14.5.1 IPv4マルチキャスト中継
本装置でマルチキャストパケットを中継する場合には次の点に注意してください。
- 〈この項の構成〉
(1) PIM-SMおよびPIM-SSMの使用
(a) 動作インタフェース
IPアドレスのマスク長が8ビットから30ビットのインタフェース上で動作します。
(b) タイミングによるパケット追い越し
本装置で送信者からのマルチキャストデータと受信者側からのPIM-Joinメッセージを同時に受信した場合,タイミングによっては一部のパケットで追い越しが発生し,パケットの順序が入れ替わる場合があります。
(c) ルーティングプログラムの再起動に伴う中継断
restart ipv4-multicastコマンド実行によるIPマルチキャストルーティングプログラムの再起動を行う場合は,マルチキャスト経路情報を再学習するまでマルチキャスト通信が停止するので注意してください。
(d) マルチホーム
マルチホームを使用したインタフェースではIPv4マルチキャストは動作しません。
(2) PIM-SMの使用
PIM-SMを使用する場合は次の点に注意してください。
(a) ソフトウェア中継処理時のパケットロス
本装置は,最初のマルチキャストパケット受信でマルチキャスト通信を行うためのマルチキャスト中継エントリをハードウェアに設定します。マルチキャスト中継エントリを作成するまでの間ソフトウェアでマルチキャストパケットを中継するため,マルチキャスト通信のトラフィック量によっては一時的にパケットをロスする場合があります。
(b) パス切り替え時の二重中継またはパケットロス
本装置は,ランデブーポイント経由でのマルチキャストパケット中継時およびランデブーポイント経由から最短パス経由への切り替え時,一時的に二重中継またはパケットロスが発生する場合があります。
ランデブーポイント経由のマルチキャストパケットの中継動作およびランデブーポイント経由から最短パス経由切り替え動作は「14.4.2 IPv4 PIM-SM」を参照してください。
(c) ハードウェア中継切り替え時のパケット追い越し
本装置ではハードウェアへのマルチキャスト中継エントリの設定が完了すると,それまでのソフトウェアによるマルチキャストパケットの中継処理がハードウェア中継へと切り替わります。このときに一部のパケットで追い越しが発生し,パケットの順序が入れ替わる場合があります。
(d) ループバックインタフェースに設定したアドレスへの到達可能性
本装置をランデブーポイントおよびBSRとして使用する場合,ループバックインタフェースに設定したIPv4アドレスがランデブーポイントとBSRのアドレスになります。このアドレスは,マルチキャスト通信する全装置でユニキャストでのルート認識および通信ができる必要があります。
(e) PIM-Registerメッセージのチェックサム
本装置以外の装置と混在するシステム構成では,PIM-Registerメッセージ(カプセル化パケット)のチェックサムの計算範囲の相違によってマルチキャスト通信ができない場合があります。ランデブーポイントでRegisterメッセージがチェックサムエラーによってマルチキャスト中継しない場合は,本装置のコンフィグレーションコマンドのip pim register-checksumでPIMチェックサムを計算する範囲を変更してください。
(f) 静的ランデブーポイント
静的ランデブーポイントは,BSRを使用しないでランデブーポイントを指定する機能です。静的ランデブーポイントはコンフィグレーションによって設定します。
静的ランデブーポイントはBSRからBootstrapメッセージによって広告されたランデブーポイント候補との共存もできます。共存時,静的ランデブーポイントはBSRからBootstrapメッセージによって広告されたランデブーポイント候補よりも優先されます。
なお,ランデブーポイント候補のルータは,ランデブーポイントルータアドレスが自アドレスであることを認識することでランデブーポイントとして動作します。したがって,BSRを使用しないで静的ランデブーポイントを使ってネットワークを設計する場合は,ランデブーポイント候補のルータでも静的ランデブーポイントの設定が必要です。
また,静的ランデブーポイントを使用する場合,同一ネットワーク上の全ルータに対して同じ設定をする必要があります。