コンフィグレーションガイド Vol.3


12.1.1 仮想ルータのMACアドレスとIPアドレス

仮想ルータは自身の物理的なMACアドレスとは別に,仮想ルータ用のMACアドレスとして仮想MACアドレスを持ちます。仮想MACアドレスは,仮想ルータIDから自動的に生成されます。

サポートしているVRRPの規格と仮想MACアドレスの対応を次の表に示します。

表12‒1 VRRPの規格と仮想MACアドレスの対応

規格

仮想MACアドレス

IPv4

RFC3768

0000.5e00.01{仮想ルータID}

RFC5798

0000.5e00.01{仮想ルータID}

draft-ietf-vrrp-unified-spec-02

0000.5e00.01{仮想ルータID}

IPv6

RFC5798

0000.5e00.02{仮想ルータID}

draft-ietf-vrrp-ipv6-spec-02

0000.5e00.01{仮想ルータID}

draft-ietf-vrrp-ipv6-spec-07

0000.5e00.02{仮想ルータID}

draft-ietf-vrrp-unified-spec-02

0000.5e00.02{仮想ルータID}

マスタの仮想ルータは仮想MACアドレス宛てのイーサネットフレームを受信してパケットをフォワーディングする能力を持ちますが,バックアップの仮想ルータは仮想MACアドレス宛てのフレームを受信しません。VRRPは仮想ルータの状態に応じて仮想MACアドレス宛てイーサネットフレームを受信するかどうかを制御します。マスタの仮想ルータは仮想MAC宛てフレームを受信すると,ルーティングテーブルに従ってIPパケットのフォワーディング処理を行います。そのため,端末は仮想MACアドレスを宛先としてフレームを送信することで,マスタとバックアップが切り替わったあとでも通信を継続できます。仮想MACアドレス宛てフレームの受信を次の図に示します。

図12‒1 仮想MAC宛てフレームの受信

[図データ]

仮想ルータは仮想ルータ用のIPアドレスである仮想IPアドレスを持ちます。マスタの仮想ルータは,仮想IPアドレスに対するARP要求パケットまたはNDP要求パケットを受信すると,常に仮想MACアドレスを使用してARP応答またはNDP応答します。仮想MACアドレスによるARP応答およびNDP応答を次の図に示します。

図12‒2 仮想MACアドレスによるARP応答およびNDP応答

[図データ]

仮想ルータをデフォルトルータとして使用するPCなどのホストは,自ARPキャッシュテーブル内に仮想IPアドレス宛てのフレームは仮想MACアドレス宛てに送信するように学習します。このように学習されたホストは常に仮想ルータへフレームを送信するときに仮想MACアドレスを宛先に指定するようになるため,VRRPのマスタ/バックアップの切り替えが発生した場合でも,通信を継続できます。