解説書 Vol.1
本装置が行うトラフィック制御機能には,次に示す4種類があります。
- キュー制御
パケットをキューイングするとき,キューイング優先度によってキューイング容量をクラス分けすれば,キュー廃棄を制御する機能です。また,送信パケットにDEビットを付加し,フレームリレー網での廃棄可能性を制御することもできます。
- PVC帯域制御
PVCごとに帯域保証を行う機能で,最低レート保証とピークレート制限とがあります。
- 送信制御
パケットの優先度に応じて送信順序を制御する機能です。優先度は8種類で,出力優先制御,最低帯域保証,均等保証の3種類があります。
- 輻輳制御
フレームリレー網の輻輳状態によって,PVC単位でピークレートを動的に制御する機能です。
フレームリレー網へパケットを送信する動作は次の3段階に分けることができます。
- 送信回線,PVC,キューイング優先度,出力優先度決定
フォワーディング,アドレス解決,QoS機能によって,送信回線,PVC,キューイング優先度,出力優先度を決定します。
- 送信キューイング
送信パケットを送信キューにキューイングします。このとき,キューが輻輳している場合は送信パケットを廃棄します。
- 送信スケジューリング
送信キューからパケットを取り出す順序を決定して,回線に送信します。
パケット送信動作とトラフィック制御機能との関係を次の表に示します。また,本装置では,PVCごとに出力優先クラスに対応する8個の送信キューを持っています。
送信動作 関連するトラフィック制御機能 送信回線,PVC,キューイング優先度,出力優先度決定 −
(フォワーディング,アドレス解決,Qos機能)送信キューイング
- キュー制御
送信スケジューリング
- PVC帯域制御(最低レート保証とピークレート制限)
- 送信制御機能(出力優先制御/最低帯域保証/均等保証)
- 輻輳制御
(凡例) −:該当しない
トラフィック制御機能の詳細を次に示します。
- <この項の構成>
- (1) キュー制御
- (2) PVC帯域制御
- (3) 送信制御機能(出力優先制御/最低帯域保証/均等保証)
- (4) 輻輳制御
キューイング優先度は4種類あります。キューイング優先度1が最も廃棄されやすく,キューイング優先度4が最も廃棄されにくくなります。本装置では,各PVCの優先度キューのキュー長を物理回線単位に合計し,物理回線単位の優先度ごとのキュー長を管理し,これに対してキュー制御を行います。なお,キューイング優先度ごとの最大キュー長値を決定する廃棄モードは,qos-discard-modeコマンドによって,NIF単位で指定します。
また,キューイング優先度に基づいてDEビットを設定します。このDEビットは,Q.922アドレスフォーマット内の1ビットで,該当するパケットがフレームリレー網で優先廃棄するパケットであることを示します。このため,DEビット=1にして送信すると,フレームリレー網で廃棄されやすくなります。なお,この機能はdlciコマンドのde_packet_classオプションで設定します。
最低レート保証とピークレート制限があります。どちらも,1物理回線の通信帯域を共有するPVC間のトラフィック調整を行うための機能です。構成定義情報でPVCごとに値を設定します。
最低レート保証値は該当するPVCで保証する最低スループット値で,ピークレート制限値は該当するPVCで送信できる最大スループット値です。最低レート保証とピークレート制限を行う必要がない場合は,値を指定する必要はありません。なお,各PVCの最低レート保証値の合計が物理回線速度より小さい場合は,余剰帯域を全PVCが使用します。
(3) 送信制御機能(出力優先制御/最低帯域保証/均等保証)
PVC内でのパケット取り出し順序を制御する機能です。
取り出し方法は次の3種類があります。
- 出力優先制御
出力優先度の高いキューに積まれたパケットをすべて送信するまで,より低いキューに積まれたパケットは送信しない方法です。
- 最低帯域保証
キューごとに指定された帯域部分を保証して送信する方法です。この方法は,PVC帯域制御で最低レート保証を行っているPVCだけに適用できます。
- 均等保証
各キューから順番に1パケットずつ均等に送信する方法です。
これらの送信制御方法はPVCごとにどれか一つを指定します。PVC帯域制御の最低レート保証と送信制御方法の組み合わせを次の表に示します。
表5-30 PVC帯域制御の最低レート保証と送信制御方法の組み合わせ
PVC帯域制御の最低レート 送信制御方法 出力優先制御 最低帯域保証 均等保証 保証あり ○ ○ ○ 保証なし ○ × ○ (凡例) ○:適用できる ×:適用できない
送信スケジューリングの例を次の図に示します。なお,DLCIごとのキューは実際には8個ありますが,図では2個に簡略化しています。
この図の例では,最低レート保証を行うのはPVC1とPVC2であり,そのほかのPVCでは最低レート保証を行いません。このため,余剰帯域は15(20-3-2)であり,それをすべてのPVCが使用します。各PVC内では,送信制御方式(出力優先制御,最低帯域保証,均等保証)の指定に従って送信スケジューリングを行います。
