コンフィグレーションガイド Vol.3


9.1.3 経路情報の広告

〈この項の構成〉

(1) 広告対象経路

(a) 学習プロトコル

RIPでは,広告経路フィルタを設定していない場合,学習したRIP経路およびRIPが動作するネットワーク範囲内の直結経路を広告します。広告経路フィルタを設定した場合は,広告経路フィルタの動作に従って広告動作を行います。RIPで広告対象の学習プロトコルを次の表に示します。

表9‒3 広告対象の学習プロトコル

学習プロトコル

広告経路フィルタの設定がない場合の広告動作

広告メトリックの適用順序※5

直結経路※1

RIPが動作するネットワークの範囲内

広告します

  1. 広告経路フィルタの指定値

  2. デフォルト値(metric値:1)

RIPが動作するネットワークの範囲外

広告しません

集約経路

広告しません

スタティック経路

広告しません

  1. 広告経路フィルタの指定値

  2. default-metricの指定値

  3. デフォルト値(metric値:1)

RIP※2

広告します

  1. 広告経路フィルタの指定値

  2. ルーティングテーブルの値

OSPF

広告しません

  1. 広告経路フィルタの指定値

  2. inherit-metricの設定がある場合は,ルーティングテーブルの値※3

  3. default-metricの指定値※4

BGP

広告しません

注※1

セカンダリアドレスも広告対象となります。

注※2

スプリットホライズンが適用されます。

注※3

ルーティングテーブルのメトリック値が16以上の場合は,経路を広告しません。

注※4

広告経路フィルタ,inherit-metricまたはdefault-metricによるメトリックの指定がない場合は,経路を広告しません。

注※5

metric-offset outコマンドの設定がある場合は,選択したメトリック値に対してさらにmetric-offset outコマンドの指定値を加算します。加算した結果,メトリック値が16以上となった場合は,経路を広告しません。

(b) アドレス種別

次の表にRIPで広告対象のアドレス種別を示します。

表9‒4 広告対象のアドレス種別

アドレス種別

定義

広告可否

RIP-1

RIP-2

デフォルト経路情報

すべてのネットワーク宛ての経路情報

0.0.0.0/0

ナチュラルマスク経路情報

IPアドレスのクラスに対応したネットワークマスクの経路情報

(クラスA:8ビット)

(クラスB:16ビット)

(クラスC:24ビット)

172.16.0.0/16

  • クラスB

  • ネットマスク:16ビット

    (255.255.0.0)

サブネット経路情報

特定のサブネット宛ての経路情報

172.16.10.0/24

  • クラスB

  • ネットマスク:24ビット

    (255.255.255.0)

※1※2

※2

スーパーネット経路情報

複数のネットワークを包含する経路情報

172.0.0.0/8

  • クラスB

  • ネットマスク:8ビット

    (255.0.0.0)

×

ホスト経路情報

特定のホスト宛ての経路情報

172.16.10.1/32

  • ネットマスク:32ビット

    (255.255.255.255)

(凡例) ○:広告可能 ×:広告不可 △:一部広告可

注※1 RIP-1では広告できるサブネット経路に制約があります。詳細は「9.1.5 RIP-1 (1) RIP-1での経路情報の広告」を参照してください。

注※2 コンフィグレーションコマンドauto-summaryが設定されている場合は,広告サブネット経路情報を自動的に一つのナチュラルマスク経路情報として集約して広告します。詳細は「(4) RIP広告経路の自動集約」を参照してください。

(2) 経路情報の広告先

RIPでは,コンフィグレーションコマンドnetworkによって指定したネットワーク上のすべての隣接ルータに対して,経路情報の広告が行われます。また,コンフィグレーションコマンドneighborの設定によって,特定の隣接ルータにだけ広告を限定することができます。次の表にRIPにおける経路情報の広告先を示します。

表9‒5 経路情報の広告先

広告先

宛先アドレス

RIPが動作するネットワーク※1※2

マルチキャストアドレス(RIP-2)またはサブネットブロードキャストアドレス(RIP-1)

