13.1.3 RIP
- 〈この項の構成〉
(1) RIP学習経路フィルタリング
RIPでは,学習した経路をすべてフィルタできます。フィルタした結果,学習しないことになった経路はルーティングテーブルに入りません。
(a) フィルタの適用方法と適用順
学習した経路をdistribute-list inで指定したフィルタでフィルタします。パラメータにインタフェースやルータを指定することによって,特定のインタフェースやルータから学習した経路にだけフィルタを適用できます。RIP学習経路フィルタリングのコンフィグレーションコマンドを次の表に示します。
経路を学習したら,指定したフィルタを表の順番に適用します。適用するフィルタが一つもない場合,またはフィルタを適用した結果がすべてpermitである場合,学習経路を有効経路としてルーティングテーブルに導入します。適用した結果がdenyであるフィルタが一つでもある場合,その学習経路はルーティングテーブルに入りません。
コマンド名 |
パラメータ |
フィルタ対象経路 |
---|---|---|
distribute-list in (RIP) |
gateway <IPv4> |
指定した隣接ルータから学習したRIP経路だけ,フィルタを適用します。 |
<Interface> |
指定したIPv4インタフェースから学習したRIP経路だけ,フィルタを適用します。 |
|
なし |
学習したRIP経路すべてにフィルタを適用します。 |
(b) 学習経路フィルタリングで変更可能な経路属性
RIPの学習経路フィルタリングで変更可能な属性を次の表に示します。
変更したメトリック値は,RIPの優先経路選択に用います。変更したディスタンス値は,ルーティング種別間の優先経路選択に用います。
属性 |
デフォルト値 |
---|---|
ディスタンス値 |
distance (RIP) に指定した値。 指定していない場合は120。 |
メトリック値 |
受信経路の属性値。 |
タグ値 |
受信経路の属性値。 |
- 注意
-
-
メトリック値の変更方法に,加算以外の方法を使わないことをお勧めします。メトリック値を置き換えまたは減算で変更すると,ルーティングループが発生し,パケットを正しく転送できなくなることがあるからです。
-
メトリック値を16以上に変更するように設定することもできます。しかし,変更後のメトリック値が16以上のRIP経路は無効経路になります。
-
コンフィグレーションコマンドmetric-offsetによるメトリック値の変更は,学習経路フィルタリングした後で適用します。経路フィルタで変更したメトリック値を,さらにmetric-offsetで変更します。metric-offsetによって変更した結果,メトリック値が16以上になった経路は無効になります。
-
タグ値は,経路を学習したRIPのバージョンにかかわらず変更できます。しかし,変更した経路を広告するときに,タグ値を付けて広告するのはRIPバージョン2だけです。
また,タグ値を最大4294967295に変更できます。しかし,変更した経路をRIPバージョン2で広告するときには,2進数表現の下位16ビットだけを使用し,上位のビットを切り捨てます。
-
(2) RIP広告経路フィルタリング
RIPでは,ルーティングテーブルの優先経路だけを広告できます。ただし,スプリットホライズンおよびRIPバージョン1の経路広告条件を満たさない経路は広告しません。
広告経路フィルタリングの設定をしていない場合,RIP経路とRIPインタフェースの直結経路が広告対象になります。
- 注意
-
OSPF経路やBGP4経路を広告するときには,広告経路フィルタリングや広告メトリック値を設定することでmetric値を変更してください。上記経路のデフォルト広告メトリック値が16なので,そのままでは広告されません。
(a) 広告経路フィルタリングで変更可能な経路属性
RIPの広告経路フィルタリングで変更可能な属性を次の表に示します。
属性 |
経路学習元プロトコル |
デフォルト値 |
---|---|---|
メトリック値 |
直結経路 集約経路 |
1 |
スタティック経路 |
default-metricで指定した値を用います。 default-metric未設定時は1を用います。 |
|
RIP経路 |
経路情報のメトリック値を引き継ぎます。 |
|
OSPF経路 BGP4経路 |
inherit-metric設定時は経路情報のメトリック値を引き継ぎます。経路情報にメトリック値がない場合は16を用います。 inherit-metric未設定時はdefault-metricで指定した値を用います。 inherit-metricもdefault-metricも設定していないときは16を用います。 |
