

    (config-if)# vrrp 4 track 51 decrement 20

    (config-if)# vrrp 4 track 52 decrement 50

    • あらかじめ仮想ルータが設定してあるVLANのVLANコンフィグレーションモードにしておきます。

    • 仮想ルータID3の仮想ルータに,track番号50のtrackを割り当て,優先度操作方式に優先度切替方式,切替優先度に10を指定します。track番号50のtrackに設定されたVRRPポーリングで障害が発生した場合,仮想ルータ3の優先度を10に切り替えます。

    • 仮想ルータID4の仮想ルータに,track番号51と52のtrackを割り当てます。優先度操作方式に優先度減算方式を設定します。track番号51の優先度減算値に20を設定します。track番号52の優先度減算値に50を設定します。track番号51のtrackに設定されたVRRPポーリングで障害が発生した場合,仮想ルータ4の優先度が20下がります。track番号52のtrackに設定されたVRRPポーリングで障害が発生した場合,仮想ルータ4の優先度が50下がります。track番号51と52の両方の障害監視インタフェースで障害が発生した場合は仮想ルータ4の優先度が70下がります。