特定の隣接ルータ※3

ユニキャストアドレス

注※1 passive-interfaceの指定があるインタフェースに対しては,広告が抑止されます。

注※2 セカンダリアドレスも対象です。

注※3 隣接ルータはRIPが動作するネットワークに含まれている必要があります。

(3) 経路情報の広告タイミング

RIPによる経路広告タイミングは,次の表に示す機能が関係します。

表9‒6 経路広告タイミング

機能

内容

周期的な経路情報広告

自装置が持つ経路情報を隣接ルータに周期的に通知します。

triggered update

自装置の経路情報に変更があったときに定期的な広告を待たないで通知します。

隣接ルータからのリクエストに対する応答

リクエストパケットを送信した隣接ルータに対して通知します。

ルートポイズニング

経路情報が削除されたことを隣接ルータに一定時間通知します。

(a) 周期的な経路情報広告

RIPは自装置が持つ経路情報を周期的に隣接のルータに広告します。周期的な経路情報広告を次の図に示します。

図9‒1 周期的な経路情報広告

[図データ]

(b) triggered update

自装置の経路情報の変化を認識したときに定期的な配布周期を待たないで経路情報を配布します。triggered updateによる経路情報の広告を次の図に示します。

図9‒2 triggered updateによる経路情報の広告

[図データ]

(c) リクエストパケットに対する応答

本装置は,リクエストパケットを受信した際に,本パケットを送信した隣接ルータに対して経路情報を通知します。リクエストパケット受信による経路情報の広告を次の図に示します。

図9‒3 リクエストパケット受信による経路情報の広告

[図データ]

(d) ルートポイズニング

到達できる状態から到達できない状態(メトリック16受信または,インタフェース障害によって該当するインタフェースから学習した経路を削除)となった経路に対して,一定時間(60秒:ガーベジコレクトタイマ)はメトリック16(到達できない)で隣接ルータに広告します。ルートポイズニングを次の図に示します。

図9‒4 ルートポイズニング

[図データ]

ルートポイズニング期間中に,該当する宛先への新しい経路を再学習した場合は,新しい経路を広告します。ルートポイズニング期間中の再学習を次の図に示します。

図9‒5 ルートポイズニング期間中の再学習

[図データ]

(4) RIP広告経路の自動集約

RIPではコンフィグレーションコマンドauto-summaryを設定することで,隣接装置に対して広告する複数のサブネット経路情報を,自動的に一つのナチュラルマスク経路情報として集約し広告できます。このコンフィグレーションコマンドはRIP-1,RIP-2共に有効となります。

広告経路の自動集約対象になるアドレス種別を次の表に示します。

表9‒7 広告経路の自動集約対象となるアドレス種別

アドレス種別

集約可否

RIP-1

RIP-2

デフォルト経路情報

×

×

ナチュラルマスク経路情報

×

×

サブネット経路情報

※1

※2

スーパーネット経路情報

×

×

ホスト経路情報

×

×

(凡例)○:集約可能 ×:集約不可

注※1 RIP-1では広告経路情報のナチュラルネットワークと広告先インタフェースのナチュラルネットワークが同一であり,広告経路情報のマスク長と広告先インタフェースのマスク長が同一である場合は,自動集約を行わずサブネット経路情報として隣接装置に広告します。詳細は「図9‒6 RIP-1使用時の広告経路自動集約化」を参照してください。

注※2 RIP-2では広告経路情報のナチュラルネットワークと広告先インタフェースのナチュラルネットワークが同一である場合は,自動集約を行わず,サブネット経路情報として隣接装置に広告します。詳細は「図9‒7 RIP-2使用時の広告経路自動集約化」を参照してください。

RIP-1使用時のサブネット経路の自動集約化を次の図に示します。

図9‒6 RIP-1使用時の広告経路自動集約化

[図データ]

RIP-2使用時のサブネット経路の自動集約化を次の図に示します。

図9‒7 RIP-2使用時の広告経路自動集約化

[図データ]

(a) 自動集約時の広告メトリック

集約元となるサブネット経路情報のうち,一番小さなメトリック値を用いて広告されます。

(b) 自動集約時の広告ルートタグ(RIP-2使用時だけ)

広告ルートタグは0となります。

(c) 自動集約時の広告ネクストホップ(RIP-2使用時だけ)

広告ネクストホップは0となります。