フレームリレー網の輻輳状態に対応してPVCのピークレートを動的に変化させ,スループットを規制する機能です。輻輳制御の詳細を次に示します。
- 網輻輳の検出
網輻輳の検出は,BECNによる明示的輻輳通知,およびCLLMメッセージによる明示的輻輳通知を併用します。
BECNによる輻輳発生/解除の検出は,BECNビットONまたはOFFのフレームの連続受信を監視して行います。輻輳発生/解除の判断基準として連続受信個数「S」を使用します。
CLLMメッセージによる輻輳検出は,CLLMメッセージの一定時間周期の受信を監視して行います。
- PVC上の輻輳の検出
PVC上の輻輳を検出したときは,PVCのピークレートをCIRの値に基づいて変化させます。送信スループットを監視するための測定期間は,PVCごとのCRI値およびBc値から算出します。
輻輳状態の変化検出に伴うPVCのスループット規制は,変化を検出した次の測定期間から行います。輻輳状態の変化検出動作を次の図に示します。
(a) BECNによる輻輳検出と送信スループットの規制
BECNによって輻輳を検出した場合の状態と回復について説明します。
- 輻輳状態への移行
輻輳を検出していない状態で,BECN=1のフレームを受信した場合,網へのスループットをCIR以下に規制します。このときの状態を1次規制状態とします。
1次規制状態で,BECN=1の連続するS個のフレームを受信した場合,網へのスループットを送信スループット2次規制値へ更新します。このときの状態を2次規制状態とします。
2次規制状態で,BECN=1の連続するS個のフレームを受信した場合,網へのスループットを送信スループット3次規制値へ更新します。このときの状態を3次規制状態とします。
3次規制状態で,BECN=1の連続するS個のフレームを受信した場合,網へのスループットを現在のスループットの1/2へ更新します。スループット更新後の状態も3次規制状態とします。
スループットの規制値は,送信スループット規制下限値を設け,それ以下にならないようにします。
- 輻輳状態の回復
網へのスループットを規制している状態で,BECN=0の連続するS/2個のフレームを受信した場合,網へのスループット規制値を(現在のスループット規制値+送信スループット回復値)まで緩めます。
スループットの規制値は,送信スループット規制上限値を設け,その値に達したときは,スループット規制を解除します。
(b) CLLMメッセージによる輻輳検出と送信スループットの規制
CLLMメッセージによって輻輳を検出した場合の状態と回復について説明します。
- 輻輳状態への移行
輻輳を検出していない状態で,理由表示が'2'のCLLMメッセージを受信した場合は,網へのスループットをCIR以下に規制します。このときの状態を1次規制状態とします。
1次規制状態で,理由表示が'3'または'10'のCLLMメッセージを受信した場合は,網へのスループットを送信スループット2次規制値へ更新します。このときの状態を2次規制状態とします。
2次規制状態で,理由表示が'3'または'10'のCLLMメッセージを受信した場合は,網へのスループットを送信スループット3次規制値へ更新します。このときの状態を3次規制状態とします。
3次規制状態で,理由表示が'3'または'10'のCLLMメッセージを受信した場合は,網へのスループットを現在のスループットの1/2へ更新します。スループット更新後の状態も3次規制状態とします。
スループットの規制値は,送信スループット規制下限値を設け,それ以下にならないようにします。
連続受信個数「S」,送信スループット2次規制値,送信スループット3次規制値,送信スループット規制下限値は,BECNによる輻輳制御で使用する値と共通であり,次に示すとおりです。
- 連続受信個数「S」:10
- 送信スループット2次規制値:CIRの95%
- 送信スループット3次規制値:CIRの90%
- 送信スループット規制下限値:CIRの90%
- 輻輳状態の回復
網へのスループットを規制している状態で,理由表示が'2'のCLLMメッセージを受信した場合は,網へのスループット規制値をCIRまで緩めます。
網へのスループットを規制している状態で,CLLM受信監視時間内にCLLMメッセージを受信しなかった場合は,網へのスループット規制値を(現在のスループット規制値+送信スループット回復値)まで緩めます。CLLM受信監視時間,送信スループット回復値は,構成定義で設定します。
スループットの規制値は,送信スループット規制上限値を設け,その値に達したときは,スループット規制を解除します。送信スループット規制上限値は構成定義で設定します。
送信スループット回復値,送信スループット規制上限値は,BECNによる輻輳制御で使用する値と共通であり,次に示すとおりです。
- 送信スループット回復値:CIRの25%
- 送信スループット規制上限値:CIRの100%
- 固定故障通知
理由表示が'7'のCLLMメッセージを受信した場合は,PVCを使用不可とみなして,フレームの送受信を停止します。このとき,送信待ちキュー内のフレームは廃棄します。
(c) 輻輳制御の例
網輻輳検出による送信スループット制御の例を次の図に示します。
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