|
タグ値 |
全プロトコル共通 |
経路情報のタグ値を引き継ぎます。 |
- 注意
-
-
RIP経路をRIPで広告する場合,加算以外のメトリック値変更方法を使わないことをお勧めします。メトリック値を置き換えまたは減算すると,ルーティングループが発生し,パケットを正しく転送できなくなることがあるからです。
-
メトリック値を16以上に変更するように経路フィルタを設定することもできます。しかし,メトリック値が16以上の経路は広告されません。
-
コンフィグレーションコマンドmetric-offsetによるメトリック値の変更は,広告経路フィルタリングしたあとで適用します。経路フィルタで変更したメトリック値を,さらにmetric-offsetで変更します。metric-offsetによって変更した結果,メトリック値が16以上になった経路は広告されません。
-
タグ値を広告するには,RIPのバージョンが2である必要があります。また,タグ値を65535より大きな値に変更した場合,2進数表現の下位16ビットだけを使用し,上位のビットを切り捨てます。
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(b) フィルタの適用方法と適用順
広告経路フィルタリングは,次に示す手順に分かれています。
-
まず,RIPで広告したい経路を選択します。広告したい経路の学習元プロトコルを指定します。プロトコルを指定するには,コンフィグレーションコマンドredistributeを使用します。redistributeに経路種別を指定することで,指定した種別の経路だけを広告対象にすることができます。また,route-mapを指定することで,route-mapでフィルタした結果がpermitである経路だけを広告対象にすることもできます。redistributeでは,条件の比較にルーティングテーブル上の経路属性値を使用します。
RIP経路とRIPインタフェースの直結経路だけは,redistributeで指定しなくても広告されます。
redistributeに経路属性を変更するroute-mapや経路属性を直接指定することによって,広告する経路の属性を変更することもできます。
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メトリック値をプロトコルで決められたデフォルト値に設定します。ただし,redistributeでメトリック値を変更している場合は,redistributeで変更した値をそのまま使用します。
RIPのメトリック値のデフォルト値については,「表13‒8 RIP広告経路フィルタリングで変更可能な経路の属性」を参照してください。
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redistributeで選択した経路に,distribute-list outに従ってフィルタを適用します。パラメータにインタフェースやルータを指定することで,指定広告先へ広告する場合にだけフィルタを適用できます。また,プロトコルを指定すると,指定したプロトコルで学習した経路にだけフィルタを適用します。コンフィグレーションコマンドを次の表に示します。
経路をRIPインタフェースや特定の隣接ルータへ広告するに当たり,広告先や経路学習元プロトコルに応じてフィルタを選択し,それを表の順番に適用します。適用するフィルタが一つもない場合,またはフィルタした結果がすべてpermitである場合,指定の広告先へ経路を広告します。適用した結果がdenyであるフィルタが一つでもある場合,その広告先へはその経路を広告しません。
distribute-list outにroute-mapを指定した場合,広告デフォルト属性値やredistributeで変更したあとの属性値に従って経路をフィルタします。
distribute-list outに属性を変更するroute-mapを指定することによって,広告する経路の属性を変更することもできます。
表13‒9 RIP広告経路フィルタリングのコンフィグレーションコマンド コマンド名
パラメータ
フィルタ対象経路
distribute-list out(RIP)
gateway <IPv4><Protocol>
指定した隣接ルータへ広告する指定したプロトコルの経路にフィルタを適用します。
gateway <IPv4>
指定した隣接ルータへ広告する経路にフィルタを適用します。
<Interface>
指定したIPv4インタフェースから広告する経路にフィルタを適用します。
<Protocol>
広告先に関係なく,指定したプロトコルの経路にフィルタを適用します。
なし
広告先に関係なく,すべての経路にフィルタを適用します。