コンフィグレーションガイド Vol.1


27.7.3 シングルスパニングツリーのトポロジー設定

〈この項の構成〉

(1) ブリッジ優先度の設定

ブリッジ優先度は,ルートブリッジを決定するためのパラメータです。トポロジーを設計する際に,ルートブリッジにしたい装置を最高の優先度に設定し,ルートブリッジに障害が発生したときのために,次にルートブリッジにしたい装置を2番目の優先度に設定します。

[設定のポイント]

ブリッジ優先度は値が小さいほど高い優先度となり,最も小さい値を設定した装置がルートブリッジになります。ルートブリッジはブリッジ優先度と装置のMACアドレスから成るブリッジ識別子で判定するため,本パラメータを設定しない場合は装置のMACアドレスが最も小さい装置がルートブリッジになります。

[コマンドによる設定]

  1. (config)# spanning-tree single priority 4096

    シングルスパニングツリーのブリッジ優先度を4096に設定します。

(2) パスコストの設定

パスコストは通信経路を決定するためのパラメータです。スパニングツリーのトポロジー設計において,ブリッジ優先度決定後に,指定ブリッジのルートポート(指定ブリッジからルートブリッジへの通信経路)を本パラメータで設計します。

[設定のポイント]

パスコスト値は指定ブリッジの各ポートに設定します。小さい値で設定することによりルートポートに選択されやすくなります。設定しない場合,ポートの速度ごとに異なるデフォルト値になり,高速なポートほどルートポートに選択されやすくなります。

パスコストは,速度の遅いポートを速いポートより優先して経路として使用したい場合に設定します。速いポートを優先したトポロジーとする場合は設定する必要はありません。

パスコスト値にはshort(16bit値),long(32bit値)の2種類があり,トポロジーの全体で合わせる必要があります。速度が10Gbit/s以上のポートを使用する場合はlong(32bit値)を使用することをお勧めします。デフォルトではshort(16bit値)で動作します。イーサネットインタフェースの速度による自動的な設定は,short(16bit値)かlong(32bit値)かで設定内容が異なります。パスコストのデフォルト値を次の表に示します。

表27‒14 パスコストのデフォルト値

ポートの速度

パスコストのデフォルト値

short(16bit値)

long(32bit値)

10Mbit/s

100

2000000

100Mbit/s

19

200000

1Gbit/s

4

20000

10Gbit/s

2

2000

40Gbit/s

2

500

100Gbit/s

2

200

[コマンドによる設定]

  1. (config)# interface gigabitethernet 1/0/1

    (config-if)# spanning-tree cost 100

    (config-if)# exit

    ポート1/0/1のパスコストを100に設定します。

  2. (config)# spanning-tree pathcost method long

    (config)# interface gigabitethernet 1/0/1

    (config-if)# spanning-tree single cost 200000

    long(32bit値)のパスコストを使用するように設定した後に,シングルスパニングツリーのポート1/0/1のパスコストを200000に変更します。ポート1/0/1ではシングルスパニングツリーだけパスコスト200000となり,同じポートで使用しているPVST+は100で動作します。

[注意事項]

リンクアグリゲーションを使用する場合,チャネルグループのパスコストのデフォルト値は,チャネルグループ内の全ポートの合計ではなく一つのポートの速度の値になります。リンクアグリゲーションの異速度混在モードを使用している場合は,最も遅いポートの速度の値になります。

(3) ポート優先度の設定

ポート優先度は2台の装置間での接続をスパニングツリーで冗長化し,パスコストも同じ値とする場合に,どちらのポートを使用するかを決定するために設定します。

2台の装置間の接続を冗長化する機能にはリンクアグリゲーションがあり,通常はリンクアグリゲーションを使用することをお勧めします。接続する対向の装置がリンクアグリゲーションをサポートしていないで,スパニングツリーで冗長化する必要がある場合に本機能を使用してください。

[設定のポイント]

ポート優先度は値が小さいほど高い優先度となります。2台の装置間で冗長化している場合に,ルートブリッジに近い側の装置でポート優先度の高いポートが通信経路として使われます。本パラメータを設定しない場合はポート番号の小さいポートが優先されます。

[コマンドによる設定]

  1. (config)# interface gigabitethernet 1/0/1

    (config-if)# spanning-tree port-priority 64

    (config-if)# exit

    ポート1/0/1のポート優先度を64に設定します。

  2. (config)# interface gigabitethernet 1/0/1

    (config-if)# spanning-tree single port-priority 144

    シングルスパニングツリーのポート1/0/1のポート優先度を144に変更します。ポート1/0/1ではシングルスパニングツリーだけポート優先度144となり,同じポートで使用しているPVST+は64で動作します。